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どうやら宿命だったらしい  作者: 眠い…
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ここはどこ?あなたは誰?

駆け出しの冒険者、ミリア・アースロン。

金色の髪に、青色の瞳。

まだ幼さの残る彼女は昨日冒険者ギルドに登録したばかりの正真正銘駆け出しの冒険者だ。

彼女は冒険者としての初依頼として、草原に出没する魔物を討伐しに来ていた。


「今日は初依頼…気合い入れて頑張りましょう!」


ましょう!とは言ったものの彼女はパーティーを組んでいるわけでは無いので、一人である。


気合を入れたはいいものの街を出て約半日…

全くもってモンスターと遭遇しない。


ミリアがそろそろ痺れを切らして帰ろうかと思った時だった…

遠目に何かが見えた。

(なんでしょうかアレは…)


不思議に思って目を凝らす。

人型…髪は黒…前のめりの姿勢でヨタヨタと歩いている…全く生気を感じられない。

ミリアは冒険者ギルドの事前研修で学んだ知識からソレが何なのか判別する。

(人型でこの動き方…確か……アンデット!)

ミリアは心の中で歓喜した。やっとモンスターを見つけたのだ。


ミリアはすかさず自身の攻撃の届く範囲まで走った。

そして、アンデットに狙いを定め手の平を向ける。


ミリアのスキルは「水を司る者(ウォーターマスター)

水系スキルの最上位スキルの一つだ。

水の素質を持つ液体を生成、操作できる。


冒険者ギルドの事前研修で、アンデットは神官達の持つスキルでないと倒せないと学習したはずなのだが、やっと見つけたモンスターを前に興奮状態のミリアはそんな事など、欠片も思い浮かばなかった。


頭の中でイメージする…

(水を手の平に集めるイメージ…集めた水をさらに圧縮するイメージ…そしてソレを勢いよく飛ばす!)


水弾!(ウォーターバレッド)


ミリアの生成した水弾は彼女のイメージ通り、ゴオオオオォォという音とともに草原の草を撒き散らしながらアンデットに向かって一直線に飛んで行き、アンデットに着弾した。

水弾をもろに食らったアンデットに再び立ち上がる気配は無い…


「やった!」


ミリアは飛び上がりながらガッツポーズを決める。

初めてモンスターを仕留めたのだ。

(ええと、アンデットは核を取りだしてギルドに提出でしたね…)


ミリアはアンデットの体の中に生成される核を取り出すために、地面に倒れたアンデットに恐る恐る近づいた。

アンデットは珍しい黒髪…服は泥まみれで汚れており、顔、体の方は原型を綺麗に留めているところを見ると、まだ死んでからそれほど経っていないのだろう。歳は自分と同じくらいだと思う…着ている服に違和感があるが、きっと自分と同じ駆け出しの冒険者だったのだろう。


(せめて、核を取り出したあと埋葬してさしあげましょう…)

そう思い、ミリアは核を取り出すために、アンデットに手を触れた…

そこで違和感に気づく…

(えっ!暖かい…)


アンデットとは死体に少量のマナ(生命力)が宿り核を作って、ソレを動力に動くモンスターなのだ。つまり、元々は死体だったわけで、条件によって腐食が始まる前に、アンデットになることはあるが、体の温もりが残っているうちからアンデットになることはまず、ありえない…


ミリアはアンデット?の口元に耳を近づける…微かだが、スゥハァという音が聞こえる。

(息をしている!)


暖かい、息がある…ふたつも揃えば十分だ。アンデット?はアンデットではなく、生きた少年だったのだ。となると攻撃したミリアは焦る。高なっていた気持ちが一瞬で墜落し、焦りに変わった。


(あー、どうしましょう…どうしましょう…まさか間違えて人を攻撃してしまうなんて…しかも初仕事なのに…)

(とりあえず、気を失っているようですね…何とかしなきゃ。えっと、回復薬…)


ミリアは腰のカバンから回復薬を取り出し、少年の口に流し込んだ。

少年の体が微かに緑色に光る。回復薬が効いて、マナ(生命力)が回復した証拠だ。

しかし、少年は目覚める気配がない。

(困ったな……でも置いて行ったら危ないですし…第一、私が間違えて攻撃してしまったのですから責任取らないと…)


意識の戻らない少年をミリアはおんぶした。

体力はある。疲れたら回復薬を使えばいい。

そう思ってミリアは少年を連れ帰った。


―――


目覚めると僕はベットの上に寝ていた。天井は木の板。

証明となっているロウソクがユラユラと揺れている。

少し薄暗い気もするが、まあ病人にはこれくらいが良いのだろう。

(助かった…)


建物の中にいるということは、誰かしらが助けてくれたということだ。

部屋を見渡すと、洋風の作りになっていることが分かった。

ガラス窓はなく、外の様子は分からない。

どうやらここは寝室らしい。一床のベットと勉強机のような机、その上に最近はは珍しい燭台。まばらに本の入った本棚。

それくらいしかない至って簡素な部屋だ。

唯一の灯りが蝋燭であることに違和感があるが、

辺り一面何も無いような田舎の家と考えれば、有り得るのかもしれない。


僕がキョロキョロと辺りを見渡していると、ガチャリという音がして、部屋の扉が開いた。

(誰だろう?これでドッキリ大成功!とか言って出てきたらぶっ飛ばしてやる)

僕がそう思って構えていると、

部屋に入ってきたのは、金髪に青色の瞳をした可憐な少女だった。

歳は僕と大差ないだろう。

もし、同じ学校に通ってでもいたら、間違いなく高嶺の花であろう外見だ。

もっとも、日本人の僕からすると、この外見は珍しい。

(え、誰?)


