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欲 望 の 体 育 祭 その1

というわけで、あらすじ通り本編では描けない日常やら裏話なんかを描きたいと思います。

「これより我らは修羅となる!人とあっては、人を斬り、神とあっては神を斬れ!全身全霊、玉砕の覚悟を持って望むべし!」

「オー!」×36

「ちょっと待て、ただの体育祭だぞ」

 龍弥は半ばあきれながら、ツッコミを入れる。

 五月の下旬、龍弥達の学校では、体育祭が行われる。クラス対抗で三日間行われるだけでも特異ではあるが、例年こんなには物騒な雰囲気ではない。

「なに言ってんのよ!優勝したら賞金が出るのよ!」

冒頭で、みんなを煽っていた春華がくってかかった。

「しかも、二百万よ二百万!」

 龍弥はひきつった笑顔になる。

「あのなぁ、単位が発表されてないだろ。ルピーかもしれん」

「残念だがそれはない」

 飛鳥が伊達めがねをくいっと上にあげながら、したり顔で説明してくる。

「うざいぞ、嘘眼鏡」

「そういうこと言うな!それにな!この眼鏡には、俺のファンの夢と希望と愛が詰まってるんだよ!」

 暑苦しいことこの上ない返答をしてくる飛鳥に、龍弥は辛辣に返す。

「お前にファンなんていたか?」

「ああ、いるさ!」

 飛鳥はクラスのみんなに、同意を求めようと目を向けるが、みんなシカトした。というか、みんな賞金に目がくらんで、こちらの話自体聞いていなかった。

「そ、そんな・・・」

 飛鳥は打ちひしがれたように、膝をついた。

「ホントにこのバカは・・・」

 美冬が、飛鳥に気合いを入れるために、蹴りを入れにいく。

 その様子を呆然とみた後、春華は気を取り直し、龍弥に声をかける。

「とにかく、士気が下がることだけは言わないように!」

「あいよ」

 龍弥は結構どうでもよくなっていた。

 開会式が始まり、長ったらしい挨拶をPTA会長がしてくれた後、校長の話が始まった。

「諸君!年に一度の祭り大いに楽しんでくれ!それと、賞金のことだが、単位は円ではない」

 それを聞いたとたんに、生徒達は様々な反応を示した。がっかりする者、龍弥と同じように、やっぱりなと思う者、単位は何か推測する者もいた。

 しかし、校長の次の一言で空気ががらっと変わった。

「うぉっほん、単位はドルである」

 場が凍り付く、生徒達だけでなく、先生方もPTAの方々も・・・。一人、飛鳥だけが納得している。

「優勝賞金二百万ドルじゃ」

 さらに、しばしの沈黙・・・。

「うぉおおお!」×1060!

 歓声を上げる生徒達、その一方で、先生方は校長に詰め寄っていた。

「いいではないですか。たかが日本円で二億ですよ」

 校長は先生方にこう弁明した。それを聞いた龍弥は・・・。

「たかがって、お前はどこの大富豪だ!?ビ◯・ゲ◯ツか!?ロ◯クフ◯ラーか!?それともアラブの石油王か!?」

 龍弥のツッコミは誰にも届かなかったが、こうして、混沌の三日間が幕を開けた。


 ***


[一日目]


 一日目、今日は陸上や、テニス、武道のトーナメントで、比較的に少ない人数の競技が行われる。

 龍弥のクラス(一年A組)の主要出場選手は剣道の部・龍弥、空手の部・巽、弓道の部・春華、テニスの部・美冬、走り幅跳び、百メートル走・飛鳥、走り高跳び・律花である。

 剣道・空手・弓道の部は、あまり書いてもおもしろくないので、龍弥、巽、春華が優勝したとだけ言っておく。

 かくして、一年A組は30ポイントを手に入れた。

「まあ、順当ね。でも、他の武道種目は伸び悩んで、現在5位か」

「なに、ぶつぶつ言ってんだ?」

 得点を見ながら、ぶつぶつ言っている春華に巽が話しかける。

「得点よ、得点。」

「いや、健闘してるだろ」

 確認しておくが彼らは、一年生だ。一年生が5位に入っていること自体、すごいことなのだが・・・。

「いえ、まだ足りないわ。こうなったら・・・。ひひひ・・・」

 薄ら笑いを浮かべる春華。

「・・・何かするつもりか?」

「まあ、見てなさいよ」


 ***

 

