1話2章 深穴の舞台裏
この一話は4章で構成しております
まず3章あげて残りの1章は連日で20時位に投稿します。
その後の2話以降は毎週月曜日の20時位に
投稿させていただきます。
「契機は戦線離脱するまでだな」
リュウの危機に現れたそれは
今までの吸血鬼とはまた違う見た目
オーラをしていた。
下顎のラインには(吸血鬼なのに)
淡いピンクの鱗が並び、腕はとても
細くも美しい筋肉がついていて
髪は赤茶のオールバックで
なんだか不良ぽさがある。
ーーあの女『最悪な』状態の俺を起こすとは
何がしたい?
***
(読まなくてもいい)
設定公開
天下乃
名前の由来は日本人らしくない発音に
したかったから。
髪は赤紫一色の
胸ベルト着用
***
場面は戻り洋館の大広間
今はもう血に染め上げられることが
決定した戦場。
「私としたことが取り乱しました失礼ぶっ殺します」
先に動いたのは映だった。
ーー恐ろしく速い!?
カーティスに届いた拳は低級の吸血鬼
キューマによって加速されたモノだった。
「受け切れるのかよ!」
だが映の拳が真に届くことはなく、
片手で受け止められていた。
そしてこの状況はまずい。
ーー頭ががら空きこのまま殴り潰します。
拳にありったけの魔力を込める、
破壊力を増幅させる所作だ。
「!?」
映と違ってカーティスの拳はしっかりと貫いた。5体のキューマを。
カーティスが動揺している間に、
映の蹴りがヒット。
後ろにあった階段に風穴を開ける形で吹っ飛んだ。
カーティスに二度の驚きが走った。
相手の吸血鬼への信仰心を利用したので
もの凄く性格が悪い。
カーティスは受け身の成否を確かめ
起き上がりながら考える。
ーーまずいですね、攻撃は複数一気に入れても防御されてしまうでしょう、私以上の馬力を与えねば
「そうですね」
にやり次の瞬間カーティスは脱兎のごとく
階段を駆け登った。
「逃げるきか!?」
***
常夜には主に三つの派閥があり。
日の元を歩けない吸血鬼を憐れむ
陽哀派。(ようあい)
吸血鬼の偉大さを尊敬する
月喝派。(げっかつ)
そして吸血鬼の力を求める
血望派
ちなみにカーティスは月喝派です。
***
映も直ぐに追いかける。
館中に床を蹴る音が響く
カーティスを見失ってはいない、
ただ地の利はあちらにある。
その懸念が追い抜けない理由となって
映を縛る。
ーーアクティブなおじさんだな
ただ逃げ切ることも出来ないぞ。
大きい館内を暫く走り回ったのち
カーティスは突然高い天井を突き破って屋上にでた。
ーー準備は整いました
空中で同じく屋上に出ようとする映を吟味する。
ですがあの子供の目を見張るところは……
映も次第に跳躍し両者屋根の上に
出揃った。
「魔力による身体能力強化お上手ですね」
ーーそれはお前もだよ! 俺の疲労を狙った
のか?
機動力では優っている映は深く集中する。
四肢全てにキューマを纏う。
ーーこれで決める
『!?』
最初の3倍の速度本当なら受け止めるなど
叶わない攻撃。
だがカーティスは受け止めようともしていなかった。
ーークソ! しくった!
キューマは灼熱に包まれ燃え尽きていた。
突然失った勢いで映はカーティスの背後まで
転がり込んだ
そう映は忘れていた吸血鬼が太陽に弱い事を。
「ですがね、結局一瞬でもあれば私の
攻撃を殺すには充分でしょう私のならね」
「ダハァ!」
カーティスの思惑は叶い。
10体のキューマを貫き映の体から、
骨が折れる鈍い音がした。
ーーなんでだよ!
先ほどの驚きとはあべこべなことが
目前にあった。
映の体に鉛を落としたのは吸血鬼で、
その"吸血鬼は燃えていなかった"。
なのに以前太陽は燦々照りつけている。
「私もね映くんと同じで魔術は使わないんですよ、吸血鬼由来の魔術はね」
近年の魔術は吸血鬼の血の性質によるモノ
であり。
カーティスの胸先に浮いている、
魔導書は約五百年前の魔術師が吸血鬼を研究する際に出来た別ルーツの魔術である。
その名も。
「無法者の成功『アウトローサクセス』」
勝利を確信した不気味な笑みを浮かべる。
カーティスは罰を望み。
苦しんで死ぬように
わざと止めをささず。
ただ見つめる選択をとっている。
ーーまずい骨が逝った、そして恐らく
東京の吸血鬼は太陽で燃えないあるいは
銀も効かないか?
いや多分魔術で対処可能だ。
今はまずあの司教をどうにか。
映の低級吸血鬼キューマによるバフは
自身の血を吸わせてキューマに強化を
施すモノ。
そしてそれをジェット機構のように扱う。
ーー大丈夫だ失血死の線はない。
クソ! 血が足りなくて動けそうにない。
だがキューマを動かすのに血は関係ない!
映の"影"から無数のキューマが飛び出し
球形を成す。
キューマで成した
球なのだから太陽の如く燃えている。
だがこの場に居た敵方には事の本質を
理解するのが遅れた。
表面のキューマが陰になればすぐに燃え尽きる事はない!
『夜襲群』
キューマの群れは真っ直ぐカーティスの元へ!
咄嗟に回避を試みるも無理である。
群れが速すぎて。
滑稽なほどに全ての攻撃が直撃した。
やがて全ての群れは燃え尽きた。
そして応戦に駆けつけた吸血鬼も術が解けた
ことで、瞬く間に燃えてしまった。張り合いもなく。
だがこの男カーティスそう簡単に死にはしない。
「ハァハァ……ハハハハ!」
渾身の一撃を受け明らかに無事では無い
その証拠に後ろから黒い靄が広がっている、
それは撤退を意味する。
極めつけには落とした魔導書を回収する素振りがない。
「一度退きます、そうだ手土産に教えて差し上げましょう」
「吸血鬼の契りを無効化する方法
吸血以外の方法で動物の血を与えるんです」
そうすることで別の生物としての尊厳を得る。
その事を伝え終わった瞬間、靄は消えた。
残ったのは肋が折れた映と閉ざされた
魔導書だけであった。
ーー後で回収しなくちゃな。
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