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未来って、変えられるの?

 次の日の朝、少しの後悔と大きなしてやったり気分で、私は机に座って、教室に入って来るクラスメートたちを眺めていた。

 昨日の今日と同じく、窓の向こうはどんよりとした冬の空が広がっていて、真帆はすでに机に座っている。周りではクラスメートたちの会話が飛び交っているけど、そんなものは私の耳には入らない。一点集中。私の全感覚は教室のドアにだけ向かっている。昨日、告れなかった緒方君はどんな表情で、あのドアの所に現れるのか。私は興味津々だ。

 そんな中、緒方君が姿を現した。

 きっと、昨日の今日とは違って、真帆をちら見程度で教室に入って来るはず。

 私の胸が作戦の結果に高鳴る。

 少しの痛みと大きな期待。

 緒方君は昨日の今日と変わりなく、真帆に視線を向け、にこりと微笑んだ。

 私が真帆に振り返ると、真帆が小さく手を振っている。


 なんで?

 私の作戦はなんで失敗したの?


 緒方君が待ち伏せしている駅の改札口。そこを通らずに、真帆は家に帰ったはずなのに。

 狼狽してしまった私は思わず、両手を机につきながら、思いっきり立ち上がってしまった。

 クラスメートたちの会話で満たされていた空間に、私が立てた椅子をずらす音が広がり、一瞬の静寂が訪れた。みなの視線が私に集中した。

 私は真っ赤な顔で、何もないよと言う風に、にこりと笑みを浮かべてから、席についた。

 その理由が知りたくて、知りたくて、私は我慢が出来なかった。昨日のように、お昼休みまで待って聞くなんて、できやしない。私はそのまま、真帆の所まで行って、真帆の横にしゃがみ込んだ。


 「ねぇ、ねぇ。

 ちょっと教えて欲しい事があるんだけど」


 そう小声でささやいて、手招きをした。

 教室を出た廊下は登校してきた生徒たちで溢れている。そんな中、私が目指すのは非常階段。廊下をまっすぐ進むと非常ドアがあって、そこを開けると非常階段の踊り場。そんな場所に生徒たちは普通はいない。

 鍵を回して、取っ手を掴む。重く、きしむような音を立ててドアが開くと、冬の風が一気に廊下の中を駆け抜けて行く。

 寒っ!

 一瞬、外に出るのを躊躇してしまう。それは寒さからだけじゃない。私のまっとうな人側の心理が、引き留めようとしている。でも、それはむなしい努力。私の中のいやらしい人の意志に従って、行動してしまう。


 「緒方と昨日、何かあったの?」


 私の問いかけに、真帆がでへっと笑みを浮かべて緒方君に告られた事を話してくれた。昨日の今日の話では駅の改札口で待ち伏せされていたはずだったけど、今日の今日の話では夜に携帯で家の前に呼び出され、自分ちの前で告られたと言う事だった。何でも、改札口で待ってたけど現れなかったのでとか言ったらしい。携帯の番号は友達から教えてもらったらしかった。

 その手があったか。まぁ、当たり前か。

 しかも、自分の事をそんな遅くまで待っていてくれたことが、真帆をさらに喜ばしたらしかった。自分がした事とは言え、逆効果。そんな感じじゃんか。

 私は諦めるしかない。

 そんな気がした。そう分かってはいても、簡単に諦められないのが、人の心。

 私は机に座って、授業を聞かず、ぼぉーっと、考えていた。

 いえ、授業を聞かないって言うのは、いつもの事なんですけど。

 でも、いつもと違うのは考えている内容。今回失敗しちゃったけど、本当に未来と言うのは変えられるのかと言うこと。

 確かに私は、あれが入っていた段ボール箱を開ける場所を机の上から、私の部屋の床の上に変えた訳だけど、あれを手に入れたって言う事実に変化は無かった訳じゃんねぇ。もしかして、未来ってのは大きなイベントをつないで構成されていて、イベントからイベントまでの経路が変わっても、イベント自身は変わらないんじゃないの?

 だとしたらよ、未来って、変わらないのと同じじゃんか。だから、これの前の持ち主はこれを売り払ったんじゃないのかな。

 何か、そう何か、大きな事で試さないと。

 私は未来を変えられるのか知りたくなった。

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