一話一章 少年は藁ではなく鬼を掴む
この一話は4章で構成しております
まず3章あげて残りの1章は連日で20時位に投稿します。
その後の2話以降は毎週月曜日の20時位に
投稿させていただきます。
東京都某区、時間帯正午
何かがおかしいビルがひしゃげて。
地獄の手前なんじゃないかという深穴が
出来ている。
何層も階がある大きな地下駐車場が剥き出しになっていて。
元々上にあった建物が深穴に蓋をしている。
正に奇々怪々な様だ。
だが絶望よりも先に、なぜだか疑問が湧き好奇心が出てくるものだった。
だがそんな光景よりも理解し難いことが起きている。
一人の男性は思った、自身の体から大量の血が出ていることにも気付かず。
ーーなんで昼間なのに吸血鬼が暴れている?
なんで奴隷的扱いの吸血鬼が暴れている?
意図せず家族を思う間もなく、
ただその疑問を残して一人の男性の意識はそこで止まってしまった。
***
同時刻事件現場地上
ポリスラインが引かれサイレンが青空の下
鳴り響く。
その内側で仁王立ちを決め、
ジーパンに上着を巻きつている男。
口に咥えた本日10本目のタバコをゴスロリ女に引っ張られても離さず器用に吸う男。
なんとも締まらないなりをしているその男は。
深穴に建物が蓋をしているという異様な光景を見下ろし言った。
「チョココロナねみたい」
「衛助あんた何言ってんの?!」
衛助のふざけた形容をゴスロリの少女が
ツッコミを入れた。
そこで彼女はどさくさにタバコから手を離した。
そして自然な所作で衛助の鼻を摘んだ。
鼻を塞がれたので途端に息が苦しくなる。
衛助はタバコを吐き出すほかなかった。
「ゲホゲホ」
タンの絡んだ咳が響き渡る。
「おいタバコを地面に捨てさせるような真似しやがってマナー悪りぃじゃねーか!」
「まだ昼なのに10本目! こっちは副流煙ずっと吸ってんだよ! そっちの方がマナー良くないでしょう!」
閑話休題、話を戻す。
チョココロネ食べ方にいくつもの派閥が
ある食べ物、この現状に重ねれば。
「いや結構的を射ってるんだって
ほら救助下から行くか上から行くかそれとも」
「別れて行動しましょ」
二人の肩に自分の腕を掛ける形で、
若い茶髪の好青年、麻広が会話に割って入った。学校の制服に見えるトラッドスタイルの服装をしている。
ーーうわータバコくさー。
ちなみに二人の身長差があるので
結構腕が辛そうである。
「いや俺一人で足りるわ」
「じゃあ制圧後は僕が救助や後始末を斡旋します」
麻広は気さくな笑みで返した。
衛助は刀の入った鞘をブランド物のベルトに慣れた手つきで固定する。
それを横目にゴスロリ少女のもゆるが言う。
「その間……というか深穴に蓋をしている建物にいる人達の救助はもう終わりそう」
麻広はこちらの台詞にも同じ笑みを浮かべて返した。
「まずデーパートの屋上に避難して貰ってますからね、後は引っ張り上げるだけです」
そう深穴に蓋をしている、建物は大型のデパートだだから救助者も多い。
そして衛助は飛び降りた。
広大で空気の音がする暗い暗い穴に。
「ヴァンパイアハンター陽組
心動 衛助いきまーす」
結局この三人衆は揃いも揃ってポリスラインの内側に入れるような格好をしていなかった。
***
同時刻深穴内
リュウ少ししたらそう名づけられる、
彼は深穴で頭痛と引き換えに記憶喪失に
なって目覚めていた。
「で君は記憶喪失で目覚めたらこの深穴で
どうしたらいいか分からないってこと?」
「お、うん」
彼女は天下乃、記憶喪失の彼を魔術の道に
そして吸血鬼の道に引き入れた張本人。
「でも不便よね名前が無いと」
天下乃は綺麗なお姉さんといった容姿なので不思議な色気を纏っている。
そう言って彼女は少しの間思案にふけ。
口元に笑みを浮かべ。
「あなたの運命に沿った名をあげる」
と言い放った。
はい? としか言いようがない
ーーこの人は今俺のお母さんになろうとしている!?
