第3話 冒険者とお金
【登場人物紹介】
( ^ω^)【戦士】:ワンルームの共同住宅で暮らし、A級冒険者を夢見ながら日々クエストに精を出している。ただクエスト報酬だけでは食えないので、月の半分は道普請や農作業の日雇い労働に繰り出している。
( 'A`)【射手】:戦士と同じアパートに暮らしている。最近は冒険者というより狩人に近い生活を送っている。今のところ安定した生活を送れている。
(゜、゜*)【魔女】:街外れの森で薬屋を営んでいる。薬の素材である薬草を安く仕入れる為に冒険者になった。それなりに儲かっている。
( ・∀・)【神官】:冒険者ギルドのある街の神殿に仕えており、お守りや薬などの仕入れ・在庫管理を担当している。給料は全て神殿に寄付している。
──魔法が存在する世界。さる王国の冒険者ギルドが運営する、通称『冒険者酒場』。ここでは冒険者を名乗る落伍者どもが日々集い、酒を片手に肴を片手に、旅の宴や情報交換、はたまた戦果によるマウント合戦などなど、世の為にならない下劣な与太話が繰り広げられている。
──これは、そんな『冒険者酒場』に入り浸る三流冒険者たちの(酔って記憶が飛ぶので)冒険譚には残らない日常の切り抜きである。
──なお、この世界の基軸通貨であるGの相場は、1G≒1JPYである。
( ^ω^)「ゴッキュ……んっく……んっく……」
( ^ω^)「んかあっ!!仕事終わりの酒に乾杯ッ!!」
(゜、゜*)「乾杯する前に飲み干さないで」
(;'A`)「コイツ……テキーラをジョッキでいきやがった!」
(゜、゜*)「死ぬわよ」
( ^ω^)「大丈夫だ!今日は『解毒の指輪』を装備してるからな!」
(・∀・ )「おや高級品。オアシス都市で買ったの?」
('A`;)「そんな金ねぇだろ?」
( ^ω^)「おう。大砂漠の『メンタイシーのピラミッド』ってダンジョンで拾ったんだ」
('A`;)「えっ?マジで?よく辿り着いたな。大砂漠のピラミッドといやぁ、砂塵に隠れて、そうそう見つからないって話だぞ?」
( ^ω^)「砂漠で運良く遭難してね。彷徨ってたら目の前に、ね」
(゜、゜*)「運良く遭難……?」
('A` )「だから帰ってくるのに半月かかってたのか」
( ・∀・)「戦利品は『解毒の指輪』だけ?」
( ^ω^)「いんや。他にも宝石やら素材やら色々とな。大方売っ払ったが、結構儲かったぞ」
('A` )「おっいいじゃん。どれくらい儲けた?」
( ^ω^)「手数料とか経費とか諸々を差っ引いて……500万Gくらい?」
('A` )「500万Gかぁ……」
('A`;)「……ハァッ!?マジでぇッ!?マジで500万G!?」
( ^ω^)「マジマジの大マジ」
(゜、゜*)「稼いだわねぇ」
( ^ω^)「宝石がね……大きかったの」
(・∀・ )「じゃあ『隊商の護衛』クエストは当たりだったってことだね?」
( ^ω^)「ううん、クエストはカスだった」
(・∀・;)「カスだった!」
(゜、゜*)「よっしゃ勝った」
( ^ω^)「なんか砂漠歩いてれば喉が乾くじゃん?水一杯で2000Gとか取られたんだよね」
('A`)「水は貴重だしな」
( ^ω^)「野営の準備も手伝わされるしよー、夜も見張りの仕事しろとか言うし……」
( ^ω^)「しかも隊商はオアシス都市に行くだけで復路がないから、帰りは実費だったんだぜ!?」
(゜、゜;)「全っ部クエスト依頼票に書いてあった!」
(゜、゜;)「それ全っ部クエスト依頼票に書いてたじゃない!」
(;・∀・)「やっぱり報酬しか見てなかったんだね……」
( ^ω^)「なんの話?」
('A`)「お前、バカ」
( ^ω^)「ふっ、何を分かり切ったコトを……」
( ^ω^)「冒険者なんて、皆ロマンを求めるバカ野郎だよ」
(゜、゜*)「あ、違う。そんな綺麗な意味のバカじゃない」
( ^ω^)「まぁ、なんと言われようが、今の俺は500万持ってるから」
('A`;)「くそ、それズルいなぁ」
( ・∀・)「キャッシュで大金持ってると人は無敵になれるからね」
( ^ω^)「それね。もう今年の税金も払ったから、なにも怖くない」
('A`)「あー、そういやもうそんな時期かぁ」
(゜、゜*)「税金ねぇ……」
(゜、゜;)「ッ!……ああああっ!」
(;^ω^)「どわ?どうしたいきなり」
(゜、゜*)「税金っ!税金のこと忘れてたのよ!」
('A`;)「え、何?期限過ぎてるとか?」
(;・∀・)「いや、今月の末に徴収じゃなかったかな?」
( ^ω^)「じゃあ問題ないじゃん。魔女だったら税金が払えないなんてコトないだろ?」
