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『クレイドル』 ―少年コウの物語―  作者: みゃも
【第六話】 ゲショ鯛とシンゴ兄ちゃん
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ゲショ鯛とシンゴ兄ちゃん ―4―

「たっだいまぁ~~♪」

 いつもなら、22時くらいまでは鉄板やってるのやけど。今日はシンゴ兄ちゃんも来てるから、21時で帰った。丁度、客も途切れたしなぁ。まあ、たまにはこんな日があってもええやろ、そう思うたのや。


「お前っ、アホやなぁー。そないな安い賃金で12時間とかアホやろ?」

 なんや、帰ってくるなり家の奥の方で揉めとるなぁー、と思うたら。バイトの話みたいや。

「シンゴ兄ちゃん、今、帰ったでぇ~♪ 勘兄、なにそこで一人ゴネとるのやぁ?」

「どうもこうもないのや! コウ、聞いてくれ」

「あはは♪ コウの大将お疲れさん」

「はいな♪ 『どうもこうも』て、何がや? 勘兄」

「コイツ、アホやから。賃金のメッチャ安いトコで12時間も昨日、働いとったらしいのや」

「へぇ……」

 賃金が安かろうがなんやろうが、何一つ働きもせん、働こうともせん勘兄よりは全然マシやと思うのやけどなぁ……。

「そうは言うけど。今はこの不景気だから、こんなモンだって。なあ、コウの大将?」

「まあ……自分もそうやと思うわぁ」

 細かな事情は知らんけど。大抵、間違えてるんは勘兄の方やからな。まあ、こんなトコで返答はええやろ。

「『自分もそう思う』てな、コウ! あんま適当いうなよ!

時給250円のバイトて、子供の小遣いやあるまいし、メチャメチャやろ!」

「に……250円?!」

 それは確かに、安いわ。安過ぎや!

「いやいや。一回一日3000円の日雇いってことで、初めは聞かされてて。実労4時間程度って聞いていたしさぁー。

それなら割りはいいな、と思っていってみたら。雑用やらなんやらで、結果的にね。それくらい掛かっちゃった、ってだけよ」

「それはまた、運の悪い話やなぁ」

「そうそう。その日に限って、たまたま運が悪かっただけでさ。ただのネタ話なんだから、そうムキになるなさ」

「ムキにもなるわあーい! なんツッー横暴ぶりや。特別にその分、余計に払ったってもええやろ!」

「わはは♪」

 なんやよう細かいことは分からへんけど。勘兄が今怒ってるのは、そんな友人シンゴ兄ちゃんに対する雇い主に対してのものみたいや。

 勘兄には、そういう良いところもあるんよねぇ~。

 それはそうと……家の中、見回すと。テーブルの上にたくさんの食べ散らかしやらなんやら凄いことになってる。

『……まさか』と思い、冷蔵庫前へいって開けてみたら。案の定、中身は綺麗さっぱりの空っぽやった。 

 そういえばうちに来るの、数ヶ月振りですっかると忘れとったけど。シンゴ兄ちゃんは、メチャメチャな大喰らいで。普通は4人くらいで食べる鍋でも、一人で簡単にペロリと食べる驚きなお人やった。しかも、そのあとの雑炊も当たり前にきっちりと平らげるお人や。完璧に忘れてたけど、こうなるのは十分、予想出来とった事態や。

 アカン、自分うっかりとしとったわ。

 呆れて呆然としとる自分の脇を、勘兄は通り過ぎると。箱の中から果物とお菓子を両手一杯に抱えて持って行き渡しよった。

 って、まだ食べる気かぁ? びっくりするわ、ホンマに。





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