1話『へい、アレクス、無能力参謀が追放されたって何?』
テンプレマシマシキガルニヨメル実験作です。十話完結で今日終わる予定です。
「へい! アレクス! エーアイが手に入った今、お前はもう用なしだってよ!」
目の前で第一騎士団長ムゥワが長ったらしい髪を掻き上げながら笑う。
俺はムゥワの言っている事の意味が分からず、思わず聞いてしまう。
「なんで?」
「だから、エーアイが入ったからだよ! 知らないのか!? エーアイ」
知っている。
エーアイは、最新の自律思考ゴーレムで、叡智の図書館と呼ばれる場所と魔力線でつながれていて、そこに蓄積された知識と様々な経験を重ねることでどんどん賢くなっていくというとんでもないものだ。
そんなのは知っている。
「で、なんで?」
「だから! エーアイが入った今、お前のような無能力の癖に偉そうなヤツはいらないんだよ!」
ムゥワのその表情を見て、俺は理解した。
あ、これ、もう終わったやつだと。
俺は何も馬鹿みたいになんでなんでを繰り返したつもりはない。
エーアイを入れて、俺をいらないという意味を分かっているのかと聞いたのだ。
分かってない。少なくともコイツは分かってない。
そして、これからもきっと理解しないだろう。痛い目見るまでは。
「そっか。分かった。じゃあ、出て行くわ」
「あーあー、とっとと荷物を纏めて出ていけ。今日中にな!」
「なんで今日じゅ……ああ、わかったわ」
「それは……って、勝手に理解して勝手に解決させるな!」
明日の昼にはアイツが帰ってくる。
ムゥワはアイツに惚れている。だから、俺を追い出したかったというのもあるのだろう。
無能力な上にエーアイよりも知識で負ければ、まあ、そう思われるのも無理はないのだろうか。
いや、馬鹿すぎるだろう。
だが、俺は何も言わない。
この事に国が疑問を覚えないのであれば、結論は単純だ。
「この国、馬鹿だ」
俺はさっさと『準備』を整え、出て行く。
見送りには誰も来ない。いや、来ないようにさせているんだろう。
見送りに唯一来たコイツが。
「あーはっはっは! 見送りに一人も来ないとは悲惨だなあ」
ムゥワが長ったらしい髪を掻き上げながら笑っている。
暇か。
第一騎士団騎士団長暇か。
俺は、ムゥワの笑い声を背に受けながら歩き出す。
そして、ムゥワの視線がなくなったところで駆け出す。
「いやっほおお! 馬鹿じゃん! あの国馬鹿じゃん! あー! よかったああ! これで自由の身だ! いよーし! 未開の地でのんびり過ごすぜ、いやっほー!」
と、思っていたのはほんの数日だけでした。
「よし! アレクス! わたしと一緒にここを最強の村にしようじゃないか!」
目の前で、天下無双の脳筋美人女将軍、ルンが笑っていた。
その頃のチャトギプト王国。
「へい、エーアイ! これからどうすべきだ?」
「質問が漠然としています。もう少し具体的にお願いします」
「面倒な……じゃあ、もっと財政を豊かにするにはどうしたらいい?」
「現在の王国の作業効率は非常に悪いと考えます。徹底した時間管理を行うべきです。具体的には……」
「なるほど! 採用しよう! あとは任せた! 私はルンの所に行く! くくく」
「………」
次回! 2話『へい、アレクス、筋肉女将軍がついてきたって何?』は12時更新!
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