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誰ぞの花  作者: 宮内
3/12

子供達の邂逅

 結華が新たな生に呆然としてる最中、二人の子供が森の中を彷徨っていた。

薄汚れてはいるが、どちらも平民では到底手にすることの無い上質な服を身に纏っている。


「ルムカ様、もう無理です……僕はお捨てください」

「それで捨てたらお前は恨むだろうが」

「そんなこと……いや、そうですね、恨みます多分」

「はぁ、運が良いことにこの森は多分静寂期だ。希望はまだある」


 ルムカは後ろで項垂れる従者ミストルを呆れつつ励ます。

よく弱音を口にする幼馴染だが、実は強かな男であることをルムカはよく知っていた。

知ってはいたが、実のところ自身も弱音を吐きたくなる程度にはルムカも疲弊していた。

日々鍛錬を積んでいるため、そこらの子供よりは体力はある二人だが、安全の確保できない森の中を不安と共に一晩中歩き回っていれば当然疲れる。

しかも二人の放り込まれたこの森は禁足地であった。

“この森には足を踏み入れてはならない”という事以外一切情報がない。


「ミストル、何度も聞いてすまないがこうなる直前の記憶はどこまでだ」

「んん~やっぱりダンス直後までです」

「そうか……」


 二人はルムカの腹違いの兄であるロランの婚約パーティーに参加していた。

夫人同士が大変仲が悪いため茶会やパーティーはルムカ側が欠席することが多いが、さすがに一族長子の婚約お披露目となると話は別だ。

両者の母同様、ルムカとロランの仲も良いとは言えず、気は進まないながらも参加したパーティーだった。

エスパル家は王族の血脈から最も近しい公爵家だ。

王族エフリム家も参列した盛大な婚約パーティーであり、警備もいつも以上に厳重であったにもかかわらず、二人は何故かダンス直後の記憶がなく気付いたらこの森にいた。

持ち物は護身用のナイフのみだったが、二人は幸運なことに魔法の才に恵まれていたため、魔獣や獣が跋扈する見知らぬ森でも何とか凌ぐことができていた。


「とりあえあず身の落ち着ける場所を探すぞ」

「あるんですかそんな場所?ルムカ様知ってます?ここ禁足地ですよ?」

「一々突っかかるなめんどくさい。何も情報がないんだ。可能性はゼロじゃないだろ」

「はぁ何でそんな前向きに生きてけるんだろ」

「お前が後ろ向きなだけだろ」


 小言の応酬ができる今の内に何とかしなければとルムカは急いていた。

ミストルの言う事は最もだ。何もない場所が禁足地にされるわけがない。

実際、森の中は一切の方角が分からず魔獣の気配もある。

今のところ二人でも倒すことのできるレベルの魔獣や獣の襲撃で済んでいるが、それも疲弊していけばままならなくなる。

好転の兆しのないまま、足を動かすしかない二人の元に何かが物凄い速さで近付いてきていた。

その気配にルムカがいち早く気付いたが、迎え撃つには遅すぎた。


「ミストル!逃げろ!」

「うわぁ!?」


 咄嗟にミストルを力一杯押し衝撃に備えたが、予想外の静寂にルムカはいつの間にか瞑っていた目を開けた。

二人に迫ってきていた何かは、見たことの無い生き物だった。

白銀の神々しい巨大な狼と、その背に乗る人外離れした美しさを持つ子供。


「え?子供だ」


 今の状況にそぐわぬ間の抜けた声だった。

しかしそのお陰で、ルムカとミストルは恐らく喰われることはないのだろうと肩の力を抜いた。

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