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奇血病躯  作者: 記長命蝶
3/4

1話3章 悪食

この一話は4章で構成しております

まず3章あげて残りの1章は連日で20時位に投稿します。

その後の2話以降は毎週月曜日の20時位に

投稿させていただきます。

 一難去った暗がりに男二人。

崩壊したアスファルトの中。

 いやまあ急場なのだから男二人でも

なにも悪くはないのだが

 良くない理由が一つあるそれは相手が吸血鬼であること。


 先程吸血鬼を殺した吸血鬼

要するにリュウは不安を覚えている。


喉笛目掛けて吸血鬼が飛びかかった時も。

天下乃にキスされてさよならした時も。

また吸血鬼がこの腕を抉った時も。


 まだ一つも不安は晴れない。

しかも増すばかりで

 目の前の相手に信頼を置いていいのか

分からない。


 だがなんでだろう信用しても良いという気概を感じるし、聞いてもいないのに名前を知っている。


 そこで一つリュウはふざけてみることにした。

 もしかしたら天性的に緊張を受け付けない性格なのかも知れない。


「口にゴミついてるぞ」


「鱗だ 締まらん奴だな」


 感覚的にはツッコミ半分呆れ半分で

話しは出来そうとリュウは判断した。

立て続けに。


「良い天気ですね!」


場所地下。

結果。

会って数秒で怪訝な顔をされる

かと思いきや。


「まあ日差しは疎い暗がりは悪くはない」


相手は吸血鬼だった忘れてた。

安堵し現状を思い返す


「というかどうやって上に上がればいいのやら」


汗を拭い不意に手に目を落とす。


「ん?」


 気づけばリュウの手の甲には模様らしき物が刻まれていた。

 チャカは今度こそ顔を悪くする。


「まあここを出れば良い話」


 チャカは大人という名の免罪符、妥協、諦めを仕方なく呑んだ。



『ガダン!』



 次の瞬間地面が崩れ地下駐車場の壁が割れた。


「ウァー!」


 当然リュウ達は深穴に真っ逆様である。

だがそれを手伝っていた要因はもう一つある

 冷静になってみれば下から掃除機で吸われているような感覚がある。


 落下死という言葉が過るが。


 チャカがリュウを抱き抱えてくれているので命の危険は無い。

 かの吸血鬼は落下の姿勢を選べるらしい。

リュウを横腹に抱えて仁王立ちでいる。


ーー落下しきる他ないな ん?


 この深穴螺旋状に道がついている。

なるほど上から下へと人間を誘導するという

訳だ。

 チャカは面倒くさそうだが笑う。


「何かいるな」


 どこかのジブリ映画とはえらい違いの

落下である。

 ガシャン! 大きな瓦礫を細かくする形で

着地した。


「童! 隠れてろ」


「なんだ?」


 咄嗟のことにその真意を確かめようとするリュウ。

 その結果異形を見た。

 建物が穴の入り口を塞いでるので光はないが怪しく光る蛍光灯がずさんに並んでいるのでなんとか目で捉えた。


怪物を。


 微かな光がなくとも闇夜を生きる吸血鬼であるチャカにも見える。

 リュウ以上に鮮明に。

それは口に鱗があるチャカ以上に吸血鬼には

見えない見た目をしている。

 芋虫のような体躯、丸い口に扇風機の羽状の歯がついている。

 そしてデカい大型トラック位ある。


「異形かつまらんな」


だがチャカには問題ない相手らしい。


「わっぱ教えてやる」


 チャカはファイティングポーズを取る。

ボクシングの基本的な構えだ。


「吸血鬼はな異形は弱く人型が強い」

(半分正解)


 そういうとチャカは走り出し、

芋虫に強烈なアッパーを見舞った。

 なんと両者宙に浮いていた。


芋虫はアッパーによる衝撃で。

チャカは自身の強烈な脚力で。


 そして綺麗な流れで廻し蹴りが入る。

芋虫は真っ直ぐ吹っ飛び。

 グチャグチャと赤紫色の血を吐き出した。

その様子を見たリュウは問う。


「死んだか!?」


チャカは空中で落下しながらで答える。


「いやまだ死んどらん」


どうやらまだ授業してくれるらしい。


「吸血鬼は人間でいう致命傷を与えればぐったりするのみだ」


 とりあえずその一言を授け立て続けに

近くの瓦礫に腰を落ち着ける。

 リュウもすぐ横に腰を落ち着けた。

案外図々しいものである。


「まあそこらの下から数えた方が早い低級の

吸血鬼では時間が経ったら死ぬ」


回復が間に合わないからだと言う。


「ファー」


「!」


異常を感じ直ぐに背後を確認する。


「なんで頭ぐちゃぐちゃだったのに治ってんの?!」


さっきと話が違う。


「人間の血を呑んで回復を促したか!」


「は? 血」


 リュウはまだ知らない情報である。

だが直ぐに頭に浮かんだ疑問符は晴れた。

 芋虫は凄まじい吸引で上部の建物がボロボロと吸い込まれていく。

 そして暗闇で包まれた深穴に日がさす。


二人それぞれに信じられないことを目にした。


「血まみれ? 血の海?」


 少し前天下乃と一緒にいた時にみた、

光景を遥かに凌駕する地獄絵図。

 沢山の人間の死骸

混ざりあった赤黒い血が一面に広がり

点々として在る、黒髪、剥き出しの臓物。


「オェェ ゲホッゲホッ ヴゥ」


 それは記憶喪失少年の脳の奥深くに触れたくない物として刻まれた。

 だがそんな光景、暗闇が視認を阻むことのないチャカにとっては

"とっくに見えていた"物であり。

 特に気にする必要は無いもの。

それより気になるのは、


「何故日の下を歩けている」


 芋虫が深穴に蓋をしていた建物を吸い込んだことで


 深穴に太陽が照りつけた。


 本来太陽の光を浴びた吸血鬼は灰になる。


 だが芋虫は何食わぬ顔で日光にあたっている。


チャカは咄嗟にリュウを連れて壁際に逃げ込んだので日を浴びていない。

 そしてその芋虫は物理的にありえない

その身の何倍もする巨大なデパートを飲み込んだ。


ーー化け物。


 リュウは見上げる憎悪に近い物を携えて。

建物ごと沢山の人を捕食して何倍も肥大化した。

黒洞(ブラックホール)の吸血鬼を。


当作品を読んでいただきありがとうございます。

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