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どうやら宿命だったらしい  作者: 眠い…
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プロローグ

ゼェハアゼェハア……


緑の植物以外ほぼ何も無い草原を歩く1人の黒髪少年…

彼は手をだらーと下げ、前のめりの姿勢で歩いている。

一歩一歩、最後の一歩がいつ来てもおかしくない様子だ。

見るからに疲れ果て、今にも倒れそうだ。


(なんでこうなった…)


この訳の分からないところに来てから約2日と半日…

水も食料もほぼ何も無い状態で、行先も分からずただひたすらに歩き続けている。

死にそうな程に空腹だが、それも感じないほどに疲弊している。

寝るのは寝ている間周りが不安なので一睡もしていない。


持ってあと半日…

僕は生命の終わり、つまり死ぬという事を真剣に考えたことは無かったけど、

自分が直面している状況がそれに近づいているのを感じてしまっているから、嫌でも考えてしまう。

人は3日間水を飲まないと死んでしまうらしい。

幸いにも時々小川があるので、飲み水は何とかなっているが、食べ物がない。

人が水だけで生きられるのは確か10日くらいだっけ…

でも、僕はそんなに生きられる気がしない。


(神様…仏様…僕は何か悪事をはたらいたのでしょうか…もしそうなら今後改心して気をつけます…だから助けてください…)


僕は心の内にそう念じるが、何も変わらない…

3日前…そう…3日前まではこんなことになろうとは思いもしなかった…



―――


「ふわぁ…」


僕は固まった体を伸ばした後、ブルーライトを浴びて疲れた目を擦り、時計に目を向ける…

時計の針は今、長短共に12を指していた。

(もうこんな時間か…)


僕、佐藤 洋匡(さとう ひろまさ)は中学二年生14歳だ。

どこにでもいる平凡な中学生。オタクの階段を登り始めてはいるがまだまだである。

自分で言うのは恥ずかしいが、顔は平均以上、悪くない。

頭も平均以上、悪くない。友人も多い。

家庭は一般、中の中くらいの環境だけど、家族にも不満は無い。

強いて言うなら、平穏すぎるということくらいだが、それが幸せなんだと言うことにしておこう。


来年高校受験があることもあって、最近は夜遅くまで机に向かう事が日課になっている。

机に向かうとは言っても、さすがはZ世代。スマホは友達。

勉強に飽きてくるとすぐにスマホを手に取る。

今日も結局スマホの誘惑に負け、こんな時間までWebで小説を読んでいた訳だが、さすがに眠くなってきた。目がしょぼしょぼとして、どこか視界がフラフラとしてきた。

(明日も早いし、そろそろ寝るか…)


そう思い、部屋の証明を消し。布団に入る。

家の近くに国道があるため、こんな夜中でもブォー、ゴロゴロと言った感じの音が聞こえてくる。

(あ、数学範囲終わってないじゃん…まあ、明日やろう…)

そうして意識が吸い取られて行った。


―――


心地の良い風が僕の顔を撫でて、目が覚めた。


「んん…」


目の前には青く、よく晴れた空が見える。

アラームが聞こえなかったところを考えるに、どうやら寝過ごしてしまったようだ…

(この明るさだと7時くらいか?それなら急げば間に合うから良いけど、起こしてくれても良かったじゃないか…あ、数学の範囲…)


起きて、朝食を取ろうと思い、体を起こす。

しかし、周囲は良く見知った自分の部屋ではなかった。

辺り一面草、草、草……地平線の先まで草原なのだ…


「は?」


突然の光景に思わず驚きの声が出る。

(うん、これは夢だ。眠りが浅いと意識があるって聞いたことがあったようななかったような…)

そう思って頬をペチペチと叩いてみる。

ペチペチ

(ん?)

ペチペチ

(あれ?)

ペチペチ

(………)

最後に一発思い切ってビンタしてみた。

ベチン


「痛っ!」


ジンジンとする頬を抑えながら僕は確信してしまった…

(これは夢じゃない…)

僕は再び草むらに寝転び考える…空は気持ちのいいくらいに青く澄んでいる。


うーん…

これはあれかな…テレビでよくあるドッキリ、朝起きたら知らない場所だったドッキリ。

だとしたらカメラとかスタッフの気配があってもいいはずなのだが、それは無さそうだ…

うちの親が単独でこんな事をするのは考えにくい。

誘拐かな…でもなあ、こんな草原に放置するわけがないな…第一、身代金だって、僕の家が払える額はそんなに多くは無いはずだ…


考えても分からないから、考えるのをやめた。

少し歩いて散策してみよう、道路があれば標識があるし、運が良ければ車に乗った人に会えるかもしれない。それに、寝起きで喉が渇いた。水も欲しいな…

そう思って僕は立ち上がり、行く宛てもなく歩き始めた。


―――


そして今に至る訳だが…

いくら歩いても、人どころか、道路すら見当たらない。

それこそ、人工物が全く見つからないのだ。

今になって、思い出すのは遭難した時はその場を動くなと習ったことだが、すっかりあの時は忘れていた。心地の良い風と、あの青空に何とかなるだろうと、そう思ってしまっていたのだ。

そのせいで行き倒れそうになっているのだけど……


不意に、ゴオオオォォという音がして、顔を上げる…

水?透明な球体が僕の方に向かって飛んでくる。

疲労でついに幻覚が見え始めたと思った。だが、その球体は止まることなく、僕に正面から衝突した。


「ぐへぇ」


ものすごい衝撃と共に僕は後ろに吹っ飛び、ぶっ倒れた。

遠くから何かが聞こえる…


薄れゆく意識の中で、僕が見たのは人の姿だった…

(ああ、人だ…助か…っ…た…)


疲労と安堵と脳震盪で、僕の意識は消失した。












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