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やっぱ、未来は変わらないの?

 幸い、私のお兄ちゃんは刑事。

 でも、相手が分からないんじゃ、先手必勝も無理な気が。

 その場で、押えてもらう。

 うん。それよね。

 私は一人で頷いた。

 そんな私と振り返った先生の目があった。大きく頷いていた私を、先生は何か誤解したようで、うんうんと頷き返してくれた。そんな先生に、私もにこりとしながら、机の中から、こっそりとスマホを取り出した。そして、先生に気付かれないように私はメールを打ちはじめた。


 「私の友達が不良たちに呼び出されていて、今日の夕方に夕陽丘に来てほしいんだけど」


 それだけを送った。

 私はお兄ちゃんを信じている。きっと、私の願いを聞いてくれると。

 お兄ちゃんからの返事を、私は少しの不安と大きな期待で待っていた。先生の声も、教室のざわめきも私の頭の中には入ってこない。ただただ、私の全神経はスマホを持つ右手だけに集中していた。

 右手に振動があった。耳にも小さな空気の振動が伝わる。

 私はうつむき、机の陰に隠しながら、スマホを操作する。


 「分かった」


 それだけだったけど、私はうれしかった。にんまりとして、私はスマホを引き出しの中にしまった。未来が変わるのかどうか不安が無い訳じゃない。でも、やるっきゃない。私は両手を握りしめ、腕を引いて力を込めた。




 今、私は帰りの電車の中。周りは下校中の色んな学校の生徒たちが楽しげに話している。私は一人ドア横に立って、流れる景色だけを見ている。一つ離れた車両には緒方君が乗っている。緒方君が降りる駅くらい、知っている。私は少し離れた位置から尾行して、お兄ちゃんと共に、緒方君を助ける。いえ、正確には私は表には出ないつもりなんだけど。

 そんな時だった。私はポケットの中で軽い振動を感じた。

 きっとお兄ちゃんからで、「もう着いてるぞ」とか、「どこに行けばいい」とか言うメールだと思って、スマホを取り出した。

 お兄ちゃんからのメール。

 やはり。そう思って、私が開くと、そこには信じられないメッセージが書かれていた。


 「悪い。

 今日は緊急な事件が起きて、そっちに行かなければならなくなった」


 私はうなだれ、スマホを持つ手も、力無くだらりと垂れさげてしまった。

 やっぱり、未来は変わらないんだ。

 それとも、お兄ちゃんは昨日もこんな事になっていたんだろうか?

 私には分からない。分かっているのは、このままでは緒方君がとんでもない目に遭ってしまうと言う事だけ。

 私は電車の中で、天を仰いで目を閉じた。

 仕方ない。とりあえず、私が緒方君を守るしかない。

 それが私が出した結論。

 未来を知っている。それが私の有利なところ。

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