雪とゴージャスランド ―2―
「そいじゃお好み焼き、ご馳走さん。これ酒代な。また来るわ♪」
「毎度おおきにぃー♪」
前のお客はんが立ち去ったあと、ホーキンのおっちゃんが急にボソリと呟いた。
「やっと行ったか……」
やっと、て……なんや。
「ホーキンのおっちゃん。そういうんは、本人の前では勘弁したってやぁ。正当な理由もないもめごとは、自分、迷惑やねん」
「ああ、ハハ。分かってるよ。すまなかった」
「分かってるんならええんや」
「それよりも、コウ君……今度の水曜、定休日とかの予定なんかは……?」
「……なんで? そんな予定はないよ。うちは年中無休がモットーや。生活あるしな。公職でのうのうと暮らしてるホーキンのおっちゃんとは、経済環境が違うもん」
「ハハ……これはまた、きっついジャブだなぁー……」
そう言うとおっちゃん。悩み顔でまた「ンー……」てまた唸っとる。
「その日だけ、特別に休みとかには出来ないの?」
ハ? 休み? なんや急に??
「休まへんよ。理由ないもん。もったいないだけや」
「理由かぁ~……」
なんや更に悩んどるなぁ。なんかあるんやろうか……?
あ、待てよ! そういえばおっちゃん、連合公務員やったな。……ん?
「──あ! もしかしてアレかー!?
また、仰山の連合公務員のおっちゃんらが来るんやろう??」
「──☆
さ……さあ~? それはどうだったかなぁあ~~……ハ、ハハハ!」
当たりや☆ 間違いない。表情見たら分かる! めちゃ、バレバレや!
なんや知らんけど、『大人の都合』って奴でハッキリした事は言えんのやろう。なんにしても助かったわ!
「ありがとうな、おっちゃん! このイカとお好み焼き、おごりにしといたるわ♪」
これくらいは当然やな。情報は宝やもん。これはいわゆるギブアンドテイクいう奴やしなー♪
「だから、それはちゃんと代金払います。後で問題になっちゃうんだよ」
「……」
なんや、堅いやっちゃなあぁ~。そういうのが目的やないんかぁ?
「だったら、どぅお礼したらええの? 自分、悩むやないの」
「お礼もなにも、ワタシはなにも感謝されることなんかしていませんよ」
「白々しいこと言わんといてよ。返って困るやないの」
受けた恩を返さんなんて、人でなしもいいとこや。
「困る……ですか。 ──あ、だったら!」
「……。それで、なんでテーマパークぅー??」
行きたいトコがあるて言うから、日曜日の朝から電車に乗って来たら【ゴージャスランド】やった。
「だって前に一度、『行ってみたい』とか言ってなかった?」
「それはそうやけど……。今日は、自分からおっちゃんへのお礼なんよ? それやとまるで、あべこべやろぅ。
まぁ来てしまったことやし、もぅええけど……」
ええけどココ、高っいんやろうなぁ~? 金、足りるやろうかぁ……。思わず財布の中身見て、心配になってしまうわ。
「あ、心配しなくても良いよ。お代は全部、ワタシが払うし」
――ハ?
「ちょっ、ちょっ! ちょ──っ!☆ それやとホンマに意味がない! 今日は自分がおっちゃんにやなあ──!」
「大丈夫。ワタシも前からココには一度、来てみたかったんだ。
だけど大人一人だけだと、なかなか恥ずかしくてね。だからさ、コウ君に今日一日だけ付き合って貰えると凄く助かるんだよ。コウ君を利用するみたいで悪いけど、いいかな?」
「……それ、ホンマかぁ? 気ぃ使ってのコトやないやろうね? そういうのなら自分、嫌やど!」
「そんなことはないさ。本当だよ」
「……」
なんや分からんけど、それならええわ。折角やし、精々楽しんだろ♪