《カナワン・ホースキンの夢と小さな命》 ―7―
それから次の日、朝日も昇らん内から牛乳配達。それから学校で寝て、またターメルをド突き! 先生に怒られ……。散々な思いで、今は夜の鉄板や。
流石に今日辺り、ウトウトと眠たくて、疲れてきとる。
「コウちゃん、コウちゃん」
「は……はいっ!! もうターメルの頭、ド突いたりしません!!」
「……ハ? イキナリ、なんの話やぁ?」
「これはアカン。コウちゃん、完全に疲れてるのやろぅ?
今日はもうお店、休んじゃったら??」
「──ハッ!? だ、だいじょうぶいッ!!」
「だいじょうぶい、って……。こりゃホンマに、アカンなぁー。ダメだめや」
大丈夫でピースしたら、おっちゃんらに呆れられてしもうたわ。失敗や。
「とにかく、配達ロボットの方は直ったから。もう明日からはいいよ、コウちゃん♪」
「……え? それ、どういうコト??」
「いや、そやからな。配達ロボットが今日、昼過ぎにメーカーの修理から戻って来たのや。そやから明日からは、早起きしなくてもいいよ♪
今日まで本当にありがとうございます。助かりましたわ、ホンマに♪」
「ん……ぅん……?」
それって………あ、そういうコトかぁ……。
「コウちゃん、今日はそのイカだけ食べ終わったら自分たちも帰るから。コウちゃんも今日は、もう早目に帰って、休んだら? 疲れとるのやろぅ?」
「そうやな。なんや随分と疲れが顔に出てるし、ホンマに。体は大事にせな」
「ん……ぅん……」
ほんなら明日から、アレかぁ……もう、ないんか……。
「なんやホラ、元気ないもんな? やっぱりコウちゃん。疲れとるのやで」
「毎朝、早くからの牛乳配達やったからなぁ……。エライ悪いコトしてしもうたで、ホンマに」
「全くだ。そもそもアンタがやればいいのに、コウちゃんにそれをやらせたのやからなぁー」
「そないな言い方ってないやろ?
なぁ~? コウちゃ……ちょっ──!?」
アカン……もぅ、ダメや………。
「──コウちゃん。ちょっと、しっかりしッ!!」
「と、とにかく。救急車や!! 急げッ!! 早よするんや!!!」
「わ、分かった! 任しときー!!」
なんや遠くで、そんなおっちゃんらの声が聞こえた……。
でも、自分は大丈夫やぁ。平気やで。全然、大したコトないわぁー♪ 楽勝やでぇ~♪
「コウ……しっかりし。コウ……」
なんや、おばさんの声が聞こて来る。おばさんが近くにおるのかと思うと、なんや気持ちがそれだけで楽になるわ。
幸せな感じや。
「こりゃ、アカンな……くそっ、あの勘めッ! こんな時に、どこへ行ったのやあッ!?」
おじさんや。なんや怒ってるなぁ……なんでやろ?? またなんかやってしもうたかなぁ??
──ガラッ☆
「なんや、おじさんにおばはん。来とったんか?」
「来とったんか、やないでぇー! こンのボケ!!」
──グワアンッツ!!☆
「い、痛いやんけぇえー!!」
「痛いやないわあー! 今まで病人ほったらかしにし、どこへ行っとったのやあー!?」
「メ、メシ喰いにや……なんや、文句あるの?」
──ゴオンンッツ!!☆
「コウが栄養失調で倒れた、って時に。なにを寝ぼけたコトをお前は抜かしとるのやぁー!?」
「そ、そないなコト言われたかて……ここで自分も食べなかったら、自分まで栄養失調で倒れちゃう、かもですよ?」
「そんなモン。全然、構わへんわ。お前が倒れたところで、誰も周りは悲しみもせん!」
「──ぬ、ぬわああぁッ!?☆」
「そもそも、コウとお前を同列に比べるコト自体が間違ってるやろ。そのコトに気づかん内は、お前は全く、ダメなままやろうな」
「そ、そこまで言うかぁあー!?」
「言われても仕方のないことを、普段からやっとるからやろ」
「まあまあ……とにかく今は。コウが目を覚ますのを、皆で神様にでも願っときましょう?」
「そやな……こんなアホに構っとっても、何の意味もないからな。ムダや」
「お……お……言うとくけど、自分だってなぁーッ!!」
「自分だって、なんや? 言うてみ。鼻ほじりながらでも、聞いといてやるわ」
「……コウの事を、心配してるのや」
──ぶわあきゃッツ!!☆
「そんなモン、当たり前やろ! これで、心配もしとらんとか抜かしたら。その場でお前、首絞めたるど、ホンマに!!」
「そ、そこまでいうかぁあー?!」
ハハ……なんや知らんけど。勘兄がメチャメチャおじさんから怒られとるみたいやなぁ。
なんや、いい気味やで、ホンマに♪ でも自分は元気で大丈夫やから、安心したってやぁー。