ーードラグーンからとって
「リュウ君ね」
天下乃は未来を見通すような
目をしていた。
例えるならUNOで勝ち筋が見つかったようなそんな感じ、嫌な目だった。
というか手から波動拳が出せそうな名前を
つけられてしまって内心困惑した。
その困惑に釣られて現状を思い出した。
「というか! どうしたらいいの?地上までめっちゃあるし吸血鬼達が暴れてるし
俺記憶喪失だしー」
「リュウ君?」
「ハイリュウです!」
リュウはここまでの切り替えは早いなと
思ったここまでは。
「残念ながらこの騒動であなたが生き残るのは難しいあっちをみて」
天下乃さんは物怖じせず道を指し示すような軽さで指を刺したが、
その先は地獄だった。
噛み砕いている途中かのようにひしゃげた
人間たち。
そしてその残忍さを施された人の数を
知らしめる血溜まり。
気がつけばその光景と血生臭さに吐き気をリュウは催していた。
次はお前の番だと現実が次の瞬間やってきた。
どうやら息がまだある男性がこちらの存在に気が付いて、希望の眼差しを向け助けを求めていた。
「良かった! 助け……」
頭を潰された吸血鬼にいとも簡単に、
雑草をひっこ抜くような軽い感覚で。
吸血鬼はこちらを見つけ何か言い飛びかかってきた、奴が何を言っていたのかわからなかったし。
死の寸前奴の鋭利な牙、目前。
何故だか何も聞こえない静寂がただゆっくりに感じる。これがタキサイキア現象というのだろうか。
この恐怖の暇でリュウは何かをしなければならないのだろう。
だが奴の牙がリュウを裂くことはなく
大きく後ろに飛んだ形で床に伏せていた。
どうやら天下乃は刃付きの銃を携帯していた
らしく。
その銃声と共に死の予感から引き戻された。
『パン!』
ーー気づかなかったこの人、銃持ってたのか。
「私は今から下に行くからさようなら」
とても淡白に天下乃は言った。
それを聴いて思わず戸惑いの声が出たのは言うまでもない。
助けてくれるんじゃないのか?
とリュウは瞬く間に不安で支配されたそうじゃなくても。
自分が何者なのか分からない、知識はあるのに記憶がない状態で正直気持ち悪くてしょうがない。
それでも無理矢理にでも前を向かなくちゃ
ならない気がした。
そう自分が忘れた自分がそう言っている。
ーー気持ち悪い……
***
設定公開(見なくてもいい)
リュウ
主人公
年齢高校1〜2年くらい
髪は無造作な黒髪(薄くワイン色)
記憶喪失だけど知識はある
(個人的な情報は忘れていて一般教養はある)
一番覚えているのはネットスラング
***
同時刻
とある宗教団体儀式場大広間
床に執事のタキシード服を着た男が7人
雑に散りばめられ死んでいた。
鮮血を思わせるカーペットが更に血で染まっている。
その場を作り上げた青年は余裕そうに手の塵を払う。
「スゴイですね」
愉快な笑い声と拍手を送りながら現れた、
その男はまるで仲間が死んだのを悲しんでいるようではなかった。
「君名前は?」
そう聞かれたら青年は淡々とした口調で
答えた。
「有我 映ヴァンパイアハンター」
そして立て続けに。
「今東京で大規模なテロが行われているな?」
「答えろあれほどの頭数の吸血鬼全部が
未契約な即ち人殺しできる奴らな訳がない」
「どうやって主に不殺の契りを無効化した?」
「よくも騎士位とは言え7人も殺れましたね」
ーー話聞けよ!
