【第四話】 雪とゴージャスランド
「あ……雪か」
教室の窓から外見たら、雪がしんしんと降りよる。どおりでここんトコ寒かった筈や。
「積もるやろうかぁ? いくら鉄板焼き言うても、お客はん寒いやろうしなぁ……。なんとかせんといかんかなぁー?」
それにしても……学校居て、勉強のこと友達との会話……やなくて、仕事のことばかり考えてる小学生なんて、世の中広しといえど、自分くらいのモンやろなぁ~。
『それどうすんの?』
「壁や。防寒用のな♪」
『なんで?』
「タマは寒いとか、暑いとか感じんから分からへんやろうけど。人は外の温度次第で、色々と工夫せなぁアカンよう出来とるんよ。うちは屋台で建屋内やないやろぅ? そやから、少しでも寒くない様にと思うてな。
分かるかぁ?」
『ハ~。なんや人間て、面倒なモンやの』
「面倒なモンよ。色々と知らんかったやろ?」
『勉強なるわ』
タマに手伝って貰って、横とお店のお客さん側に壁は出来たはええのやけど。屋根がないのに気がついた。
「自分の設計ミスや……。一番肝心な部分、忘れとったわ」
『どうするん?』
「どうするて……。これなんとかせんと、二十二時頃にはお客はん並んで、雪だるまやろなぁ。
自分も含めて三つや。三つ。
雪だるま、三つも並んどったら。なんや福があるような気もするけど……。
まぁ風邪はひきそうやな」
『カゼ……。それ、福かぁ?』
「んな訳ない……。
──あ、そや! うちにブルーシートがあったな! それ、被せてみよ」
どうにかこうにかして、格好は出来た。これで防寒対策は完璧な筈や♪
『で、どこから入ったらええん?』
「……あ」
今度は入口作るのを忘れとったわ。
散々オールスターズやなぁ~、今日は。
結局、横の壁にしとる板に穴開けて、そこから出入り出来るようにした。
流石にそこは、大人の人の手を借りた。工具類とか持ってないし。自分やとちょっと、無理やし。危な過ぎるからな。
ギ~リ ギ~リと工作してもろうて、人一人十分通れるだけの扉や。よう出来とる♪ 流石やなぁー。
「あんがとな、おっちゃん♪ 今からお好み焼き、作ったるさかい。食べてってやぁー♪」
「ええのか? じゃあ遠慮なく頂いてくわ♪」
「当然や! もちろん自分のおごりよ。その代わり、またなんかあったら頼みます―♪」
「ああ、いつでも言ったってやぁあ~。コウちゃんの頼みやったら、いつでもやるよってなぁー!」
「おおきにな♪ 助かります」
それからジュージューと、お好み焼きのブタ玉特製卵付き作っておっちゃんにやると。作ったばかりの横の扉から、誰かが顔を覗かせてきた。
「あれ……? よかった。やはりココ、コウ君のお店だったか」
前に来た、連合公務員のホーキンのおっちゃんや。
「あ、数日ぶりぃ~。元気しとったんかぁ? おっちゃん」
「ああ、元気元気。
それにしてもコレ……作ったんだ? カベ」
「うん。色々と、このおっちゃんにも手伝ってもろうてな♪
外、寒いやろう? コレ無かったら風邪ひくし、お客はんも並んで仲良う雪だるまやろぅ?
それは流石に、たまらんからなぁー♪」
「ハハ。それもそうだ。あ……しかし……ン―……まあ~、いっか」
「……?」
なんやぁ? 散々悩んだ挙げ句、『ええ』とか言われても気になってしまうど。
「それよりも、入り口に看板もないから。コレじゃ、誰の店なのか分からないよ。ワタシも入る時、悩んじゃったし」
「あ、そうやった! 看板も書かなッ☆ ちょっと待っててやぁ──!」
ペンキ持って、『コウちゃんの鉄板焼き』と書いてきた。
きったない字やけど、まあええわ♪ 分かるやろ。
「ホーキンのおっちゃん。早速、なんか食べるかぁ? 丁度、このおっちゃんにブタ玉作ったったから、鉄板もよぅ温まってるでぇー」
「ああ、取り敢えずお好み焼き一つ下さい。それと、イカもね」
「あいよっ!」
自分が注文を受けて作り始めると、なんや二人して話し始めとる。
「あんちゃん。余り見ない顔だけど、ここの常連かい?」
「ええ。つい最近、なんですけどね」
「そうかい♪ ワシも常連やから、これから仲良ぅしたってなぁー♪」
「はいはい」
ホーキンのおっちゃん。なんや苦手そうな顔してるな?
まぁタイプが違うお人やから、しゃあーないのかなぁ。