誰がこんな物、買うんですか?!
私の趣味は音楽。机に向かって、勉強しながらも音楽は欠かせません。そんな私の机の上にはメロンマークのスマホと、無線でつながったアクティブスピーカーが置いてあって、私のお気に入りの音楽を奏でている。
机の上には問題集が開かれていて、その前で開いているノートの上には鉛筆が。
転がってます!
鉛筆持たずに、私は右手でマウスを掴んで、PC操作。
私の目はそのパソコンの画面にさっきから、くぎ付け。
「人生リセットスイッチ。
あなたの人生を一日リセットできます」
そんな怪しげな物がなぜかオークションに。
見たところ二つに折れる携帯くらいの大きさみたい。そこにボタンが1個ついているだけ。
最初に見た瞬間、ぷっと吹き出してしまった。
だって、あまりにもしょぼ過ぎ。こんなもので、どうやって、一日をリセットするって言うの?
本当にリセットできないのは当然として、人を騙すにしても、ひど過ぎ。よくある御利益のあるうん十万の壺。なんてのも、それなりの外観してるでしょ。でないと、人をだませないよ、たぶん。こんなしょぼい外観で、誰が騙されるって言うのよ。
そんな物だから、怪しすぎて誰も買おうとしていない。
誰がこんな信じられない物買いますか。
そう言いながら、ガン見の私。支払いはどうせお父さんのクレジットだし、ま、いいか。ついつい右指はクリックしてしまい。見事落札に。
きっと、これを見ていた人は、これを落そうなんて人はどんなばかぁ?と思ってるんだと思う。
うんうん、そう思うのも、分かる気がする。もっと見た目が良ければ、何かの使い道だってあるんでしょうけど、このだっさいデザインじゃ何にも使えない。
でも、それを落札しちゃったのは私です。そんな事、恥ずかしくて言えない。
友達に笑いながらでも、言えない。冗談っぽく言うにしても、あまりにも恥ずかしすぎるじゃない。
ばか、ばか、ばか。そう思いながらも、届くのが待ちきれない。
怪しげなところが、私をひきつけるのかな?
そして、それは数日後に届いた。普通の双子猫の宅急便で、段ボールに入って。
中を開けると、ぷちぷちにくるまれて、それは入っていた。
「おおー、これかぁ」
なんて、感動したりはしない。だって、ぷちぷちから透けて見えるその姿は、あのオークションサイトの画像通り、しょぼい箱だったから。
思わず自分のバカさ加減をふんと鼻で笑いながら、段ボール箱からぷちぷちにくるまれたそれを取り出してみた。
「ははは」
嘲笑気味に笑うしかない。手に持った重さ、いえ、軽さは私のスマホより軽い。絶対。
きっと、中身は何もないはず。これはプラスチック?のような空の箱だね。
私はそう思いながら、ぷちぷちを取り除いた。
なんだかねぇ。
手に持った私の感想。
安っぽすぎます。
上下左右、じっくり見渡してみても、知性のかけら?科学技術の気配も感じらんない。
はっきり言って、本当にボタンが一個あるだけ。でも、そこには間違って押さないようにか、ご丁寧に透明なふたがしてある。
他には電池を入れ替えるふたも、ACアダプターを差すところもないじゃない。
お金をどぶに捨てるとはこの事ね。
と思いながら、空の段ボール箱の中に目をやる。そこには何も残っていない。取説も無いのね。
凄っ!
そう思いながら、ふたを開けて、ボタンに手をかけてみる。
「まじ?
本当に押す気?
あんた、マジやばいかもよ」
そう自分の姿を自分で嘲笑しながら、ボタンを押してみた。
「何、これ?
毒ガスか何か出たんじゃないの?」
私はボタンを押した瞬間、意識が遠のくような気がして、くらくらしてしまい、自分のバカな行いを後悔した。でも、後悔なんて先に立たない。もしかして、私、死んじゃうのかも。本当のおばかね。




