【第五話】 クレイドル
はぁあ~……学校の宿題なんて、大嫌いや……。
「次の問題は、ターメル・クローズくんだね」
「はいッ!」
ターメルは勉強出来るから、なんやその返事も現金なモンやなぁ~。
前の席から順番に十問。算数の宿題を、教卓にある大画面モニター使ってみんな一問づつ答えてる。このままやと自分、最後の問題で当たりそうや……。
この最後の問題だけは、よう分からんやったのや。どないしよ……。
「はい。よく出来ました。次は、天川光輝くん。前へ」
「は、はいっ!!」
呼ばれて思わず立ち上がり、仕方なくギクシャクしながら教卓に行ったけど、ダメや……。他の問題の答え参考にしてもよう分からへん。お手上げや!
「え……えと……コレを……」
だ、ダメや……無謀や。
解こうとすればするほど焦って、もう頭の中、真っ白うなってきたわ。
「……どうしたんだい? 分からなかったかな?」
「あ……あのぅ…」
これはもう、素直に言うしかないわ。またターメルのあほから冷やかされるけど、しゃあーないもの。
分からんモンは、分からへん……。
「あ、あの。実は先生……その……さ……最後の問題だけ、ちょっと分からなくてですね。あはは!
ごめんなさい……」
取り敢えず、そう言うことにしとこ『実は宿題ほとんど全滅でした』なんて言うたら、それこそターメルのあほが喜んで冷やかしばかにしてくるの、今から想像出来るもんなぁー。
そやけどどの道……恥ずかしいし、情けないわ……ホンマに。
「あ、そうでしたか。別になにも謝ることはないよ。確かに最後の問題だけは難しかったからね」
……ホッ。
(ちぇっ……コウのやつ叱られんと許されよって、つまらんなぁ~。
最後の問題だけって……じゃあ、他の問題は出来てたんかあ? ちょっとホントか、覗いてみよ…………ん?)
「──な、なんやんコレッ!? コウの奴、宿題、たったの三問しか出来てへんやんかぁあー。
しかも当たっとるのは一問だけや♪ どんだけのあほやねん!」
──えっ?!
ターメルのあほが、自分のVRモニター覗き込んでそんなことを言うてる。しかもみんなのモニターに、そのデータを即座に飛ばしよった。
なんつぅー奴や!
その瞬間、みんなの笑い声が一斉にドッと吹き出す。
「ひっどいなぁーコリャー!」
「アホだとは思っていたけど、まさかここまでヒドイなんてな」
「しかも最後の問題だけ分からんとか。コウの奴、大嘘ついとるやないか!」
──うあ★ そ、ソコやばい! ウソばれた!
「あ、そう言えば……さっき先生に、『最後の問題だけ』とかコウ言ってたよな?」
う……ぅう。穴があったら入りたい……。
「あほの上に大嘘つきと来たか。
全く、最悪の『あほつき』や♪ こりゃあ~留年確実やで!」
──りゅ……留年ん!!??
「最悪、学業怠慢で退学や♪」
──た……退学ぅ~~!?
も……もうダメや。終わりや……み、みんな笑うてる………あほな上、大ウソつきって思われた……もう、アカン……。
「ちょっ! 天川くん!!」
全力で教室を出て、誰も来ん体育館裏の倉庫の暗いトコに体育座りで身を潜めた。
もう終わりや……。自分の将来、真っ暗や……。涙が出てとまらへん……自分、もう最悪や!
◇ ◇ ◇
放課後。教室に誰も居ない事を、コッソリ……と確かめて。自分のカバンを取り帰る事にした。
誰にも合わない様、隠れながら……気分はもぅまるでドロボウ猫や。




