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揺蕩うティアマト -星の戦火、地母神の見た夢-  作者: 桐沢清玄


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3/8

#01 月のウサギは忙しい

『社長、そっちに3機行ったぜ!』


「了解! アーシャ、回避運動任せる!」


「お任せを、ミカエラ」


 シールドも使い、実弾をやり過ごしながら、得意の接近戦に持ち込む。

 敵さん、相変わらず数は多い。

 本来は有人機であるはずの機体は無人化されていて、機械的な動きでこちらの命を奪いに来る。


「……はいよぉ! まずは1機ぃ!」


 すれ違い様にビームブレードで両断。

 相棒のアンドロイドはこっちが生身である事を忘れたのか、無茶な挙動でUターン。

 パイロットスーツが血流をコントロールしてくれてるから、問題無いけど。


 残りの2機を、背後からバルカンでさくっと処理。

 モニターに映る機影を確認すると、あらかた終わったらしい。

 無線で部下に呼び掛ける。


「こっちは終わり。死んだ間抜け野郎はいない?」


『エヴァン、損害無し』


『ピエトロ、損害無し』


『ボリス、損害無し』


『リンダ、ちょっとやられちゃいました……』


 ……はあ。まったく、あんたって奴は。

 でもこいつ、狙撃は上手いのよね。


「このグズ。で、まだやれる?」


『多分、大丈夫です! ……でも、ここはもう終わりましたよね?』


「うちら、民間警備会社よ? こういう時はどんどん名前を売らないと。ほら、次の場所!」


 稼ぎ時だとばかりに、私たち《ムーンラビット》は新たな現場を目指した。

 Human–AI Intermix Variable Entity──通称HIVE。


 5機の戦闘機械はデブリを避けながら、宇宙空間を駆ける。

 月と地球間の荷物護衛、要人警護が私たちの仕事だ。


 出撃前、隣の宙域が戦力的に気掛かりだった。

 駆け付けてみたら案の定、苦戦中。


「はぁい、おじさんたち! 助けてあげよっか?」


『ちっ! 銭ゲバ女が来やがった!』


『何でもいい、援護頼むぜ!』


「はい了解。愛のこもったラブレター(請求書)、後で送るから!」


 機体の左腕で社員に合図を送り、陣形を組んだ。

 素早く敵を確認すると、残りは15機ほど。

 ……ありゃりゃ。確かに、年寄りの連中には荷が重いか。


「敵の動きに釣られないよう注意! しっかり固まって!」


 自慢じゃないけど、うちの社員はそこそこ優秀だ。

 実戦にも散々連れ回したし、シミュレーションルームで徹底的に鍛えたのもある。

 お互いをカバーしながら、素早く敵を減らす。


『《電脳化》もしてねえ癖に、なんでそんな強えんだよ……』


『アンドロイド持ちだからだろ。《自然派》の姉ちゃんはよ』


 年寄りのひがみは無視。

 ……つーかあんたら、手ぇ動かせ。


 順調に戦果を稼いでいると──警告音。

 モニターに新たな敵影が現れた。


『はあ!? またかよ!?』


『……多分、この宙域が穴だと思われたっすねー』


 エヴァンとピエトロは、愚痴りながらも応戦する。

 んー、ちょっと……キツいかも。


『隊長、いつもの“アレ”お願いしますぅ!』


『おっさん連中にも、時間を稼がせようぜ!』


 こういう状況は、今まで何度か切り抜けてきた。

 リンダとボリスも、声には明るさがまだある。


「……仕方無いか。その代わり、私のことしっかり守んなさいよ! ──システム再起動、サポートAIを《JEHUTY》から《TIAMAT》に切り替え!」


 コントロールパネルを素早く操作すると、私のHIVEは動きを止めた。

 すぐさまエヴァンたち4機が集まり、特別製の金属シールドで囲まれた。


『お、おいあんたら! トラブル発生か!?』


『そんな感じっす! しばらくの間、時間稼ぎ任せたっすー!』


 薄暗くなったコクピット。

 これをやると、いつも30秒くらいかかる。

 早くしろ。早く、早く……!!


「ミカエラ、貧乏揺すりをやめてください」


「うっさい。ずっと座りっぱなしだし、健康を意識してんのよ」


「なるほど、健康目的ですね。それなら問題ありません」


 コクピットに明かりが戻り、モニターが表示される。

 ムーンラビットは無事だけど、おっさん連中の数が3機減ってる。


 ……まあ、そういう仕事してるし、運が悪かったってことで。


「お待たせ! あんたらは密集陣形、適当に着いてきて!」


『『『『了解!!』』』』


 背部のスラスターを全力全開、一気に最前線へ。

 機体が軽くなったような錯覚。

 

 誰にでも、相性というものがある。

 今使っているのは、時代遅れのAIサポートシステム。

 理屈は分からないけど――何故か、私にはよく馴染んだ。


「こんの……ガラクタどもがあ! ポンコツAIに負けてんじゃないっつうの!」


 ランダムを通り越して、もはや無茶苦茶な挙動。

 その動きに対し、敵の無人機は対応出来なくなっていた。

 相棒のアーシャも細かく位置情報を報告しつつ、バルカンで応戦。

 後方の社員たちも、上手く損耗を抑えている。

 

 私の感覚を、《TIAMAT》は可能な限り尊重してくれる。

 数字と確率まみれの《JEHUTY》とは大違い。


 二丁のビームショットガンで散々暴れたおかげで、敵を素早く殲滅することが出来た。

 逃げた1機に舌打ち。ま、こんなもんでしょ。


『おいっ! このやろお! テメエらのせいでリーダーが死んだぞ!』


『そうだそうだ! 余計な真似しやがって!』


「あらそう。……ま、向いてなさそうだったしね。そんじゃ、うちら帰るから。救助費用よろしくぅ!」


 助けてやったのに、この言い草。

 私たち、はみ出し者同士なのに。


 仕事を終え、帰投する。

 眼下に見えるのは、生まれ故郷でもある月面都市『アルテミス』。


 地球、月、火星。

 人間の生活圏は広がったし、色々と便利になった。

 でも、何故か未だに争ってるんだよね。


 遠いご先祖さま、がっかりしてるかな?

 ……ま、これが人間ってやつでしょ。


 その調子で殺し合って、沢山稼がせてくださいな。

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