玉砕!
私のクラスにいる緒方君。背の高さは後ろから5人目くらいのまずまずの高さ。軽音でバンドやっているギタリスト。音楽好きな私にとってはぴったし。文化祭のコンサートで弾いている姿はサイコーだった。弾いてる曲はよく分かんなかったけど。でも、ギターはすっごくうまかった。ライバルがいるのかどうかは分からないけど、今のところ付き合っている相手はいないみたい。
私はそんな緒方君を待ち伏せ。
軽音部の部室があるのは第2校舎。私たちの校舎と第2校舎の間には中庭があって、二つの校舎は1階にある渡り廊下でつながっている。授業が終わると、私は真帆も夏織も見捨てて、この渡り廊下までやって来た。きっと、もう少しすると緒方君がやって来るはず。私はその渡り廊下で、何気にぶらぶら行ったり来たり。怪しいっちゃ、怪しい奴である。そんな事分かっていても、気にしてらんない。それよりも、もっと緒方君の反応の方が気になるに決まってる。
時々風に髪を乱されるので、手で髪を整えてみたりして、緊張の時間。何度目の往復だろうか。私が渡り廊下の端で体を反転させた時、緒方君の姿が見えた。横には緒方君の男友達がいるじゃない!
私は渡り廊下から中庭に飛び出した。
花壇に木々が植えられた中庭。身を潜める事もできそう。
身を潜めてどうする!私はストーカーか?
私はちょっと大きな木の幹に寄りかかりながら、ささっと髪を整えると、私は緒方君に声をかけた。胸の鼓動が高鳴っている。
「緒方、ちょっと」
私の声に緒方君は振り返って、何?って、表情を返してきた。私はそれに言葉で返さず、手招きをした。緒方君はにこりとして、友達をおいて私の所にやって来た。
今のにこりは何?もしかして、脈あり?
私の胸の鼓動はさらに高鳴った。
私は鞄から、緒方君のために買ったカディバのチョコを取り出そうと、鞄を開けた。
「あ、あ、あのさ」
緊張からか手の動きがぎこちなく、チョコを取り出せないまま、言葉もどもった。
視線も鞄に向いていて緒方君に合わせられていない。
本当は合わせる勇気がない?
「いいところで会ったよ」
そんな私に緒方君の方から話しかけてきた。
「えっ?」
どう言う意味なんだろう。そう思った時、ようやく鞄からチョコを取り出せた。
「福原さんと仲いいよね」
真帆?
何で真帆が出て来るの?
私は鞄から取り出し、右手に持っていたチョコを背中に隠した。
「今日さ、福原からチョコもらったんだけど」
真帆も緒方君狙いなの?それともただの義理チョコ?
「あ、う、うん。
で、何?」
「お前ってさぁ。福原と仲いいよな。
あの子って、カレシいるのかなぁ?」
「な、な、何でそんな事聞くの?」
「いや。ほらさ。
俺、実は福原の事好きなんだ」
は、は、はは。まるで、安っぽい小説か何かみたいじゃんか。
好きな人の好きな相手が自分の親友だったなんて。
私にどうしろって言うのよ。私の思考は緒方君の言葉を拒絶した。何を言っているのかなんて、聞こえやしない。私の視界も揺れ始めた。
私は背中を向けて、緒方君を無視して走り出した。
失恋だよ。失恋。
しかも、今私かなり取り乱しちゃったよね。緒方君、きっと私の事、変に思ったよね。
私は鞄から、あれを取り出してボタンを押した。
あの時と同じ、意識が遠のくような気がして、くらくらした。意識は暗闇に引きずり込まれる感じだ。