「さて私も名の乗れば私はカーティス、常夜吸血鬼崇拝団体大司教」
カーティスから穏やかな殺意が溢れた。
だがそれは映にとって開戦のゴングには
足りなかった。
「もう一つ教えてやる俺は魔術は使わない
低級の吸血鬼を使役して戦うそれはもうコキ使う」
空気に変化の兆し。
「コロスゥゥゥガキィィ」
ニッコリ笑顔が一変、そして洋館内の
穏やかな殺気がヒリヒリとしたものに変わって満ちた。
なぜ映が煽ったのかそれは吸血鬼が嫌いだからである。
カーティスが怒ったのは言わずもがな吸血鬼を崇拝しているからである。
煽りに成功した映、殺す意義を見つけたカーティス。
要するに2人とも12割の力が出るに至る。
***
設定公開
有我 映 (ありが うつり)
16歳
唐揚げに勝手にレモンかけるニキの
話が出るたび
ーー取り分けてからかければいいのに
って思ってる。
***
一旦戻って場面は深穴内
「待って置いてかないでくれ!」
リュウの頭は真っ白に心臓は縛りつけられるような感じがする。
それは身体の一切を支配した正しく恐怖、
その様子を受けて天下乃は。
「じゃあ自分の身を守る方法を授けてあげる」
おもむろに天下乃はリュウの顔に自分の顔を近づけて艶かしく目を真っ直ぐ見つめ。
「目を閉じて」
深く唇を重ねた。一つは恐怖心を消すためもう一つは。
リュウに三つの"処置"を施す為。
「これで大丈夫あなたにおまじないをかけたの」
ーー!?
リュウの頭は以前真っ白、心臓も苦しいままだった。
「それじゃあまたね」
後ろを頭で振り返る形で天下乃は小悪魔な笑顔でそそくさとその場を立ち去った。
そしてそれを皮切りにしたかのように吸血鬼が襲ってきた。
吸血鬼は鋭い爪でリュウの二の手を抉った。
あまりの勢いで痛みはないが驚きがある、
そのせいでリュウは助けを呼ぶ声も驚く声も出ない。
『おかしいな切り落ちるはずだが!?』
ーーン?!
爪の吸血鬼は驚愕しただかそれは。
『リュウの肉体が彼の切断を拒否』
したからではない。これを見たのだ。
治った腕そして知っているはずのドス黒い覇気。
「オマエら!こっちこい!」
一気に5体の吸血鬼が駆けつけた。
それぞれに鉤爪が付いていたし中には
カマキリのような形状もいる。
流石にリュウからしたら抉れるだけでも
致命傷になり得る。
そうリュウだったら!
「かかれ!」
5体一斉に迫ってきたがその攻撃を二の腕を押し付けるようにいなし。
鎌の吸血鬼は鎌をもがれ。
戦慄する間に胴はぐちゃぐちゃにされ。
次に2体一斉にパンチキックと破裂して
いった。
どうやら彼らには逃げるという選択肢はないようだった。
逃げることすら叶わないそういう本能が走ったからだ。
ならいっそ一太刀くらいはと僅かな思いで
爪を立てたがいつのまにか見えていた、
映像が暗闇に切り替わった。
生き残っていた3者一斉に。
天下乃がリュウにした"処置"の内一つ目。
強力な吸血鬼との契約これで、
強力な吸血鬼『チャカ ファイラーム』
を使役するに至る。
「契機は戦線離脱するまでだな」
当作品を読んでいただきありがとうございます。
気にいったならブックマーク。
そして星の評価、感想もよろしくお願いします。
毎週月曜日の20時頃投稿
この作品当初は少年漫画を想定して
構想を立てていたのですが、
作者都合で小説という形で世に出すことに
しました。
なのでなろう特有の爽快感は無いと思われます。
場面展開の際に設定を公開するのも
漫画で連載しようとした名残です。
今後とも奇血病躯を宜しくお願いします。