《カナワン・ホースキンの夢と小さな命》 ―6―
「なんや格好ええなぁー♪ それってアレなんやろ、【HOP】っていう所も通るのやろ?」
「あ、よく知ってるねぇー♪ それがさ。普通はこの惑星からだと《【HOP】ホウスパークンス》なんだけど。そこの便の予約がどうしても取れなくってさ。10日先まで、一杯で……。仕方なく、《【HOP】バイカリ》からだから、もう大変で」
「なんやよぅ、分からんけど。そっちの方が少し、遠いの?」
「少しなんてモンじゃないよ。ここからだと10日は掛かるから」
10日て……いくらなんでも遠過ぎやろ。
「でもそれやと、同じやないの? オーバードライブが辛いのなら、席が空くのをここで待っといたら? その方が楽やと思うで」
「まあ、そうなんだけどね。それは実を言うと普通の旅客機の場合の話……でさ。
自分は今回だけ特別に、軍用艦船に乗せて貰えることになってね。
軍用艦船の場合、本来は許されていない、オーバードライブの『超可モード』で行けるから、5日ほどで着くそうなんだ」
「10日が、5日……なんやもぅ、メチャメチャな速さやなぁー」
「うん。オーバードライブって本当は光速を超えられるそうなんだけど。それをやると、時空ノイズが発生しちゃうそうで、通常は使用禁止になっているんだよ。法律的にね、規制されてるの。
今回は軍用艦船で、しかもマスター級っていう指揮艦船でさ。新造艦の航海演習で《【HOP】バイカリ》まで、テスト航行を兼ねて行くそうだから。自分もついででそれに乗せて貰えることになったんだ」
「へぇー……」
なんや聞いてて、途中からもぅ、全然わからんようになってきたわ。
「なんやよう分からんけど。それで10日が5日になったんかぁ?」
「そうそう♪
《【HOP】ホウスパークンス》だって丸1日は掛かる距離だと考えると、そんなに悪い話ではないからね。
それにもう既に、この空の上の惑星軌道上で待機している筈なんだ。あと20時間後には、ワタシはその艦船の中さ。
まあその中で、さらに10時間以上も待たされるらしいんだけど……。でもこれは寧ろ、自分としてはいい機会かな? 折角だから船内でも見て回るさ」
「なんや格好ええモンやなぁー♪」
「ハハ♪
あ、コレ。本当は機密情報だから、他の誰にも言わないでね!」
「ん、ぅん……」
……なんや。責任重大やなぁ。とにかくこの件は、他の誰にも言わず、黙っとこ。
「実はワタシは、子供の頃。
軍人……というか、そういう艦船乗りになるのに憧れていたことがあってね。それで誰かに、この喜びっていうのかな? 話しておきたかったんだ。
一言でいえば、自慢話みたいなモンかな? ある意味、夢がコレで叶う訳だしね♪ ハハハ!
まあ、コウくんになら話してもいい気がしてさ。というか、『話したい』って思ってね♪」
そうやったんかぁ~。夢かぁー……。
自分なんて、未だに一度もそういうの考えたことないわ。
「夢が叶ってよかったな、ホーキンのおっちゃん♪」
「ああ、ありがとう!」
「でも、何でホーキンのおっちゃん。それなら最初から軍人にならへんかったのやぁ?」
「うん……実際の戦争ってものをこの目で見ちゃったから、かな……。
まあ、現実は想像以上に大変そうだった、ってコトだよ。ハハ♪」
「そうなんかぁ……」
そういえば、自分が生まれるちょっと前まで。この近くで戦争があった、ってくらいの話は聞いてる。ホーキンのおっちゃんは、中学とかその位の頃に。それを間近で見たのやろうかぁ?
気になるなぁー……。
「そういえば、コウくんにも夢とかは、あるの?」
夢、か……。そんなモン、考えて生きてる余裕もなかったからないけど。
「そうやね。この惑星で『一番の鉄板焼き屋になるコト』くらいやろうかなぁ。今は♪ ナハハ♪」
「ハハ! そりゃあーまた、凄い夢だねぇ! 本気で目指すとなると、物凄く大変だろうけど。コウくんなら、いつかなれる気がするなぁ」
「なんで……そう思うのやぁ?」
自分、そうなれる自信なんて実を言うと全くないで。今のは軽い冗談や。
「だってさ。普通の人と比べたら、鉄板に掛けては経験値がまるで違うでしょう?♪ 圧倒的だよ」
……あ。なるほどなぁー♪ 言われてみると、それもそうや。なんやちょっとだけ、自信がついてきたわ!
「それよりもコウくん……。ちょっと、痩せた?」
「え?」
「久しぶりに見たら、なんだか随分と痩せた気がしてさ。
ちゃんと毎食きちんと食べてるの? 睡眠時間とかは、しっかり取れてる?」
「うん、食べてるよ(ここで)。寝てるし……(学校でやけど)
それ、ホーキンのおっちゃんの気のせいや♪ 心配ない。ホーキンのおっちゃんの方こそ、疲れてるのやないの?」
「そう、かな? ハハ。確かにちょっと最近、ワタシも疲れちゃってて。
言われてみるとそうだね、見間違えたのかもしれないなぁ」
「そうそう。単なる見間違えや♪ 自分は、大丈夫♪ 気にせんでええよ」
それからちょっとして、ホーキンのおっちゃんも帰っていった。仕事場にや。
本当に大変そうやなぁー、て思うたわ。みんな生きるのに、必死や。自分だけやない、てそう素直に思うたわ。




