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誰ぞの花  作者: 宮内
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かつての

「シュバタフさん……!」

「ほほ、やはりこうなりましたか」


 待ち人がいると言ったエメルダに案内された部屋にはシュバタフがいた。驚きと嬉しさと感情露わな声を上げるユイカに対し、シュバタフは驚くこともなく微笑んでいる。


「イザオラ久しぶりだね。元気にしていたかい?」

「あぁ、お陰様でね。ダンジョンの魔獣狩りで支給されてるポーション、本当に助かってるよ」

「それは良かった」


 イザオラもシェオと同様、シュバタフとはかなり気安い仲であるようだ。雑談が続きそうな空気感だが、シェオが本題に入れとばかりにソファに腰かけた。イザオラに促され隣へユイカが座ると、シェオは手のひらに魔力の球を形成し握り潰した。砕けた光が散った途端、一切の雑音が消えた。イザオラは関心と呆れの入り混じった目でシェオを見ている。ユイカは隣でシェオの手のひらを凝視していた。


「今のは遮断の魔法ですよね?こんな使い方もあるんだ」

「駄目よ~ユイカ。シェオの魔法の使い方なんてこれっぽっちも役に立たないから」

「いつ見ても独創的ですね。詠唱の短縮どころか魔法式すら改式していらっしゃるのですから」

「かい、しき?そんなことできるんだ……まほうすごい……」

「……お前急ぎだったんじゃねぇのか」


 ほめそやされ居心地悪そうにシェオはユイカに話を振る。理解しようと必死に頭を回していたユイカはそうだったと我に返った。しかしどう説明したものかと言葉に詰まるユイカを見てシュバタフが切り出した。


「ユイカさん大丈夫ですよ。ここにいる者は皆、口が堅いですから」

「へっ、あ、ありがとうございます。でも、何で……」


 あまりにも都合良く物事が進んで行く状況にユイカは安心よりも不安が勝りつつあった。そんなユイカの心情までもシュバタフは見越しているようだった。


「何故に私がユイカさんに良くするのか、ですよね。その疑問はごもっともでしょう。簡潔に言えばユイカさんの縁者とでも言いましょうか、私の恩人なんですよ。今お召のそのローブ、かつて縁者様もお召しになっておられました」

「私の縁者……?」

「ユイカさん、どうやらあなたは試練の最中にあるようです。私はおそらくあなたの正体を知っている。ですがユイカさんの前でだけはその言葉が出てこない。封じられているのです」


 この世界での自身が何者かはっきりわかっていないというのに、何故かシュバタフは知っていると言う。いよいよ疑問が深まる展開にユイカは早くも頭が回らなくなってきていた。ユイカとシュバタフの話を聞いていた3人は、当然のことながら話の内容が何1つ理解できないでいた。しかしユイカに関わるにはそれなりの覚悟がいるかもしれないということだけは感じ取れる内容であった。そうであるならばと声を上げたのはイザオラだった。


「ねぇシュバタフさん、ユイカに関わるには私は役不足?面白そうだからついて来た口だけど、投げ出す気はないの」

「そんなことありませんよイザオラ。あなたはの経験値は確実に中級冒険者以上ではありませんか。今は1人でも多く味方がいるに越したことはないでしょう」

「それなら引き続きついて行く。ユイカもいい?」

「はい!とてもありがたいです!」


 シェオは頼りにはなるが、普段から只ならぬ圧があるし強面なのもあって安らぎとは程遠い存在だ。そこにイザオラという明るい同性がいるのは、ユイカにとって大変に有難いことだ。女同士で友情が芽生えた傍ら、シェオはシュバタフを軽く睨んだ。


「おい、あのバカみてぇな依頼料」

「えぇ、ユイカさんの護衛にはシェオ殿が適任かと思いましてね」


 合点がいったと空を仰ぐシェオにシュバタフはそう付け加えた。各々の反応を静かに観察していたエメルダは確信してはいたが、シュバタフに確認のために問う。


「私もこの場にいるということは、このギルドも無関係ではいられないということでしょうか」

「さすがエメルダさん、話が早い。ハイデルグの虚の洞穴(ダンジョン)、精霊の減少、魔獣の凶暴化、おかしなことが多いと思いませんか」

「成程……その問題と繋がるのですか」


 シュバタフが上げたいくつかの言葉で、エメルダは何かを導き出したようだった。シェオとイザオラもエメルダほどの確信はないにしても、明らかに顔付きが変わった。それを見ていたユイカはやはり自身がこれから首を突っ込もうとしていることはかなりの面倒事であるという残念な確信を得た。それをわかった上で言い出すのはどうしても気が引けるが、ユイカは言葉を探りながら切り出した。


「その、王都に助けを求めてる知り合いがいてですね、ご助力いただけないかと」

「王都ですか……ここまで来ると何かしら繋がっているのでしょうね」


 何か引っかかることでもあるのか、王都と聞いたシュバタフは半ば独り言のようにぼやいた。しょんもりするユイカにシュバタフはソファから立ち上がり声をかける。


「ユイカさん、私の都合ではありますが、叶わなかった恩返しをさせてください。王都には伝手がありますのでご案内します」

「ありがとうございます……!」

「エメルダさんはギルド長が戻り次第、何か異変があれば私に連絡をしてほしいと言伝をお願いできますか」

「承りました」


 何故王都へ急ぐのかという肝心の理由は説明できていないものの、それでも皆付き添ってくれることにユイカは感謝しかなかった。シュバタフに続き全員が動き出そうとしたところで、何かを感じ取ったユイカはふと窓を見て固まった。


「おい、何固まってんだ」


 遮断の魔法を解こうとしたシェオだったが、完全に動きを止めたユイカを不審に思い視線を辿る。シェオの呼びかけに反応した3人もどうしたのかと振り返った。


「お話は終わった?行くわよ。なるべく早くよ。もう待つのは無理だわ。さぁ下々の者、主を案内するのよ」


 ユイカはつい先刻、宿屋で同じ光景を見ていた。いつからいたのか、窓辺にはシャエディアが待機していた。変わらぬその眩さに意識が遠のきそうになりながら、ユイカは恐る恐る後ろを振り返った。シャエディアの言う、下々の者は驚愕の表情で固まっていた。シャエディアという存在をいまいち掴めていないながらも、ユイカはやはりそうだよなと1人変に納得していた。

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