('A`)「薬を売って儲けてんだろ?」
(゜、゜;)「面っ倒くさいの!ホントに!」
(゜、゜;)「今年の売上とか経費とか、色々計算しないといけないのよ……アンタらこそ大丈夫なの?」
('A`)「俺はちゃんと帳簿つけてるから」
( ・∀・)「神殿には税務担当がいるから」
( ^ω^)「俺はクエスト報酬から税金を引いてもらうことにしてる」
('A`;)「え?お前、その制度使ってんの?手数料かかるのに?」
( ^ω^)「だって面倒くさいじゃん。税金の計算なんて絶対忘れるし。遅延税を払うのも嫌だし」
( ^ω^)「他にも使ってる奴なんて大勢いるよ?」
( ・∀・)「クエスト以外の日雇い労働とかの収入は?」
( ^ω^)「それも全部ギルドに任せてる」
('A`;)「うわぁ、中抜きされてる奴じゃん……お前マジか」
(;^ω^)「だからそれでいいんだって!税金関係を外注してると思えば安いもんよ!」
( ・∀・)「それは確かにあるかもね。魔女も、税務が苦手ならギルドを上手く使ったら?」
(゜、゜;)「クエスト報酬なら私もギルドに頼んでるけど、薬売りは個人業だから……」
( ^ω^)「え、というか魔女の薬売りって儲かってんの?俺買ったことないんだけど」
( ^ω^)「回復薬ってギルドの販売店で一個200Gじゃん?そんな利益が出るくらい大量に作れるモンなの?」
(゜、゜*)「ギルドのポーションなんかと一緒にしないでちょうだい?効果も薄いし、品質も安定してない。私に言わせりゃ、あんなの粗悪品よ」
(;^ω^)「そ、そんなに?」
( ・∀・)「実際そうだよ。魔女の回復薬は効果が高いって神殿の参拝客にも評判だからね」
('A`)「参拝客……?なんでそこでお前んとこの神殿が出てくるんだ?」
(゜、゜*)「工房で直売もしてるけど、私の薬って殆どミタス教の神殿に卸してるのよ。それが一番の稼ぎね」
( ・∀・)「いつもお世話になってますぅ」
('A`)「へぇ、お前らそんな縁で繋がってたんだ」
( ^ω^)「信者が回復薬飲んでなんか意味あんの?モンスターと戦って消耗してる訳でもないのに」
( ・∀・)「街の人々だって日々の仕事で疲れてるからね、回復薬って滋養強壮や疲労回復効果もあるし」
(゜、゜*)「アンタたち、一回私のポーション飲んでみなさい?」
(゜、゜*)「トぶわよ?」
('A`)「それ違うクスリじゃない?」
(゜、゜*)「大丈夫。まだ合法よ」
('A`)「おい神官、ヤバい事になる前に手を引いた方がいいぞ」
( ・∀・)「ん~でも信者からの評判はすこぶるいいんだよね。『甘くて美味しい』って」
( ^ω^)「味かよ」
(゜、゜*)「いやいや、味だって大事よ?苦い薬はいざという時に飲み下すのに時間がかかったりするし」
( ^ω^)「ほぇ~そんなもんか。そんで、その回復薬って一本いくら?」
( ・∀・)「祈祷料込で3000G」
(;^ω^)「クッソ高ぇ!」
('A`)「これは儲けてますなぁ、神殿さん」
(゜、゜*)「いやいや、良心的よ。薬の素材だって高品質なの使ってるし。私が冒険者で、直接ダンジョンまで素材を採取しに行ってなかったら倍の値段はくだらないわね」
( ・∀・)「そうだよ。祈祷だってタダじゃないし」
('A`)「タダだろ」
( ・∀・)「宗教問題の時間だ」
(;^ω^)「ん~一本3000Gもするなら、俺はギルドの不味い回復薬で我慢するかな」
('A`)「俺もだなぁ。ま、魔女もそんだけ儲けてるなら、これからはしっかり帳簿つけとくんだな」
(゜、゜;)「いやいや流石に帳簿はつけてるわ。つけてるけど……」
('A`)「つけてるけど?」
(゜、゜;)「私って整理整頓が苦手なタイプじゃない?」
('A`)「知るかよ」
(゜、∩;)「あーあ、明日は一日中書類整理か……億劫だわ」
( ・∀・)「そういや戦士は今日帰ってきたばっかだけど、明日からどうするの?」
('A`)「そりゃあ金がたんまり入ったなら、しばらく遊んで暮らすだろ。冒険者ってそんなもんだし」
( ^ω^)「それがね……実は明日から王都に行く用事ができて」
('A`;)「王都!?どうしてまた?」
(・∀・ )「遂になんらかの法に抵触した?」
(゜、゜*)「出頭?」
( ^ω^)「いや。う~ん、まぁ、見せたほうが早いか」
(^ω^ )「ちょっと待ってな。呼んでくるわ」
('A`;)「呼んでくる?誰を?」
(゜、゜*)「……恋人とか?」
(・∀・ )「あ、彼女の実家にご挨拶?」
(;'A`)「いやいやいやいや!そんな話聞いたことねぇぞ!?」
