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黄昏の秋桜  作者: 蒼野 壮太


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22/23

22.白い秋桜 または横顔の美女

 学校帰りに北側の坂を下る。北の川まで来た時、なんとなく景色が変わっているように感じた。あの人の家がなくなっている。走って近づいてみると、あの人の家の跡地はきれいに整地され、一面に白い花が咲いていた。

 あの人のコサージュと同じ白秋桜だった。早咲きの秋桜だ。誰かが植えなければ自生はしない花だ。あの人が植えたのだろうか。

 ふと、あの人の白い横顔を思い出した。正面の顔は思い出せないのに・・・。

 なんだろう。来なければよかった。

 この出来事は、初恋が終わった後のエピローグにすらならない。

 白秋桜を見ているうちに、小学校の頃にへんげから渡された『三重の伝承 怪異編』を思い出した。

 あれ?そっくりな話があったではないか!

 そうだ。へんげが聞き取ったという『横顔の美女』だ。

 あの伝承は現実に基づいている?

 そうだとしたら、話の出どころは?

 そして、今、目の前に広がっている光景との関連は?

 スマートフォンを出して、アドレス帳からへんげの電話番号を選ぶ。へんげの電話番号はすぐに見つけられた。

 少し、緊張する。

 だが、へんげに電話する良い口実かもしれないなとも思う。へんげなら、黄昏の怪異に取り憑かれた僕を、現実に戻してくれる力があるように思う。

 いや、それは自分勝手で都合の良い理屈だ。本当は、いつも、見守ってくれているへんげの優しさに甘えたいだけかもしれない。

 いやいや、今はどっちでもいい。少しだけ確かめたいことがある。


「竹内、聞いていい?」

「聞き方が、ちょっと気持ち悪いからダメかな。河合に竹内って呼ばれるのって初めてだからさ」

 へんげが、前と変わらない調子で話そうとしてくれることが嬉しい。

「じゃあ、へんげ。聞いていい?」

「いいよ」

「『三重の伝承 怪異編』の中の「横顔の美女」って、へんげが聞き取った話だって言ってたよね?」

「そうだよ。でも本人からじゃないんだよ。かなりのおじいちゃんだったけど、その人のお父さんの体験だってさ」

「どのあたりに住んでる人?」

「私の家と北の川の間くらいかな。どうしてそんなことを聞くの?」

「その人の名前は?」

「個人情報保護法に抵触しない?まあ、河合だけだからいいか。松田さん、だったよ。下の名前も知りたければ、取材した時のノートを見れば分かるよ。ちょっと待っててくれる?」

「いや、大丈夫」

「どうしたの?なんだか声が怖いよ」

「松田って母さんの実家なんだよ。あの話は曾祖父の話だったんだね」

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