嫉妬
女の嫉妬は怖いとよく言うけど・・・。
実は男も割と嫉妬するもんなんです。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ねぇちょっと待ってよ!!」
商店街をサッサと歩くふくれっ面の青年、それを慌てた様子で追いかける少女。
久遠寺ヶ原学園に近いこの商店街では最早おなじみの兄妹にしか見えないカップル。だが、こんな姿を見せたのは初めてなのだろう。見た人全員が首をかしげていた。
事の起こりは、数十分前に遡るのである・・・・・・・・
~数十分前 商店街内某所~
「えへへ♪豹牙とのデート久しぶりだね!」
豹牙の手をキュッと握りながらそう言って笑う春都。
よほど嬉しいのだろう、その顔は明るく、表情はイキイキと輝いていた。
「そうだね~。最近色々忙しかったからね~。」
口調こそ春都ほど浮かれてはいないが、手を繋いでいる彼氏、神風豹牙の表情も嬉しそうだった。
そんな時、1人の男が声をかけてきたのである。
「お、春都に豹牙じゃん。デートかい?」
後ろで黒髪を括った赤目の青年、2人とも彼には見覚えがあった。
「あ、砕牙!」
「よぅ。まぁそんな所だが、お前は何でだ?」
獅子王 砕牙、不良部の部長であり2人の友人でもある。生徒会にはあまり好かれてないとか・・・・。
「あぁ?俺は暇だったからそのへんブラブラ歩いてただけだよ。あ、そうだ。悪ぃ春都、ちょっと・・・。」
「ん、何?」
「直ぐすむから。」
そう言って春都を呼び寄せる砕牙。そのまま自分から少し離れた所に行く2人を眺めながら、豹牙は内心舌打ちしたいような気分になっていた。
(・・・・・・なんだよ、デートって言ったじゃんよ・・・・。)
「で、何?豹牙が待ってるから手短にね?」
「わーってるよ、ただでさえ邪魔してんだから、時間はかけねぇ。」
そう言う砕牙の表情は引き締まり、話が冗談の類のものではない事を無言で語っていた。
「うん・・・。で、今度は何をするの?」
「ッ!!?」
そう春都に言われて慌てだす砕牙、どうやら何かをするのは図星のようだ。
そんな砕牙の様子を見て溜息を吐く春都。さっき「今度は」と言ったのは、目の前の悪友が何度も無茶をし、最愛の恋人は高頻度でそれに巻き込まれているからだ。当然、自分にも多少なり何かは起こる。
「今更だから怒っても仕方ないけど・・・、無茶はしないでよ?」
「いや、それは約束する。ちょっと危ない連中との食事があってな。アイツを同行させるから報告しただけだ。」
そう言って「悪い悪い」と頭を掻く砕牙。
「ん、まぁそのくらいなら別にいいけど・・・・・・。」
・・・・危険な連中のの食事を「そのくらい」と言ってしまう辺り、春都も大分砕牙に慣れてしまってるのだろう・・・・・・。
「あぁ、悪いな。ところで・・・・・・・。」
そう言って春都の後ろを指さす砕牙。春都がその方向を向くと、いたハズの豹牙がいない。
「さっき、怒った顔して行っちまったぜ?」
「えぇ!!!!?ちょっ、何でそれ早く言わないの!!!!」
砕牙の言葉に驚き、慌てて豹牙を追いかける春都。
そんな彼女を見て、砕牙は一言つぶやくのだった。
「方向聞かずに行ったからまさかと思ったが、マジで別の方向に突っ走ってったよ・・・・・。」
数十分後、やっと豹牙を見つけた春都だが、あまりにも時間がかかり過ぎた為に豹牙がさらに機嫌を悪くし、冒頭に至るのであった・・・・・。
まぁ、女程厄介ではないんですけどね?