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彼が廃人になった理由  作者: 紫月 一七
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【プロローグ】

 桜が降り注ぐ。

 淡い桃色の花びらが青い空を彩り、やがて次に大地に降りて地面を埋め尽くしていく。

 鮮やかな色彩。風に揺られた花が擦れる音だけが微かに響いている。

 ……静かだ。

 そう思いながら長閑な風景を横たわりながら眺めていた。

 眺めていた。ずっと眺めていた。ただただ眺めていた。これでもかというほど、眺めていた。


「またやってしまったのか……」


 不意にそう呟くと足音が聞こえてきた。


「あははっ! まーた、死んじゃったねー?」


 少女の声だった。無邪気で元気のいい、よく通る声だ。

 満面の笑みを浮かべた彼女が差し出すのは『復活の薬』という何とも捻りのないシンプルなアイテムだ。

 使用されると自分の身体が光に包まれる。そして数瞬の間発光を続けるとやがて収まり、死亡状態だったはずの身体が回復する。


「すまないな、チア」


 簡潔な礼に対してチアはにっこりして、


「いいよー、気にしないで」


「そうはいかん。この恩は必ず返す」


「もー、いいってば〜! だってー……」


 一息入れてからチアは両手の親指から順に折り曲げてカウントしていく。どうやら何か数えているようだ。何度か往復してから結論を出したのか嬉しそうに答えた。


「今日でもう60回目だし!」


「そんなに死んだのか私は……」


 ふと遠くの空を眺めると大きな山が見える。上下を桜と緑で分けたとても大きな山だ。

 山頂をドラゴンが舞い、それよりも上空には背景を覆う巨大な惑星の影が映し出されている。

 そう、ここは現実ではない。バーチャルなゲームの世界だ。

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