《カナワン・ホースキンの夢と小さな命》 ―4―
そんなこんなで夜は、夕方から夜遅くまで鉄板。朝は、日も昇らん内からの牛乳配達。おかげで寝不足やから、学校でついついウトウトと眠りこけてしまう有り様やった。
そんな自分を見ては、ターメルのあほが、
「先生! コウのあほが! ……いえ、コウくんがまた。居眠りしてます!!」
て告げ口しよる。
「うるはいわい、ボケッ!! こっちは〝真面目〟に眠いんや。ドあほ!!」
──ゴンンッツ☆!!
って、思わず。ターメルのドあほ、ド突いたったけど。考えてみたら、悪いのは自分の方か?!
「真面目に眠いとか、意味わからんわ! コウのドあほ!!★」
とかなんや、泣きかぶってグチャグチャとターメルが言いよったけど。寝ぼけてて、よう意味がわからんかったわぁ。
しかもそのあと、メチャメチャ先生から怒られてしもうたぁ……。
つらいわぁー、ホンマに。たまらんわぁ~……。
それでも家計的には、随分と楽になってきた。ホンマに助かったわ♪
「おばはん。こんにちはぁー♪」
「あ、コウ。いらっしゃあ~い♪ 今日も、いつもので良いの?」
「うん! それと今日はな。お酒の大御所と中納言もください♪」
なんや言うてて、幸せを感じるわぁあー♪
「あら? 最近は不景気とかで、いいお酒仕入れても、『誰も飲まない』ってなんや言うてたのに。仕入れても大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫♪ 今日と明日、上得意さんが来る予定なんよ♪ だから、問題はないんよ」
「あ、それで大御所なんやねぇー。それは商売繁盛で大変よろしいなぁ~」
「うん! 今はメチャメチャ生活が楽になって来てるんよ♪」
「……え?」
それを聞いて、おばさんの顔色が急に曇った。
「今は、て……。なんやの、それ……。最近まで、なんやそうやなかったかのような言い回しやけど。もしかして、コウ。最近まで、生活の方が大変やったんやないでしょうねぇ?」
「え? そ、そんなコトは全然ないよ!! 平気の大丈夫や♪」
「そ、そう……。でも、前よりもちょっとだけ気持ち、痩せているような気も……」
「全然、全然! 元気も元気♪! ドワッハッハッハ!」
ヤバイわ。下手なコト言うてしもた。おばさんが自分を疑わしい目で見よる。
「……それ。本当ですの? 信じてもよろしいのやね?」
「本当よ♪ 人生、楽勝や!! もう笑いが止まらん。ナハハハハ!」
正直、言うてて、辛いわ。
「まあ……それならええのやけど。本当に大変やったら直ぐに、正直に言うて来るんよ」
「う、うん! いつもありがとな、おばはん♪」
それからいつものように、タマの荷台に跳び箱乗りで乗ったった。
「タマ。ほな、いこかぁ~♪」
『ハイナ~♪』
そうして、いつものスピード違反で走ってゆく。
おばさんはその場で吐息をついて、見送っていた。




