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【命廻龍】レーヴェン〜その龍、守護神にして死神なり〜  作者: 蛇ノ目
第一章 其は遍く生命を統べる龍である
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第十四話 力の使い方ー弐ー

 龍脈の支配者たるバハムートの身体は巨大だ。

 蛇の様な身体を持つ彼の胴は恐ろしい程太く、またその身体も果てしなく長い。

 そんなバハムートの身体が大地の様に広がる、龍脈の中央。レーヴェンはバハムートの上で、改めて自身の権能について鑑みていた。

 治癒の権能ではない。あくまでも生命力に基く力の活性化。だが、それ以上の解釈が頭に浮かばないのもまた事実で……


『……そもそも、生命って…なんなんだ?』


 生命の起源……それを考えたら、あまりにも果てしない。

 母なる海から始まり、陸に進出していった数多の生命体は、今の様な形に落ち着き、そして種によっては未だに進化し続けているものもある。

 やはり、それを考えたらあまりにも壮大で、頭がこんがらがる。

 そこでレーヴェンは別の視点で考えてみる事にした。


『僕自身を振り返って考えてみよう。二回、死んでるんだから』


 この世界でも稀有な、死の経験者。それも二度、レーヴェンは命を落とした記憶を有している。


『僕は…元は人間だった。登山中に崖崩れに巻き込まれて落ちて……たしか、頭から落ちて即死したんだ。……一瞬だけすごい痛かった気がするけど』

『そして、気付いたら龍族のレーヴェンに生まれ変わっていたんだったよな』


 思い返すと、随分と不思議な体験をしている。

 何故、人間から龍になっていたのだろうか。そもそも、転生という概念が実在している事にも、レーヴェンは今更ながら驚いている。


『……そういえば』


 ふと、レーヴェンは気付く。自分自身が経験していながら、理屈や原理が理解出来ていないそれに。


『転生って……何がきっかけで起こるんだ…?』


 転生───それは死んだ後に新たな肉体を得て生まれ変わる現象。

 しかしその原理。発生する要因。レーヴェンはそれを一切知らない。何より……


『どうして僕は記憶を持ち続けられるんだ? バハムートさんの話じゃ、肉体が死んだ後の魂は記憶と自我を失って、また新しい肉体に宿るんだよな…? いや僕は権能でそうならないんだろうけど……』


 そうであったとしても、何故前世はそうならなかった? そもそも何故死した後、この世界に魂が流れ着いたのだろうか。何故、自分にこんな権能(ちから)が宿ったのだろうか。


『……駄目だ。本題から逸れちゃ意味無い』


 レーヴェンはそこで思考を切り上げる。

 これ以上こんな事を考えていたら、権能の詳細を解き明かすのが遅れてしまう。

 一刻も早く自分の力を知り、生まれ育った森を人間達の手から取り戻さねばならない。


『生命…生命…………生命は…生きる事と、死ぬ事。肉体が死んだ魂は、全てを失って…また新たな肉体に宿って生まれ変わる…………』


 即ちそれは、命の循環。生命という概念にとって必要不可欠なもの。この世界を廻す、絶対なる機構の一端。


『…………まさか』


 レーヴェンは気付く。

 【生命の権能】の本質、その一端に。


『“生”と“死”……そしてそれに最も近い存在…それが魂。多分、魂への干渉こそが……この権能の本質』


 レーヴェンは思う。

 “生命”とは、常に二つの側面を有している。“生きる”事と“死ぬ”事。これは切っても切り離せず、あらゆる生物の傍らに居座っている。

 故に思う、この権能は生かす方向だけではなく、殺す(・・)方向に出力出来るのではないのだろうか。

 それを裏付けるのが、レーヴェンが辿り着いた権能の本質……それは魂への干渉。

 勿論推測の域は出ないが、この権能は魂を介して肉体に影響をもたらしているのではないだろうか。

 肉体と共に傷付いた魂を癒すと、肉体が元通りに修復されるのだとしたら?

 相手の魂に干渉して、魂と肉体を引き剥がせるのだとしたら?


『……後半二つは推測に過ぎないけど、やってみないと分からないか。……まずは実験だな』


 そう呟いたレーヴェンは、権能の力が宿った手を見る。

 もし、この力が魂を通して身体に変化をもたらすものであるとしたら、魂のみ(・・・)のレーヴェンには、どの様な効果があるのだろうか。


『僕の推測通りなら…………』


 レーヴェンは己の身体に権能がこもった手で触れる。

 その瞬間───






『……ッ!? なんじゃ、今の爆発的な権能の気配は…!?』


 レーヴェンから離れた位置に己の頭があるバハムートは、遥か遠くから感じ取った巨大な権能の力に驚きを顕にする。

 すかさず龍脈を通してその力が発生した地点を視る。


『あれは…………』


 そこには───身長二メートル程の、全身に白い体毛が覆い、四肢に黒鱗を纏う、龍の頭と背に翼、腰部から尾を生やしている人族が気を失っていた。


 その特徴に、バハムートは心当たりがあった。


 寧ろ、心当たりがあり過ぎて理解が追い付かなかった。


『まさか……レーヴェン、か…?』


 その龍人は、自らの甥に当たる白龍、レーヴェンと有り得ない程に酷似していた。

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