七五三は11月の行事【安平学園物語】
興味を持ってくださり、ありがとうございます。
私にとっておよそ1年半ぶりの投稿のため、
薄味な内容かもしれません。
ですがその分優しい仕上がりとなっております。
楽しんでいただけたら幸いです。
※簡単な人物紹介
☆小鳥遊 結斗:美香の彼氏。低身長に悩む安平高校一年生。バスケ部。
☆鳳 美香:唯斗の彼女。可愛いものが大好きな安平高校一年生。部活未所属。
☆竜ヶ水 翼:まといの彼氏。長身無口なクール系男子。安平高校一年生。男子バスケ部。
☆鯉沼 まとい(こいぬま まとい):翼の彼女。お姉ちゃん属性のロリ。安平高校一年生。女子バスケ部
☆天城 武人:安平高校二年生。男子バスケ部主将。
☆子安 麻那:安平高校二年生。男子バスケ部マネージャー。要素が多い。
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【結斗・美香の場合】
「ふっふっふ〜。どう、ゆいちゃん。七五三のわたしは〜」
「うん、可愛いと思うよ?」
「うんうん、そっかそっか〜」
僕が感想を述べると、嬉しそうに笑う美香さん。めちゃくちゃ可愛い。
11月は七五三があるらしい。ということで、お互いの七五三のときの写真を見ようという話になって、今に至る。
「ゆいちゃんも可愛いよ〜。でもなんか、頑張ってかっこよく顔を決めようとしてるのは、面白いねえ」
「僕は全然覚えてなかったけど、無意識にカッコイイポーズで写ろうとしてたみたいなんだよねぇ。母さんに昨日苦笑いされたよ」
昨日美香さんに見せるべく写真を探してて、母さんが持ってるものを借りるときに聞いた話だけど、まったく思い出せない。昔から顔立ちが中性的で、むしろ女の子に見えちゃうことが多かったから、無意識に男らしさを求めていたのかもしれない。
なんて思っていると。
「んふふ〜。ちょっと待っててね〜?」
「え、あ、うん」
唐突に美香さんが部屋から出ていった。お菓子でも取りにいったのかな、だったら一緒に行ったら良かったかな、とか考えていると、すぐに帰ってきた。そしてその姿はさきほどと打って変わって、
「じゃ〜ん! どうだ〜」
振り袖に着替えていた。手にはきちんと千歳飴まで持っていて、完全に七五三スタイルだった。
「すごく似合ってる、可愛いよ。もしかして今日は、これを見せたかったの?」
「昨日パパとママがね、『会社で部下たちから見せられたら、見たくなっちゃってな!』『明日写真撮らせてちょうだい!』って言われたんだあ。そのときゆいちゃんにも見せていい? って聞いたら、いいよって言ってくれたから〜」
びっくりしてくれた〜? と聞いてくる美香さんが可愛くて何も言えない。この際ツッコミどころはどうでもいい。「七五三って小さい子どもの行事だよね?」とか、「なんで振り袖があるの?」とか「そんな日に僕が来て良かったの?」とか、今はもうどうでもいい。とりあえず感謝。
「じゃあ、行こっか〜。下でパパとママが待ってるから〜」
「僕も見てていいの?」
写真撮影に参加出来るなんて。そう感激していると、美香さんは不意にこう言った。
「ゆいちゃんも写るんだよ?」
「……え?」
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「キャ〜!! 可愛い〜!!!!!!」
「結斗くんも決まってるぞ!」
「あ、ありがとうございます…」
パシャパシャパシャパシャパシャッ!
