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『クレイドル』 ―少年コウの物語―  作者: みゃも
【第三話】 追憶と、貧乏なのと・・・ほんの少しの将来への希望と不安
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【第三話】 追憶と、貧乏なのと・・・ほんの少しの将来への希望と不安




       ──あれはもう四年も前──


『本日、13:55。

宙旅客機AZ208便が、【HOP】チャリアビティーポリスから【HOP】ホウスパークンスへと亜空間移動を行う際、システム上のトラブルにより消息不明となりました。

一部では、《テロ》との噂もあります』

『旅客機AZ208便所有のマリアナ宙亜航空によりますと、原因はメインコンピューターや【HOPゲート】へ電力を供給している《電力会社》側に責任があるとの回答で。

それに対し、電力会社アトミック・エレクトロナショナルによりますと、太陽風発電所の一時的なトラブル及び事件性を伴う電力供給ストップによるものとの事で。電力会社アトミック・エレクトロナショナルCEOクーメル・パニッシュ氏によりますと、これは自然エネルギーを推進した《銀河惑星連合政府》側に責任がある、との究極の[たらい回しコメント]です』

『こちらが、《銀行惑星連合政府》による会見です』


『あー……本日の不祥事は、実に想定外の事でありまして。あのぅ~……』

『つまり、どういう事が起き、何が原因であったのか簡潔にお答え下さい!』

『簡潔……そういうのが一番難しいんだよなぁ~……あー…ある程度の専門的理解を願いたい。

つまりですね……一時的に電力の供給がストップした事によりまして。【HOP】を管制しておりますメインコンピューターへの情報が一部、正確に届いてはおらず。要するにエラーを起こしておりまして……更に、ホウスパークンスは3ゲートも有する【HOP施設群】なのですが、その【HOPゲート】への電力不足もあり。また本来であればこちらのチャリアビティーポリスの【HOP】よりワームホールINする際に。それと(つい)()す、出口であるホウスパークンスの【HOP】とのチャンネル予約成立を《先に》行いまして。A点からB点を、点と点を瞬間的に糸で通して結び、引き絞る形で時空間を歪め、瞬時開口と閉鎖によりまして亜空間移動をする訳ですが……。

今回のAZ208便の事故におきましては、この入り口である【HOP】チャリアビティーポリスでの《ワームホール:IN》は受け付けられたのですが……残念ながらこちらの出口となる【HOP】ホウスパークンスの《ワームホール:OUT》手続きが一旦は受け入れられてはいたのですが、急遽トラブルによる《【HOP】F-システム:重警報》が発令され、【強制:予約キャンセル】その対応としまして、フォールトトレラント・システムで回避行動は試みたそうですが。その対象の《HOP施設群》内にFS用予備チャンネルが無く予約一杯と、タイミング的にも絶妙ながら間に合わず。何かと手違いが度重なり起きまして……。

まあ~言い方を変えますと、片方の糸を通すための針は通っていた。のに、それに繋がって対をなすもう片方の針は、どこにも通っていなかった。と……そんなところで。なんと申しますか、本来、システム上起こり得ない事なのでありますが……あー…只今、専門チームとの間で今回の対応と是正対策。それと同時に、旅客機AZ208便の救出に全力を尽くす所存であります。

えー……コホン。以上──』

『ちょっとそれで、どうなるのですか?! 乗客員の安否は───!!』



『……とまぁ。この様な事なのですが……ちょっと我々素人には、分かり難い今回の政府からの説明でした。

そこで本日は、専門の方にお出で頂きました。専門家のローウェン・コーン博士です』

『ようこそお出で頂きました!』


 パチパチパチパチ♪


『早速、説明の方をよろしくお願いします』

『……その前に、ワシの紹介くらいせんかい。若造』

『あ……これは大変失礼を致しました…。

改めまして、こちらローウェン・コーン博士は、主に新型の次世代コンピューターを開発しておりまして。この《【HOP】管制システム》につきましても大変なご専門であります』

『なんじゃいその説明は? 新型ってなんのことやら素人にはさっぱり分からんやろ? 結局、なんの紹介にもなっとらんな。

ワシが開発しておるのは、電脳ニューロンコンピューターじゃよ。あほめ』

『……(汗)』

『まあーそのくらいでよいわ。余りムダな時間を取らせるな。若造』

『……(このクソジジィ!)』


 当時、自分はまだ五歳やった。

 この時はまだ、何が起こっているのか自分にはよぅ分からず。ただ親戚中のモンが家に集まって来て、心配そうにしとったわぁ。

 中には感情が高ぶって、泣いてる人もおった。

 なんとなくそれで自分が、その人を慰めよる始末や。

 普通、逆やろになぁあ~?

『コウちゃん、大丈夫かぁ? 何やったらうちらが引き取るさかい、心配なんかせぇへんでもええんよ』

『……ぅん』

 考えたら、おばさんはこの頃からずっと優しかったわ。

『いらん心配なんかせぇへんでええわ、おばはん! コウはこのワシが責任もって、育てたるわい!!』

『勘。お前、学校行きながらそりゃムチャやろぅ?』

 誰かと思うたら、おばさんの旦那。おじさんや。

『学校? そんなモン、やめたるわ! 行くだけムダや!!』

『あほ言うな……只でさえお前はアホなんや。学校くらい、ちゃんと行かんとダメな大人になるだけやどぉ。分かっとるのか?』

『そんなん、分かっとるわい!』

 ……今思うと。アホになる、っちゅーことだけが分かっとったんやぁなかろうか……? そんな気がするわ。

『コウはワシの弟やど。言うなれば、《兄弟愛》や! ワシが育てるのが当たり前、ちゅーもんやろ!』

 こん当時の勘兄はん、カッコ良かったわ。ホンマに。勢いだけやったが……。

『……分かった。そこまで言うのなら、勝手にし』

『ちょっと、幾ら何でもそんな簡単に!』

 おばさん、なんや凄く心配そうや……今ならその理由もよう分かるけどな。

『任しとかんかい! このクソ弟一人育てるくらい、ナンボのもんじゃい! ガアーッハッハッハ!』

 クソ弟て……それは、あんまりやろぅ?


 それから一年もせんと、就職先で勘兄はケガをした。

 それから間もなく、生活苦から今の状態に突入──。


 人間、一度楽を覚えるとダメになる。勘兄を見とったら、つくづくそう思えてくる話やなぁ……。





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