彼女は僕が起き上がっているのを見るやいなや、手に持っていたお盆をガシャンと落として、僕の方に足早にやってきた。

(え!うわ、どうしたの?)

どうしたのかと、僕があっけに取られていると…


「間違えて攻撃してしまって申し訳ありませんでしたー!」


いきなり頭を下げて、謝られた。

なんでだろう…間違えて攻撃…?

僕が状況が分からずポカンとしていると彼女は続けた。


「えっと…その…お体の加減はいかがですか…」


彼女に言われて気づく。

そういえば、ボロボロだったはずの僕の体は爽快!とまではいかないが、とてもスッキリとしている。

体を見た時に気づいた。

僕の服…彼女の服もそうだが、今僕の来ている服は現代の服とは思えない…

Tシャツでもなくワイシャツでもない…なんかはっきりしない感じの服だ。どっかで見たことあるような…そうそう、ラノベとかによくある中世ヨーロッパって感じのだ。

まあ、それはいいとして、お礼を言おう。


「あの…助けていただいてありがとうございました。おかげさまで良くなりました。お名前を伺っても…あ、僕はヒロマサとです」

「私はミリア・アースロンと申します…お体が良くなったようで何よりです…」


ミリア…ミリア…アースロン…うん、外見からしてそうだとは思っていたけど、名前もヨーロッパ風だ。日本語が通じているところを見ると、在日外国人と言ったところか…


それよりも疑問なのは間違えて攻撃と言ったけど…攻撃…うーん、意識が飛ぶ前、何かが飛んできたような気がしたけど……


「あの、間違えて攻撃というのはどういうことでしょうか…?」


僕が尋ねると彼女は少し言いにくそうに答える。


「実は私、冒険者を始めたばかりなのですが…その、依頼のモンスター討伐で…アンデットと間違えて攻撃してしまって……あまりにボロボロでしたので見分けがつかなくて…」


(………………ん?)

僕は頭の回転は悪くないと思っていたけど、僕の処理能力を超えた答えが帰ってきたため、フリーズしてしまった。冒険者、モンスター、アンデット…いや、物語の世界だ。

だけど、ここまで真剣に謝ってくるところを見ると、なんだか本当のような気がしてきたので聞いてみた。


「アンデットというのは、死体が動くやつですか…」

「はい…死体と間違えるなんて…本当にすみませんでした…」


彼女はまたも頭を下げた。


「ちょ、顔をあげてください、僕はミリアさんが来てくれなければ、あのまま行き倒れてしまっていたでしょうから…僕はお礼をしなくちゃいけないんです」

「ですが…」


僕が彼女の顔をあげさせる…

彼女はまだ申し訳なさそうにしているが、ぶっ倒れたのが仮に彼女のせいだとしても、助けてくれなきゃ今頃僕は死んでる…それこそ、アンデット?になっていたかもしれない。

まあ、アンデットってさ…ね死者が蘇って動くとかありえないじゃん…

攻撃って言ってたけど、何したんだろう。


「攻撃、というのはどう言ったふうに…?」

「はい、」


彼女は一指は指を天井に向けて、それはですねとでも言うかのように構えた。

すると彼女指先に、何やら球体ができ始める…それは段々と大きさをましてき、野球ボールくらいの大きさになった時に、彼女が言葉を続けた。


「私のギフトスキルは見ての通り、水系のものを創ったり、操ったり操ったりできるのですが…水弾で……」


僕は目の前の光景に思わず目を見開く。

(水が、浮いてる…)

僕は目の前で起きていることに言葉を失うしか無かった。何も無いところこら、水ができて、浮いているのだ。しかもそれは彼女が操っているらしい…

まさに魔法だ。いや、これは本当に魔法なのかもしれない……なんなんだ一体

混乱する頭の中を無理やり沈めて再度質問する。



「なるほど………それと、ここはどこですか…?」

「私の家です」

「いえ、そうではなくて…」

「あ、すみません。ここはダルアンです」


僕は頭の中の辞書から日本のダルアンという地名を探す………………

(ない)

少なくとも僕の記憶の中には無い。


「国は…?」

「ダルニア王国ですが…」


うーん…知らない…聞いたことない。しかも、日本じゃない。

じゃあなんで言葉が通じているんだろう?確か日本語が公用語の国なんて日本くらい、あと、太平洋の島国に1個あるくらいか…

というかダルニアってどこだよ。


もうここまで来るとダメ押しだけど、一応聞いてみた。


「日本と言う国は聞いた事ありますか?」

「うーん…ないです」


彼女は考える姿勢もなく即答した。

ないかー…そっかー…

日本はなんだかんだ言って主要な国だ。それこそ、物語で言えば名脇役みたいな。

誰もが詳しくは知らなくても名前くらいは聞いたことがあるはずである。

僕は考えた。


考えた結果ラノベの知識から推察するにあれだ。


たぶんここ異世界だ。



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