変わらなかった未来
二回目の試験の最終日。
朝の日差しが窓から差し込むダイニング。昨日の今日とは違って、私は早くからダイニングに座っていた。目の前には昨日の今日と同じ、はほかほかのごはんにお味噌汁。それにアジの干物と厚焼き玉子が並んでいる。
私は箸も持たずにテレビのリモコンを手に、チャンネルを変えてはニュース番組を梯子。
「おいおい。
朝からご飯も食べずに何やってるんだ。
今日も試験だろ。テレビのリモコン手に何やってんだ」
手にしていた新聞をおろし、私に視線を向けながら、お父さんがそう言った。
「はぁい」
私は昨日の今日、あの事件をやっていたニュースのチャンネルにテレビを合わせて、リモコンを食卓の上においた。そんな私を見て、またお父さんが新聞に視線を戻した。右手のお箸がお皿に向かい、厚焼き卵をつかんで、口に運んでいる。
私もお箸を手にした。
私は目の前の食べ物を口に運びながらも、神経はテレビに集中している。
ヨーロッパの国の独立運動。来た、来た、来た。近づいてきた。
アジアの国の新しい国家主席。来た、来た、来た。次のニュースよ。私は思わず口の中の食べ物を十分かまずに飲み込んでしまった。
さっき以上に全神経をテレビに集中させた私は、上半身乗り出し気味にして、テレビを食い入るように見た。
「県立大和水川高校生2名が事故で死亡」
その字幕が出た瞬間、私はがっくりして、椅子に座った。私の忠告を聞かなかったんだ。
でも、次の瞬間に映し出された映像は昨日の今日に見た原付ではなかった。車の前部がへこみ、フロントガラスにひびが入った車高が低く、巨大なスポイラー、おっきなマフラーをつけた車。
「どう言うこと?」
思わず、私はそう言って立ち上がってしまった。そんな私をお父さんが怪訝な表情で見つめながら言う。
「なんなんだ。お前。
今日、変だぞ」
「は、はは。
って、言うか、事故に遭ったの私の学校の生徒だしぃ」
私がそう言ってごまかすと、そりゃ大変だと言うような表情で、お父さんがテレビに視線を向けた。そんな頃、事故に遭った生徒の名前が表示された。
安西翔太。
山崎翼。
「お前の知り合いか?」
お父さんが心配そうな表情で、私に言う。
「えっ、あ、う、うん」
お父さんはそれからも私に話しかけてきたけど、生返事を返しながら、テレビのニュースに集中していた。
事故は赤信号を前に停車しようとした二人の原付に、背後から仲間の車が追突したと言う事だった。
驚きである。
あの二人の死に方が変わっている。
私が言った忠告を聞いたのだろうか、信号で止まろうとしたらしい。
なのに、二人は事故で死んだ。
やっぱ、未来と言うものは大きなイベントがつながれて造られているんだ。
私はそう思った。
だったら、一日リセットする装置なんて、何の意味もない。
あれを売り払った人はそれに気づいていたんだ。
私はショックでもあったけど、あきらめにも似た気持ちになった。
所詮、人生なんて変えられるものじゃないんだ。
でも、でも、でも。




