表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

真っ当な私といやらしい私

 意識が戻り始めた私の前に広がっているは、さっきと同じ教室の光景。真帆が緒方君に告られる当日の昼休みが終わろうかと言う教室だ。目の前には真帆と夏織がいて、にこやかに話をしている。


 「ねぇ、ねぇ。

 今日さ、うちに寄ってかない?

 一緒に勉強しようよ。ちょっと早いけど、期末対策。

 私、数学で教えて欲しいとこあるんだぁ」


 この三人の中で、数学と言えば真帆である。私の言葉に一瞬、うん?と言う表情をした真帆だったけど、すぐに頷いてくれた。その笑顔にちょっと、胸が痛むじゃない。

 


 学校が終わると、私の家に三人で直行。

 当然、勉強の場所は私の部屋。私の部屋は窓際に机が置かれていて、ドアから入った右の壁際にはベッド、左の壁際には本棚にTVが置いてある。何もないスペースは、はっきり言って狭い。そこにテーブルを持ってきて、三人で教科書を広げた。

 ほとんど飾り状態で、真剣に見る事も無い問題集も、今日は活躍。の予定。期末対策の勉強会なんて言ってはみたものの、私自身の本心は乗り気じゃない。でも、そんな態度取れる訳もない。

 とりあえず、真剣な表情を作って、真帆に教えを乞う。


 「だからぁ、この問題に使う公式はぁ」


 教科書をめくって、公式が書かれているページを開いて、説明してくれている。


 「うん、うん、なるほど」


 などと相槌を打って、さも聞いて理解しているような雰囲気を出しているけど、私の前頭葉がばかの壁を作っていて、真帆の話なんか聞いちゃあいない。夏織もその説明に身を乗り出して、頷いている。 きっと、夏織は真剣に聞いているんだろうなと、私は思う。

 二人の差はその後に真帆が出す練習問題の結果に表れている。


 「はぁぁ、私って、なんておばか」


 ほとんど解けていない練習問題を見て、私がため息交じりに言う。

 それは本心だ。勉強ができないと言う意味だけなんかじゃない。嫉妬心のまま、こんないい友達の恋路を邪魔しようなんて、人としてもおばかじゃない。

 でも、もうここまで来たら、止められない。すでに時計は19時近い。もう緒方君は駅にはいないはずだ。でも、念には念を入れなきゃね。

 私の心の中はまっとうな人といやらしい人が、入れ替わって出てくる。でも、どうもいやらしい人の方が強いみたいで、結局行動はいやらしい方になっちゃう。

 今日、私はこの二人をお父さんに車で、家まで送らせる事にしていた。二人はもちろん、そんなと遠慮したけど、私が暗い夜道、危ない、危ないと言うと、お父さんも当然頷く。そうなってしまえば、断りづらくなって、見事二人は私の家から車で帰る事になった。

 これで、駅で真帆の事を待っていた緒方君は待ちぼうけ。結局、告れなかったはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミクロコスモス・メカニズム:作シンさん(クリックでどうぞ)
  *精子くんがリセットスイッチを手に入れたら!(コラボ作品です)
[勝手にランキング]よかったら、クリックお願いしますね。
評価・感想いただけたら、うれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