(;'A`)「そもそもアイツ、冒険者には恋人も妻も要らねぇとか言ってたし、ありえねぇって!」
(゜、゜*)「まぁ確かに冒険者なんて、そういう家庭的なモノとは対照的な所にいるわね」
( ・∀・)「もしかしたら今回のクエストで遠征したオアシス都市で出会った子に一目惚れしたとか?」
(゜、゜*)「いやぁー、アイツはそういうタイプじゃないでしょ」
('A`)「アイツ冒険者のくせに身持ちが固いからな」
( ^ω^)「おまたせー、連れてきました」
(*ФωФ)「……」
(゜、゜*)「誰?その女の子」
( 'A`)「フサフサしてんな。獣人の子どもか?」
( ^ω^)「うぅん、王女」
(゜、゜*)「は?」
( ^ω^)「ピラミッドに封印されてた、古代王朝の王女なんだって」
(*ФωФ)「妾はロマネスク第三王朝の王女なのじゃ!」
( ・∀・) 'A`)「……」(゜、゜*)
( ・∀・)「……なぜ、封印されていた王女が、ここに?」
( ^ω^)「解いちゃった。封印」
(゜、゜*)「解いちゃったのね」
( ^ω^)「うん。そんで、王国騎士団がスゴい怒ってるらしくて」
( 'A`)「そりゃあ、古代王朝の王女なんて、かなり危険な存在だしな」
(*ФωФ)「妾は悪い王女じゃないのじゃ!」
(゜、゜*)「悪いとかそういう問題じゃないのよ」
( ・∀・)「自分の領地内でね、大昔の権力者が復活しちゃったらね、王権の正当性とかね、領土問題とかね、色々ね」
( ^ω^)「『とりあえず封印解いた奴は面貸せやボケ』と騎士団のお偉いさんが言ってきてるらしくて」
( ^ω^)「これから俺は土下座する為に王都へと発つ」
(゜、゜*)「実質的に出頭じゃない」
(゜、゜*)「なんでさっき言葉を濁したのよ」
( ^ω^)「だって俺は悪いことしてないし」
( ^ω^)「お金があれば使うし、お酒があれば飲むし、ボタンがあれば押すし、お宝があれば持って帰るし、封印があれば解く!」
( ^ω^)「それが冒険者ってモンだ!」
(*ФωФ)「……カッコいいのじゃ!」
(゜、゜*)「ダメよ。こんな馬鹿に憧れちゃあ」
( 'A`)「でもガキって、こういうバカに憧れちゃうんだよなぁ……」
( ・∀・)「親からすれば頭が痛いだろうね」
( ^ω^)「いい目をしている。お前もきっと、いい冒険者になるハズだ」
(*ФωФ)「おおっそうか!?ならば妾も冒険者になるのじゃ!」
(*ФωФ)「どうやったら冒険者になれる?」
( ^ω^)「冒険者ギルド窓口で入会金1万G払って、契約書にサインすればなれるぞ」
(゜、゜*)「幼気な子どもに茨の道を勧めないで」
(;・∀・)「というか冒険者になる前に……君達は自分自身がどうなるか考えなよ」
(*ФωФ)「?」
('A` )「そのガキも一緒に王都に連れて行くんだろ?」
( ^ω^)「うん。『雁首を揃えて来いやカスコラ』と言われている」
('A` )「そのまま刎ねられそう」
( ^ω^)「ははは!いやいや!まさかそんな!」
( ・∀・)( 'A`)「……」(゜、゜*)
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「また俺、なんかやっちゃいました?」
【冒険者コラム】テーマ:冒険者特別徴税制度
冒険者は基本的に個人事業主である為、クエスト報酬やダンジョンで得た素材の換金などで得た所得にかかる税金や市民税など、税金の支払いは個々人で対応しなければならない。
しかし冒険者のような社会不適合者にとって、税計算や納税といった社会的行為は非常に難易度が高く、ときに苦痛を伴うものである。
そこで冒険者ギルドは、冒険者に代わって税金関係の処理を一手に引き受ける『冒険者特別徴税制度』を用意し、冒険者に有料で提供している。
冒険者からすれば、制度に加入するだけで煩わしい税務から解放され、ギルドや国からすれば税金の取りっぱぐれが無くなり、ついでに手数料収入も得られる、両者win-winのサービスである。
税務代行手数料は冒険者ランクやクエスト達成数などを考慮し、クエスト報酬額・換金額から数%が徴収される仕組み。
例えば、D級冒険者である(^ω^)は今回の『隊商の護衛』クエストで12万Gの報酬を得たが、その1.25%の1500Gを税務代行手数料として徴収されている(実際の手取りは税金や経費をさっ引かれてもっと低い)。
なお、ピラミッドで得た宝石を換金した際にも、代行手数料や鑑定手数料・税金をあわせて100万Gほど徴収されている。