 百メートルの予選を無事に通過した飛鳥が歩いている。

(予選終わったし、テニスでも見よう。うーん、女子達が華麗に…。)

「グゥレイト!」

(華麗に…。)

「無駄無駄無駄ー!」

(華麗に…。)

「バーニング!」

(って、全然華麗じゃねぇー!完全に男の戦いだよ!もっと女の子らしいかけ声ないのかよ!)

 あまりの男臭さに、内心で突っ込みを入れる飛鳥。

(で、肝心の美冬はというと・・・。)

「ドライブB」

 某テニスマンガの技を出していた。

(なにやってんのあんた!)

「ふ、俺様の美技に酔いな」

 相手も、これまた某テニス漫画のキャラのしゃべり方をしながら、あっさりと返球した。

(相手の人も、悪のりだな。しかも、返しちゃったよ。)

「ドライブD」

(はぁ。でも、ある意味すごいな、こんなの普通のテニスじゃないもの。)

 よく見てみると、他のコートでも同じ様なことをやっている。

(この学校は、化け物だらけなのでしょうか?いったい男子はどんなテニスになるんだ・・・。)

 正論な突込みを入れる飛鳥。でも、残念ながら男子テニスは、「普通」のテニスです。

(ん?美冬の試合が終わったみたいだ。って!相手が立ったまま気絶してる!そこまで・・・。)

 そんなこんなで、美冬は勝ち進んでいった。そして、決勝…。

(すみません。美冬の相手の人、女なの?男じゃないの?どう見ても、波動球百八式まで打てそうなんですけど…。)

「降参するなら今のうちだからね」

(うわ!顔に似合わずかわいい声、キモ!)

 飛鳥は鳥肌を立てながら、もしばれたらとんでもないことになりそうなことを思った。

「まだまだだね」

(うっわー、名言(?)デター!なんか、知らんがこっちまで燃えてくるぜ!美少女が言うからなおさらなんだZE☆)

 試合が始まった。サービスは美冬からだった。

 ボールが相手コートで顔面向かって跳ね上がる。しかし、相手も決勝まで残っただけあって、きっちり返してくる。美冬も難なく返す。しばらくラリーが続くと、相手は「ある構え」をとった。そして、レシーブされた打球は、ものすごい勢いで、美冬のラケットを弾き飛ばす。

(本当に波動球打ちやがった!)

 飛鳥はぞっとした、これでは美冬の腕が折れるかもしれないからだ。

 美冬はラケットを拾い、またサービスを放つ。相手は今度は最初から「構え」をとってレシーブする。また、ラケットが弾き飛ばされるかと思いきや、あっさりと返す美冬。逆に相手のラケットを弾き飛ばしてしまった。

 見ると、美冬の体はうっすらと黄金のオーラに包まれていて、ラケットを握った腕に大量のオーラが集まっていた。

(う、嘘だろ!?百練自得の極み!?)

「さぁ、油断せずに行こう」

(口調まで!?)

 飛鳥が唖然としていると、相手がぶつぶつ何か言っていた。

「こうなったら、二拾式で・・・」

 美冬がサーブをすると、相手が叫びながら返球してきた。

「二拾式・波動球!!」

(ええー!?美冬逃げて!!)

 しかし、美冬は恐ろしいことに「百練自得」の効果でそれさえもいともたやすく返す、しかも二倍の威力で・・・。

 相手はフェンスを突き破って、グランド方面に吹っ飛んでいった。しばらくして、血だらけのかわいい女の子が戻ってきた。

(あれ?さっきのやつは!?)

