連合公務員のおっちゃん ―3―
それから三十分後……。
「今日はなんだか随分とサービスして貰ったようで、ご馳走様でした。
また来るからね。じゃあーおやすみ」
「ま……毎度おおきに~♪」
毎度やない! もう二度と来るな!! バカ☆
しまいにゃ自分、破産してしまうでぇーホンマに! ボケっ☆
……と願ったのに。
「今晩は」
また次の日も来よった……なんつぅー図々しい奴やねん。
ホンマにもぅ、勘弁しぃやぁあ~……。
「また来たよ♪」
そんなん見たら分かるわぁああーい! 目、二つも伊達についとるのやないどぉー★
「ま……まいどぅ~」
まいどやないで……ダメや。うち、破産する……コイツに店、潰される。
破産したらどうなるん?? もう死ぬしかないんかぁ?
自分、人生もう終わりかぁ~? そんなん嫌や……神様助けて……!
ドラえもん助けてぇええ~~……!
「はい。これは昨日の分の代金。足りてるといいんだけど……」
なんやろ? 紙切れが目の前に置かれた。両手に開いて持って見て、もうびっくりや!
──い、1万円ンッ?!
一気に、逆転大儲けやないかあぁあー!!
「……え? なんで?? どういうことなん???」
「実は、悪いとは思ったんだけど。あれから昨日、ここの事調べさせて貰ったんだ」
「………しらべ?」
───うええぇええええええっ?!!
あ、あかん……お、終わった。完全終了や! ダメだめや……。
「じゃ……じゃあー……!」
「ああ、事情を知った以上。あとで問題になるかもしれないからね。君からの借りは、ちゃんと返しとこうと思ったんだ」
「あ……あのぅ~……つまり、それは?」
や、ヤバいなんてもんやないわコレ……今日は捕まえようと思って来たって事やないかぁ!
もう逃げるしかあらへんわぁあ~!
――タ、タマ! 今すぐ大急ぎで逃げるどぉー☆
「それとね。どうも君は、ワタシが君の事を捕まえたり指導したりすると思ってる様だけど。そんな心配は全くないよ」
「──?!☆」
まさに逃げようと構えとったら、そないなことを言うて来よる。
「え?? それは、あのぅ……どういうことですの?」
「だってワタシは、その手の担当じゃないからね。
それにね、君の家は聞く所によると。相当に大変みたいだから、当局も内々に容認してる、ってのが実情みたいだったよ。あ、これは内密にね!」
「え……それ、ホンマかぁ?!」
――し、しらんかった!!
そうやったんか?! 逃げるのは辞めや☆
「『保護制度もあるというのに、健気に働いている』ということでね。残念ながら表向きには出来ないんだけどさ……。
下手に触れたりしたら、またマスコミが喜んで騒ぐだけだからね。
君は知っているか知らないかワタシには分からないけど。この惑星の財政は破綻しかけてるんだ。
寧ろ君の様な子に何もしてやれない今の行政に罪がある、と言えるしね」
「そ……そんなことは……」
政治とか難しい話しされても、自分にはよう分からへんわぁ……。
「そうかい?
取り敢えず、酒を一杯貰えるかな? 一番高いのをね」
「あ……はあい! 今直ぐにぃ──♪☆」
一番高い酒っていったって、うちに置いてあるのはたかが知れてるけど。なんや知らん。助かったみたいや♪
「それから昨晩のイカ、またあったら下さい。あれはホントに美味かった。それからエビもね」
なんや景気ええ人やなぁー。
「あんまり高カロリーなモンばっかり食べとったら、体に悪いよ。
野菜たっぷりのお好み焼きも食べたがええで。心配せんでも、このお好み焼き自分がおごったる♪
サービスやぁあー!」
助かったのや。お好み焼きの一つくらい、安いモンやしな♪
「じゃあーそれも下さい。あと、代金はちゃんと払います。理由はさっき言った通りなんでね。
しかし君はホント、しっかりとしているな。大したモンだよ」
「……」
……なんでやろ?
このおっちゃんの笑顔が、今はやけに凄い優しそうに見えてきよるわ……。
自分、こないな感動出来る大人の人と出逢うのって初めてや……。
「……あまがわ こうき」
「え?」
「自分の名前や! 天川光輝。
いつも常連のみんなからは『コウ』って呼ばれてるから、おっちゃんもこれからは気軽にそう呼んでくれて、ええよ♪ 特別や!」
「そうか。じゃあコウ君。今後もちょくちょく寄らせて貰うから、よろしくね」
「もちろんや! 自分、儲けて助かるし♪」
「ハハハ♪ 本当にしっかりとしているなー」
なんや知らんけど。また良い常連客が増えたわ♪
しかも、連合公務員さんたちから認められてる、みたいなことを言うてたし。それめちゃ助かる♪
……だけどその後、
「だからって、余り調子に乗ったことやり過ぎたら、いやでも取り締まらなくちゃならなくなるからね」
と注意された。
なんや、大人の事情って複雑なモンなんやなぁあ~……?