あかいはな。
“ぼとり”と首を落としたその花を見て見ぬふりをした
いけないことではないのに目をそらして、手元の機械に集中した
そのはなに、その時なぜだかひどく胸騒ぎがしたから
「あいたいよ」と打っては消し、「今、ひま?」と思い付いてはため息を吐きだす、
さっきからこれの繰り返しをしている私は報われることのない恋をしている。
______首が痛い
ふと時計を見てみると携帯電話をいじり始めてすでに1時間たっていることを教えてくれた。
またため息がこぼれてしまう、幸せがさらりと逃げて行っても分からないくらいの数の二酸化炭素が私の中から出ていくのが嫌でも分かるのだ、それでも今、あの人が何をしているのかそれだけで頭の隅々まで埋まってゆく、そのことに幸せを感じてしまっている、例え報われなくても。
馬鹿な女だと鼻で笑われているのかもしれない、それでも私の頭にはあの人しか浮かばないのだ、それほどまでに求めてしまっている。
「あいたいよ」
ぽつりと口をついて出る言葉はそのひとつに限っているここ最近。
少し重症かもしれない、我ながら頭の悪い恋をしてしまった。
苦笑いと共に私の首は今日も下へと落ちる。
“ぼとり”それは最後の警告だったのかもしれない。
上を向いて咲くことを許されず、期限が来たら首ごと落ちる報われることのない、はな。
あかいあかい、はなを体の中心より左側に咲かせてしまった。
いけないと分かっていても、思いはとどまらずこぼれ、そのおもさに耐えきれずに落ちてゆく。
はなは弱い。わたしも弱い。あの人を追いかけている間はあかいはなが落ちぬようにとアンバランスな精神を保っていよう。
そう思える恋なのだ。
それでも、やっぱり今日もあの人にはあえない。
「ひましてる?」
そんなこと聞きたいわけじゃないけれど私にはこれが精いっぱいの逃げ道なのだ。
ぱたりと閉じた機械を枕元に置き、今日もひとり生暖かい床に就く。
どこかで”ぼとり”と音もなくなにかが落ちた、そんな気がした夜であった。
椿の花が首を落とすところを皆さんは見たことがありますか
"ぼとり"
まさにこの表現そのもの
今回は恋に悩みうつむく姿、終わりを暗示する音として椿の花には演じていただきました。
身体の中心より左側に咲いたあかいはなとは、
痛みを伴う恋は心に残ってしまうものです、そのちくりとした痛みが炎症を起こし赤く腫れてしまった女の子のアンバランスな心です。
こういった表現は伝わりにくいのかもしれませんが、1人でも伝わっていればいいなと思います。
この話のテーマとしては、恋しようと思ってした恋ではないということです。なので、痛みが倍になる不倫や浮気を裏のテーマとしています。
報われないと知っていても落ちる恋。そんな痛みが皆様に伝わっていたら幸いでございます。
では、次の更新日まで失礼いたします。