episode6 -接敵!-
初めまして「あるき」と申します。
初投稿になります。
小説書くのは初めてですが、夢に見た物語が面白そうだったので書いてみました。
誤字脱字どころか日本語がおかしいところあると思いますが、ご容赦ください。
深夜──。
現場となる屋敷は、郊外の森にほど近い、古びた和洋折衷の建築だった。
戦後の建築家が趣味で建てたというその家は、外観だけでも十分に不気味だった。
壁には蔦が絡み、玄関扉は年季の入った洋風の木製ドア。だが、障子のような窓や瓦屋根が混ざっていて、どこかちぐはぐだ。
「ここが現場、“鏡屋敷”」
仮面をつけた優里先輩が、懐中電灯を手にしながら言う。
その声は明るかったが、空気は重い。
「──ここ、空気が違う。」
茜が低くつぶやいた。
健一は、悪切包丁を軽く握り直す。
目を細めると、空間の歪み──妖異特有の“ゆらぎ”が、微かに見えた。
「“見える”?健一くん」
優里先輩が小声でたずねる。
「……ああ。何か、いる。奥、─何かが、覗いてる」
“目”が反応していた。
その視線の先、玄関から伸びる廊下の奥には、きらりと光るものがあった。
「最初は様子見で。突入は最小限。健一くんは一歩引いて、観察に集中して」
優里先輩が軽やかに印を結び、札を天井に投げる。
ふわりと浮いた札は、うっすらとした結界の膜を作った。
「──じゃ、行こうか。深呼吸、忘れずにね」
軽やかに笑うその背中を追って、健一たちは屋敷の中へと足を踏み入れた。
廊下の先。
古びたフローリングを軋ませながら、一行はゆっくりと歩みを進めていた。
健一の“目”には、視界の端で微かに揺れる影が見えている。
「……あそこだ」
指差した先に、床の間に置かれた古びた手鏡。
銀の縁取りがなされ、持ち手には緻密な意匠──よく見ると、目のような模様が刻まれていた。
「行くよ!」
優里先輩が祓札を投げる。その瞬間──
ギィィィン──!!
金属が軋むような音と共に、手鏡が浮き上がった。
空中でぶわっと黒煙のようなものをまとい、その“背”にいくつもの眼が開く。
「動くのか……っ!?妖異が、鏡そのものを媒介にしてる!」
健一が叫ぶ。
「そっち行ったぞ!!!!」
警告も間に合わず、手鏡はふわりと結界の上を跳ね、障子を突き破って廊下の奥へと飛んでいった。
「くっ……逃さないッ…!」
茜が駆け出そうとするが、健一が制止する。
「ま、待った…! あの辺……なんか変だ……!」
彼の“目”が映すのは、空気がぐにゃりと揺れて見える空間の歪み。
言葉にはできないが、そこを越えてはいけない──そんな直感が走る。
「何か見えたの?」
優里がすぐに反応する。
「はっきりとは……でも、変な違和感がある。見た目じゃわからないけど、空間が……ずれてるみたいで」
「ふむ、妖異が仕掛けた空間干渉かもな」
先生の声がモニター越しに響く。
「追わずに様子を探る、よくやった。加賀」
健一は思わず肩の力を抜いた。
ほっとした瞬間、背中に汗がじんわりと滲んでいるのに気づく。
彼の“目”が映すのは、薄い膜のような異界のゆがみ。
──鏡が通った場所、そこにはすでに“何か”が置かれている。
「奴はこの家全体を掌握してるのか。構造も、空間も、思うままに……」
「なら、正面から追いかけても無駄だね」
優里先輩が言う。
「先に探索して、鏡に関わる手がかりを探せ。どこかに“核”となる記憶か、由来があるはずだ」
「そいつを見つけて、弱点を突く。……か」
健一は小さく頷いた。
茜は短く、「了解」とだけ言って歩き出す。
彼女の目にはまだ敵への警戒と、仲間への評価が浮かんだままだ。
「よし、手分けして調べよう。健一くんはこっちのリビングを。私たちは書斎と寝室を当たるね」
そうして、鏡の妖異に関する調査が始まった。
ご覧いただきありがとうございました!