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『クレイドル』 ―少年コウの物語―  作者: みゃも
【第四話】 雪とゴージャスランド
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雪とゴージャスランド ―3―


 ゴージャスランドの乗り物ときたら「殺す気かぁあー!」て思わず叫びたくなるジェットコースターや。やたらリアルなお化け屋敷。ホーキンのおっちゃん、本気でびびっとったわ♪ 悪いとは思ったけど、思わずそれをみて指さし笑ってしまった。

 ついついはしゃぎ回り、美味しいものもたくさん食べた。

 それから夕方にはファンタジーな演出のアトラクションに、感動的な花火。今日はもう、夢の様なひとときで、忘れられん思い出の一日となった。


  ◇ ◇ ◇


 お礼もなにも言わないまま、気がついたら次の日の朝を布団の中で迎えていた。

 帰りの電車に乗るのまでは、なんやよぅ覚えてるような気がするのやけど……。アカン、寝落ちや。なんや最後、ホーキンのおっちゃんに悪いことしたかなぁ~?

 それにしても、なんやうちの勘兄ときたら、今日は朝から不機嫌そうやなぁ~?


「なんやのアイツ。うちへ勝手に上がって来るなり、コウを寝かし付けたと思うたら。このワシに、説教なんか垂れよってからに! 家内の事に口出す、世間知らずのアホウめが……。全く迷惑な話じゃ!」

 ホーキンのおっちゃん。うちの勘兄に説教してくれたんか。

 ありがたいなぁー。いい気味や♪ あはは♪♪

「コウ! アイツとはもう、二度と付き合うなよ。ろくな大人にならへんからな。ワシには分かるねん」

 なに言うてるのや。少なくとも勘兄(かんにぃ)よりはまっとうな大人やないの。


「それは困る」

「こ……困るて、なにがや?」

「あん人は自分にしたら、特別な上得意さんなんよ(色々な意味でな) そやから困る。それだけは、お断りや!」

「じょ……上得意て☆

この兄の……弟を心配するに余りあるこの優しさが、分からんのか? お前には!」

「よう言うわ。単に、自分が説教されたのが気に入らんで、ボヤいてるだけにしか見えへんし聞こえへん」

「ば、バカ言うな☆ 

大体アイツは、あることないこと適当なこと言いおってからに。デタラメな奴やど」

 あることないこと?

 おっかしぃなぁ~。ホーキンのおっちゃんは、そないにテキトーな人やない筈や。


「あることないことって、勘兄、具体的になに言われたの?」

「な、なにって……。

ワシが働かんと、コウにばかり働かせるとるだの……」

「あ、それは当たりや!」

 しかもド真ん中射抜いとる♪ お見事や♪ なんや笑える♪♪


「──ぬあっ、なんやと?! そんな訳あるかい。ワシだってちゃんと……」

「ちゃんと、なに?」

 白々しいけど、わざと聞いとこ♪ 

「いや……ちゃんと、アレや」

「だから、アレ、てなんやぁ?」

「さ………魚、仰山(ぎょうさん)こないだ釣って来たったやろ?」

「うん……そやったなぁ」

 確かに大漁で、家計的にはちょびっとだけ助かったわ。


「それだけか?」

「そ……それだけや。十分やろ? なんや文句あンの?」 

「……。もうええわ」

 なんや時間、メッチャ損した気分やなぁ~。生計ボキャブラ無さ過ぎやろう。


 勘兄(かんにぃ)ときたら、ちょっと自分が言葉に詰まって困った時とかの対処方として、いっつも、『強気に出たら相手が黙る』て思うてるのやからな。ホンマのあほうやわ。まともに相手しとれへん。

 まぁええ、さっさと学校行く準備しよ。遅刻する。

「コウ……。お兄さん、なんや不安になるやろう。なんでそこで気の利いた言葉の一つくらい出ないのや? そこでフォローするのが、人情ってもんやないんかい?

コウお前、そういうトコがダメやなぁー。人間力、ちゅう~もんがまるで未熟な証拠やど」


 ──に、人間力ぅー?!


 一瞬、ドキリとする言葉やったけど。あ、あかん……よくよく考えたら、相変わらずの自己中トークやった。危なかったわぁー!!

 まともに相手しとったら、一人アホみるだけや。


「今、勘兄と自分の二人しかココには居ないのに、フォローなんかしてどないなるんやぁ?

誰もおらんし聞いちゃおらんのやから、別に必要はないやろぅ? 今更そんなモン、必要な仲かぁ?」

「お、お前……。いつからそんな、ややこしい理屈ごねる冷たい奴になったのや。

ええからそこは、素直に『お兄さんが居てくれるだけで、ボクは幸せです♪』て言うてくれたら、それでええんじゃい!」

 うへェ……そらとても有り得へん台詞やんかぁ。

「そうやな。そう言われるよう、精々努力しときぃやぁ~……」

「ちょ、ちょっと待て、コウ。それどういう意味や?!」

「……」

 こんなトコで正直なこと言うたら、勘兄(かんにぃ)ジャイアンやから、何されるか分からん。知らんぷりしくが吉や。

「さあ~、どういう意味やろかなぁ~……?

それよりも自分、これから学校やから行ってくるわ。

あ、勘兄は魚でも釣っといて♪ 今晩のおかずに、また出したるよ♪ 嬉しいやろぅ?♪」

 その分、晩飯代浮くから助かるしな♪


 言うと勘兄は、当然とばかりにスッ──と手を出してきよった。

「……なんやの? その手」

「エサ代くれ」

「……」


 ──ピシッ☆


「土掘って、ミミズをエサ代わりにしたらええやろ? 

ほんなら行ってくるわぁあ~~♪」

「く……クッソォ~~! なんちゅーセコい弟やあ──! そのクセ、釣った魚は『喰わせろ!』言う、自分勝手なやっちゃ!」

 なに言うてるのや。誰のせいで、家が貧乏やと思ってんねん☆ 全く、つくづく不幸な家庭環境や。


 はぁ~……雪なんかええから、ドラえもん降って来へんかなぁ~。 

 そう思い見上げる今朝の空からは、静かに雪が降り続いとった。つくづく散々やな……。





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