つけてきた奴ら
どこで真帆と緒方君の事を知ったのかは知らないけど、男のくせに諦めの悪い奴。
そんなだから、真帆に嫌われるんじゃんか。
犯人は分かった。この後、こいつらが緒方君を襲う事も分かっている。
でも、どうすればいいのか、まだ私には分からない。
って、言うか、未来が変えられるのかと言う根本のところすら自信がない。
駅の横には交番がある。ここに駆け込んだって、何もしてくれやしないはず。何しろ、やつらはまだ何もしていないんだから。
駅の前は送り迎えに来た車が回転できるように、少しだけロータリーになっていて、そのロータリーを囲むようにほんの少しだけお店がある。ここには人気はあるけど、ロータリーから先にある道はもう住宅街につながっているだけのよう。今そこを同じ電車に乗っていた人たちが、ぱらぱらと歩いている。
あの人たちと一緒にいるしかない。
私は緒方君の手を取って、引っ張り始めた。
「行くよ」
初めてつないだ緒方君の手。恥ずかしさとうれしさが入り混じっているけど、そんな事を感じている余裕はない。
「どこへ」
緒方君が戸惑いながら、私に引きずられるように歩き始めた。
「だからぁ。あんたん家でしょ」
「いや、俺ん家、あっちだし」
私は立ち止まった。恥ずかしいじゃない。って言うか、緒方ん家知ってる訳ないんだから。
「じゃあ、さっさと行きなさいよ」
「お、おう」
そう言って、向きを反転させて歩き始めた。その先には奴らが待っている。私は奴らの前を避けて、ロータリーの車道を突っ切ろうと、緒方君の手を取って車道に出た。車もいない車道を足早に歩いていく。
私がふと振り返ると、奴らは立ち上がり始めていた。
私たちをつけてくる気だ。
何が何でも、この先を歩いている人たちの後をつけて行くしかない。
二人になったら、絶対にやつらは襲ってくるはず。
思わず緒方君とつないだ手に力がこもった。
「お前、力つえな。
って、言うか、何でお前、俺と手つないでんだ」
思わず顔が真っ赤になったのを感じた。私は手を離すと、緒方君に言った。
「あんた気付いてないでしょうけど、不良たちにつけられてんのよ」
緒方君が驚いた表情で、後ろを振り向こうとした。
「振り向いちゃだめ」
「お、おう」
「だから、早く家に帰んのよ。
他の人たちと一緒に」
「しかしだな。
何で俺が狙われてる訳?
で、なんで、そんな事知ってんの?」
一日リセットしたなんて、信じてもらえる訳もない。
不良たちが真帆の元カレだなんて言える訳もない。
「偶然、電車の中で不良たちが言っているのを聞いたのよ。
生意気そうな顔立ちで、気に食わないから、ぼころうって、言ってるのを」
「まじかよ?」
「だから、こうして私が降りたくもない駅で降りてるんじゃない」
それから、二人は足早に緒方君の家を目指した。角を曲がるときに、ちらりと後方を見る。やはりやつらはついて来ている。4人の男子高生。緒方君一人と私じゃ、喧嘩になっても勝ち目はないはず。何が何でも、逃げ切るしかない。
私の言っている事が本当だと知った緒方君から、緊張が伝わってくる。もはや、二人に会話をしている余裕はない。
私たちの周りにいた駅を出た人たちが、どんどんいなくなり、私たちの前には女子高生が一人だけになってしまった。それでも、時々この付近の住民らしき人たちが、車や原付、自転車で通って行くので、人気が無い訳ではない。
でも、油断はできない。だって、本当の今日、緒方君はやつらにぼこぼこにされたんだから。
私の心臓は高鳴っている。緒方君と一緒に帰っているからなんかじゃない。私たちの後をあの不良たちがつけてきているから。これが二人のデートとか、一緒に帰っているのなら、どんなにうれしい事か。




