表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の秋桜  作者: 蒼野 壮太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/23

5.白い秋桜 または黄昏の怪異

 「白い秋桜(コスモス)は自生力が弱いのよ。だから、誰かが植えなければ一面に咲くということは考えにくいわね」

 母さんはそう言いながら、「やっぱり面白い話ね。この娘はどこからやってきたのでしょうね。どうして、初夏の農作業を行っていたにも関わらず、白い顔だったのでしょうね。日によって変わる態度とか、横顔だけしか記憶に残らないとか、家のあった場所に自生できない白い秋桜だけが残されたとかね。あえて白という色を選んだのは、花言葉を意識させたいのかな?」

「やっぱり、花の精だったんじゃないでしょうか?」

 へんげが言う。

「怪異譚としては、それが一番うれしいところね。ただし、語り手は片思いのようだから、娘の一面しか見ていないわけでしょう?」、「だから、断片的な知識や思い出、思い込みが混ぜ合わさって不思議な話になっているとか、もしかするともっと陰湿な、あるいは切迫した、それこそ町中で隠さなければならない秘密があったとか、そんなところかしら」

 母さんの話を聞いて怖くなった。へんげも同じらしく黙り込んでいる。

「こういった真相を暴いていくのは、民俗学ではないわね。花の精ということにしておきましょう」

 母さんはそう言うとへんげに笑いかけた。


 その日を境にして、へんげは勝手に我が家に来ては、母さんと話し込むようになった。どうやら、母さんが三重の伝承記録チームの顧問だかを務めることになったらしい。

 まあ、へんげの狙いが最初からそこにあることぐらいは分かっていたが。

 で、母さんは「祭り編」では序文を書くことになったらしい。

 放課後になると、僕は沢田とキャッチボールや釣りなどをして遊び、家に帰ってから、へんげを彼女の自宅まで送るという日々が続いた。

「河合ってさ。変わってるよね?」

「どのあたりが?」

「こうやって、女の子を送っていくことにあんまり抵抗がなさそうというか、恥ずかしくもなさそうというか、そういったところ」

「だって、まだ日が暮れるのも早いしさ。危ないじゃん。それに黄昏れてゆく時間ってなんか好きなんだよね。なにかに出会えそうじゃない?」

「ふぅん。そういうのって逢魔が時って言うんだっけ?」

「そうそう。いや、そうかな?素敵な何かと出会えそうって意味で言ったんだけど」

「出会いたいのは怪異とか魔物じゃないんだね」

「ところでさ、へんげの家の表札ってどうして『竹内』なの?」

「どうしてって、竹内だからだよ」

「ん?じゃあ、竹内さんの家に、へんげが居候してるってこと?」

 へんげは声を出して笑いながら、

「河合さぁ・・・、もしかして天然?」

「天然?なにそれ?」

「あのさぁ。私の名前をちゃんと言ってみてよ」

「へんげでしょ?下の名前は知らないけどさ」

「竹内です。竹内京子!『横顔の美女』の書き手として署名してあったでしょ?」

「え!じゃあ、へんげっていうのは?」

「あだ名に決まってるでしょ?今回の本の件で怪しげな話ばかりしてるって沢田にいじられてさ。で、妖怪変化のへんげ」

「え?」

「今どき、『子』の付く名前って珍しいでしょ?」

「いや、そんなことよりもさ」

「でも、河合のお母さんは、最近また『子』の付く名前が流行り始めてるんだって言ってたよ。命名習俗?民俗学ではそう言うらしいよ」

「いや、ごめん。沢田があまりに自然にへんげって呼んでたから、すっかり本当の名前なんだって思ってた」

「そんな苗字の人、日本にいるの?」

「いや、ここにいるんだって思ってた。どんな漢字なのかなって」

「まあ、いいけどね。河合からならへんげって呼ばれても許すよ。お母さんにもお世話になっているし、こうしていつも送ってくれてるしね」

「いまさら竹内さんって呼びづらいよ。へんげのままじゃだめかな?」

「さっき、いいって言ったよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