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金の鳥籠  作者: 真城 朱音
光の鳥籠
32/35

終章


 空から、しずくのような光がふる。




 目が覚めて、たった一人の寝台から起き上がる。白んではいるものの、まだ日ののぼらぬ外を見ながら、身支度を始めた。

 食事の席に着けば、愛する者の姿は無く、一人きりの食事を味気なく思いながら進める。すこしして、侍従に問えば肩をすくめて笑われた。そんなにも顔に出ていたのだろうか。同様に苦笑して、食べ終えた食器を片付けさせる。



 いつもの部屋を訪れて、書類に突っ伏すようにして眠り込んでいる妻の肩を、そっと揺らした。

「ファナリア、またここで夜を明かしたのか」

「ん……」

 研究しかけの術式を書きちらした紙によだれがかかっている。それでも目覚めぬほど眠りの深い妻の様子に苦笑して、背後で控えていた侍女の手から毛布を受け取る。毛布越しに妻をくるんで、抱き上げた。

 妻のためだけの部屋を目指し、たった一人、その寝台に横たえる。領主としての仕事を一手に担っているのは自分だった。しかし、その分、妻には大きな責任ある仕事が別にあった。


 妻は、今でも幻を愛している。


 その上で、幼い頃の夢を叶えたことに、後悔したことは一度もない。もどかしい我々二人に、周囲はしびれを切らしかけている。強引に奪ってしまえばすむ話だとたびたび言われるけれど、どうしてか、それを行動に移すことはなかった。

 仮面夫婦というには、願望を差し引いたとしても少し違う気がする。


 時々、妻が研究の合間にぼんやり空を見上げる。焦がれている表情で、手に入らないものだと安心するように、甘い瞳で、空に笑う。

 それを見ると、たまらなく胸が痛んだ。その目を見たくなかった。

 だから、後ろから、抱きしめる。

 強ばる細い肩、首筋に、構うものかと力を込めた。




 彼の愛する妻がその時、真っ赤な顔で周囲に助けを求めつつ、それでも幸せそうに両手で頬を押さえるものだから。



 だから、彼らの周囲はいつだって、しびれを切らしてけしかけるのだ。


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