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黄昏の秋桜  作者: 蒼野 壮太


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11.初恋 またはストーカー

「どう思う?」

「まあ、竹内には悪いが、それがお前の言う初恋ってやつなんだろうな。しかしストーカー予備軍でもある」

「君はひどいことを言うね」

 僕は沢田に、あの人を初めて見かけた日から今までの自分の行動を包み隠さず報告した。

「河合さ。そこまで苦しいんだったら、いっそ告白したらどうだ?」

「それこそおかしく思われない?面識のない下級生から突然告白なんてさ。成功率も限りなくゼロじゃん?」

「河合、恐るべし!お前って気持ちを伝えるだけじゃもの足りず、成功まで求めてんの?」

「そりゃ、そうさ。それが普通じゃない?」

「いや、すまん。まあ、それもそうだな。しかし、そもそも相手の名前も知らないんじゃな」

「何か、接点が生まれると嬉しいんだけどね」

「河合、いいことを思いついた。尾行してみないか?家が分かれば表札ぐらいは出てるだろ?これで名前はわかるぜ」

「それこそ、ストーカーじゃん」

「俺も付き合うよ。面白そうだし」

「いやいや、沢田。そこは面白がるところじゃないでしょ?」

「まあまあ、そもそもお前の言う初恋がどんなものなのか知りたい気持ちもある。そして家が分かれば、常にお前がその近辺をうろついていればいい。そのうちばったり出会うなんてこともある。そして接点ができる。そうすれば告白までたどり着けるかも。どうだ?」

「どうだ?って、回りくどくない?」

「じゃあ、代案を出せ。お前のことなんだぜ」

「そうだね。僕のことだった。そういうアプローチもありのような気もしてきた・・・かな。何もしないよりはマシかもね」

「だろ?」


「ちょっと、近づきすぎだよ」

「大丈夫だって。あんまり遠いと見失っちゃうだろ?」

「見失ったら、また明日があるじゃん」

「河合さあ。俺が明日もこんなストーカー行為に付き合うと思ってんの?」

「ごめん。あ、ほら。あの人って髪の毛全体が揺れるでしょ」

「毛量が多いんじゃないのか?きれいな髪の毛だとは思うけどさ」

「沢田はまだ、あの人の顔を見たことがないから、そんな感想しか出てこないんだよ」

「顔を見たら髪の感想が変わるもんなのか?お、あそこの角を曲がったぞ。北の川の方向なんだな」

「これで、塾に行ったりしたらがっかりだね」

「なんか、楽しんでるな」

「それはあの人に少しでも近づけている気がするから。もう一つ、沢田が応援してくれているから、というのもあるね」

「最近のお前を見ていられないというのが大きい」

「橋を渡るんだね。川向うなんだ」

 そうして、あの人は北の川の橋を渡って、川沿いの道に面した1件の家へ入って行った。

「河合、なにか感想は?」

「意外と普通の家に住んでるんだなって思った」

「どんな家を想像してたんだよ。表札を見てみようぜ」

「いや、ちょっと。これ以上近づく勇気が出ない。窓から見られてたりとか、急に玄関から出てきたりとか、あるかもよ。もうドキドキじゃないか」

「お前、それじゃあ目的が果たせないままじゃん」

「今日は家が分かっただけでも・・・」

「河合。俺は誰かを好きだと思ったことがない。だからお前のドキドキはよくわからない。しかし、お前ってもうちょっとやるときはやるやつだと思ってたけどな」

「ごめん。こんな感じは初めてだから僕にもよくわからないんだよ」

 そう答えたときには、沢田はすでに歩き出していて、そのままあの人の家の前まで行って、表札を確かめていた。

「三本川に野原の野で『川野』だったよ」

「川野さんかぁ。下の名前はなんだろう?」

「それは、自分で調べてくれ」


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