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『クレイドル』 ―少年コウの物語―  作者: みゃも
【第五話】 クレイドル
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クレイドル ―2―


 何とか学校では誰にも会わずに済んだんはええんやけど。明日から学校にはもぅ……よう行けへんわ。

 自分も勘兄の様なロクでもない大人にこのままなるんやろうかぁ……。

 トボトボとそんな事を考えながら帰っていると、家の前に誰かがおった。


 うげ、先生や!!

「──あ! 天川くん!!」

 冗談やない! こんなの想定外や! 今、先生に顔なんか合わせられへん!!

 全力猛ダッシュで先生を振り切り、家から十五分程離れた河川敷で時間を潰すことに決めた。もう今日は、店開く元気もどの道ないしなぁ。お客はんにこんな顔、見せられへんもん。

 しかも先生が家におったということは、勘兄(かんにぃ)に今日の出来事を知られた、って事やろうしなぁ……。

 なんやもぅ家にさえ帰りとうなくなってきたわ……。


 段々と見上げる空に星が見え始めてきた。寒さもあって、体がぶるぶると震えて来よる。お腹も減ったし。これからどないしたらええんやろうかぁ……。このまま死ぬのかもしれへんな? まあ、それでも構まへんわ……。生きとっても、何もええことなんかあらへん。そんな気がするもん。


 そう思い、突っ伏してると。誰かが急に、暖かいオーバーを自分の体全体を覆うかのようにそっと掛けてきた。顔を上げ誰やろうと思うて見上げてみてみると、そこにはホーキンのおっちゃんがおった。

「一体どうしたの? こんなトコで……」

「……ぅ」

 ホーキンのおっちゃんの自然な優しさが、なんや知らんけど身に染みた。自然に受け入れられた。

自分、気付かんうちにしがみついて、恥ずかしいくらいにワーワーと子供みたいに泣いてとった──。


 ◇ ◇ ◇


「……そっか、そんなことが」

「ぅん……。

自分、もぅ学校行けへんわ。ウソつきやって、もうみんなからそう思われてるやろうし。明日学校行ったら、みんなから罵られるだけやろうし。もぅ行きとうない……。

ホーキンのおっちゃんも自分のこと、最低な奴やと思うたやろぅ?」

「ううん、全然」

 エラい、あっさり言うなぁ~。

「ウソや☆ ホーキンのおっちゃんも、大嘘つきや! テキトー過ぎや★」

「お、おいおい。

コウ君が思ってるほど。みんなもそこまで根深く思ってはないと思うんだけどなぁ~……。

嘘ついたことにしたって、もう十分反省しているみたいだし。すごく懲りてるんでしょ?」

「ん……ぅん」

「取り敢えず明日、学校へ行ってみんなには謝れば済むんじゃないの? それで罵って来る子が居たら、いつものコウ君らしくやっつけたらいい! だってコウ君。強いじゃない!」

「……」

 こっちの気持ちも知らんと、簡単に言うてくれるわ。

「……今はそんな元気も勇気もない。あるように見えたかぁ~?」

「……そっかぁ。じゃあ……ン―そうだなぁ~……」

 なんやホーキンのおっちゃんも頼りにならんなぁ~……。

 思わず頬杖をついて、ため息や。


「……自分、勘兄みたいに。その内なるんかなぁ……兄弟やし、仕方ないんかな?」

「……あの例のお兄さんか。

コウ君があのお兄さんみたいになるとは、自分にはとても思えないけど……。

──よしっ!」

「よし?」

「ちょっと自分に付き合って貰えないかな? 直ぐそこだからさ」

「……ぅん」





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