「さすが美冬ちゃんだね」

「綾ちゃん。大丈夫?」

「うん。なんとか。でもギブアップで」

 審判が美冬の価値を宣言する。観客からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。

「綾ちゃん、状態2は使わないほうがよかったんじゃ・・・」

 美冬は、苦笑いをしながら問いかけた。

「でも、そうでもしなきゃ、勝てないじゃない」

 綾は、屈託ない返答を返してくる。

「それに、別に引かれてもかまわないもん。彼氏ならちゃんといるし、理解あるし」

「そ、それならいいんだけどね・・・」

 美冬はそれ以上何も言及しなかった。

 美冬の優勝によって、クラスのポイントは、40に上がった。

「ってか、俺は置いてけぼりか作者さん・・・」

「誰に向かって言ってんのよ飛鳥!さっさと戻りなさい!」

「痛!美冬!?わかったから、わかったから蹴らないで!」


 ***


 陸上競技に目を移すことにしよう。

 陸上競技は、男子六競技、女子六競技の計、十二競技が行われている。こちらは、高校生としては、いい方に入る記録が出ていた。まあ、ありていに言って、さっきのテニスより百倍は普通である。

「はっ」

 葎花は健闘していた。しかし、余裕はもうなかった。後2〜3cmバーが上がっただけで、跳べなくなりそうだった。

 たたた・・・。

「はっ」 

 がたん。予想に反して、思ったよりも葎花は跳べなかった。がっくりと肩を落とす葎花に声をかける龍弥。

「よくやったじゃないか。これなら4位以内は確実だよ」

「でも、それじゃあ追いつけない・・・」

「気にすんなよ。明日があるし、それに体育祭なんて楽しめばいいんだからさ」


ばすん!


 突然、龍弥の頭を衝撃が襲った。春華がハリセンでたたいてきたのだ。

「痛ー!何すんだよ!」

「あんたねぇ。士気の下がることは言わないでって言ったじゃないの!」

 龍弥は頭をさすりながら、怒りを抑えながら反論する。

「おまえなぁ、いい加減普通に戻れ。どこのクラスもここまでやってはいないぞ」

 確かに、ほかのクラスはここまで賞金を取りに来てはいなかった。みんな普通に、体育祭を楽しんでいる。

「よそはよそ。うちはうちよ!」

「・・・」

「そんなじと目をしてにらんでも駄目よ。私が学級委員長である限り、私が法律なんだから」

 龍弥は何か言いたげに口を開いたが、何も言わなかった。逆に春華は不敵に笑いながら言い放った。

「それに、まだ決まった訳じゃないしね」


ガタン


 バーの落ちる音がした。どうやら全員の試技が終わったようだ。だが、龍弥は違和感を感じた。

「なんか短くないか?」

「そういえば・・・」

 葎花も同意するようなそぶりだ。春華だけ、なぜか勝ち誇ったような顔である。

『ただ今の走り高跳びは、トップ四人が全員同記録のため、同時優勝とし、ポイントは10ポイントずつ加算されます』

「よし、これで50ポイント!」

 龍弥と葎花はぽかんとしている。その横で、春華は歓喜の声を上げた。


 ***


 所変わって、こちらは100メートル走の決勝戦。

 飛鳥が位置に立つと、飛鳥は妙なにおいを感じた。しかし、すぐに消えてしまったし、他の選手は何も感じていない様子なので別に気にしなかった。

「位置について!用意!」


パン!


 スタートすると、飛鳥はどんどん加速する。飛鳥は、いつもより速く走れている気がした。どんどんゴールが近づく、そして、一着でゴールした。しかも、タイムは10秒29、好タイム過ぎて飛鳥はしばらくぽかんとしていた。この後、飛鳥は陸上競技界(100メートル走)を席巻することになるのだが、それはまた別の話。

 ところで、飛鳥は走り幅跳びも制した。こっちが本職なので当たり前だが、飛鳥曰く、「羽が生えたような感覚だった」そうな。

 他にも1年A組は、陸上競技で奇跡のような活躍を見せ、82ポイント3位で一日目を終えた。

 まあ、春華が何かをやったのは言うまでもない訳だが・・・。


 二日目に続く。  


コメディタッチにしようとしましたが、なってるかどうかは分かりません。

エイト・アイズを読んでもらうと分かるところも多いので、よろしければ、是非。

最後に、春華が何をしたのかは、次回分かります。

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