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無事到着?それとも?

 まっすぐ伸びる道路。右側には住宅が並んでいる。左側にも住宅が連なっているが、その先に、さらに赤くなった空の下、黒っぽい緑色の空間が目に入ってきた。


 「あれは?」


 私の問いかけに、緒方君が一度私の方を見てから、答えた。


 「公園だよ」

 「緒方、それまじ?」


 私は呆れ顔で言った。だって、そうでしょ。もう空が赤くなっている時間帯に、子供たちが遊んでいるとも思えない。だとするとよ。そこは人気の無い空間。

 そんなところに近寄ったらだめじゃない。どうして、そんな事気付かないのよ。

 私は道をそれようと道の先に目をやった。

 右側にはずっと住宅が連なっていて、公園の手前には道は無い。

 左側も公園を囲むように道があるだけ。もはや、公園に近寄らずに進む道はないじゃない。

 引き返す?

 それって、敵の懐に飛び込むようなものじゃんか。

 早足で、公園の横を通り抜ける。それが私の出した結論。


 「急ぐよ」


 緒方君に小声でそう言うと足を速めた。私は背後の動きに注意しながら、足早に公園の横を通り過ぎて行く。背後だけでなく。横目で公園に人がいるのかどうかを確かめながら。

 中にはぽつりぽつりと青い照明が点いている。でも、人影らしいものは全くない。ここに連れ込まれたら終わり。

 寒い季節だと言うのに、私の背中を汗が伝った気がした。緊張の数分。もっと長い時間に感じたけど、きっと数分。私たちは無事公園を通り抜けた。

 緒方君の家は公園を抜けて、すぐだった。

 門扉の前で、私たちは後ろを振り返った。そこにはすでに闇に近くなった空間が広がっているだけで、やつらはそこにはいなかった。

 何とか、切り抜けた。

 私の心に安堵感が湧き上がる。


 「ありがとうな。

 よってくか?」


 緒方君がにこやかに言った。これで大丈夫。そう思っている事が、表情に現れている。


 「はは。

 真帆に悪いし、押し倒されたら困るから、やめとくわ」

 「それは残念な」

 「じゃあ」


 そう言って、私は暗くなった冬の道を駅に戻り始めた。

 役に立ったじゃん。

 こんな風に役に立ってくれなきゃね。

 ポケットに入れていたあの装置を取り出して、握りしめた。

 これで大丈夫。

 そんな思いが、私の足取りを軽やかにする。

 後は駅に戻って、家に帰るだけ。

 そう思った時、私の頭の中に駅で真帆を待ち伏せする緒方君のイメージが浮かんできた。

 あの時、私は真帆を駅に行かせなかった。そして、私のお父さんの車で、自宅まで送り届けた。なのに、結果は変わらなかった。

 今の状況って、それと同じなんじゃないの?

 私は思わず、立ち止まり、後ろを振り返った。

 湧き上がる不安感。


 私は暗い夜道を再び緒方君の家を目指して駆けだした。

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