リビングで写真撮影を始めたパパとママ。大きなカメラも持ってきて、気合いがひしひし伝わってくる。相当喜んでもらえてるみたいで嬉しいな。
ここでチラッと横を見る。袴姿のゆいちゃんは、普段の可愛さそのままにカッコよさも加わって、とても良い。「せっかくだから、2人で写真を撮ろう」と言ってくれたパパには感謝しかない。もちろん、突然のとこなのにOKしてくれたゆいちゃんも。あとでお礼言わなくちゃ。
「……? どうかした?」
不思議そうに聞いてくるゆいちゃん。ちょっと見すぎだったかな。でも仕方ないよね。だってこんなに楽しいんだもん。
「楽しいね、ゆいちゃん」
「! ……そうだね」
この日、たくさん写真を撮ったわたしたちは、みんなずっと、笑顔が絶えないのでした。
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【翼・まといの場合】
「ーーって感じだったんだ」
「そうか」
「へぇ〜、楽しそうだね」
「またやろうねぇ〜」
部活が終わった帰り道。昨日写真撮影をしたらしい小鳥遊くんと美香ちゃんから写真を見せてもらっている。いろんな構図で撮られていて、美香ちゃんのお父さんお母さんがいかに力を入れたかが分かる。
「なんだろう、〇タジオアリ〇の写真撮影を思い出したよ。少し恥ずかしかったけど、笑顔が絶えないのは良いことだよね。うちの親も喜んでたし」
「俺もゆいとも、写真にはあまり写りたがらないからな…」
恥ずかしがりながらも嬉しそうに話す小鳥遊くんに、少し気まずそうに返すつばさくん。騒がしいのが好きじゃないつばさくんの性格からしたら、確かに好きじゃなさそう。
でも写真かぁ。そういえばつばさくんと写真撮ったこと、一回もないなあ。
なんて思っていると。
「まーちゃんは、七五三の写真持ってる?」
「え、あ、その〜」
「美香さん、さすがに七五三の写真を普段から持ち歩いてる人なんてそうそういないよ」
わたしが答えに詰まっていると、すかさず小鳥遊くんがフォローを入れてくれる。小鳥遊くんは常に周りを見てて、困っている人のフォローが上手い。所属してるバスケ部でもそのフォロー力は健在で、味方のミスをカバーしている。
「そっか〜、ざんねん」
「ごめんね、美香ちゃん」
「ううん、いいよ〜。……あ♪ じゃあ今からみんなで写真撮ろ〜」
「唐突だな…」
つばさくんの言う通り、美香ちゃんは唐突に何かを言うときがある。内容的にはいつも、すぐにできるようなことしか言わないけど、突然だから聞く側はびっくりしちゃうんだよね。
「いいからいいから〜。ほら、寄って寄って〜」
そう言われて四人で寄り添って、美香ちゃんが自撮りの要領で写真を撮る。撮ったあとすぐにメッセージの通知が来て、開くと今撮った写真が添付されてた。は、早い。これは慣れている人の早さだ…。
でも何はともあれ、これで初めてーー。
「つーちゃんと一緒だね〜」
「え?」
「あぁ、そういうことだったんだ。つばさ、これ鯉沼さんと一緒に写ってる初めての写真でしょ」
「……そういえば」
バツの悪そうな顔で答えるつばさくん。もしかして今写真撮ったのって、わたしを気づかって…?
「あ、ありがとう、美香ちゃん」
「ふっふっふ〜、エスパーミカにはなんでもお見通しなのです。ドヤ〜」
「……感謝する、鳳」
「……“いつもなら調子に乗ってる鳳に文句を言うところだが、自分が気を回せなかったことへのフォローだから文句を言うに言えない”、って顔してるね、つばさ」
「……うるさい」
小鳥遊くんの言葉に、そっぽを向くつばさくん。最近分かってきたことだけど、つばさくんは恥ずかしかったり気まずかったりすると、そっぽを向く癖があるみたい。そういうところはちょっと可愛いな。
「ごめんね、つばさくん。それと、一緒に写ってくれてありがとう」
「ーー。……こちらこそ」
わたしがお礼を言うと、少し目を見張りながら返すつばさくん。
つばさくんと一緒に写る初めての写真。
嬉しいなぁ~! 大事にしないと。
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「じゃあつばさ、またあとで。鯉沼さんもまた明日」
「ふたりともまたね~」
「うん、また明日!」
写真を撮ってしばらく。俺とまといはまといを家の近くに送るため、ゆいとと鳳から別れて帰路についた。
「えへへ~」
さきほど撮った写真がそうとう気に入ったのか、まといはとても上機嫌だ。今にも鼻歌が聞こえてきそうな「~~♪」、聞こえてきた。
「気に入ったのか?」
「あ、うん。それももちろんあるんだけど、つばさくんと一緒に写真撮ったことなかったから」
そっちの方がずっと嬉しいの。
そう語るまといの表情は嬉しそうで、見てるだけのこちらまで嬉しいと思えてくる。写真を撮っただけで喜んでもらえるなら、いくらでも撮る。
「写真か。今まで自分から撮ったことはなかったな。……今思えば、デートのときに撮っていればよかったな」
「た、たしかに。デートのときは緊張しちゃうもんなあ」
あまり回数こそ重ねていないが、まといとは何度かでーとをしたことはある。しかし、思い返してみると、お互いデートで頭がいっぱいで、写真にまでは考えが至っていなかった。
「これからは、もう少し写真にも気を配っていくか」
「そうだね。……あ、そうだ。じゃあ今撮らない。『写真を撮ることを決めた記念日』ってことで!」
「……そうだな」
まといと付き合うようになって、その結果鳳とも関わることが多くなったからか。最近のまといは、鳳の突拍子のなさが似てきているように感じる。だがそのことは悪いことでは決してなく、むしろ遠慮しがちなまといには良い変化のように思う。ーーそう感じるのは相手がまといだからか、俺もまといと付き合いだして変わりつつあるのか、それは自分でも分からない。
「じゃあそうだなあ。すぐ近くに公園があるから、そこで撮ろっか」
「わかった」
まといに促され、公園で写真を撮る。
周りは暗く、少し肌寒かったが。
「あはは、電灯の灯りで、逆に見づらいや」
その写真からは、明るさと温かさを、確かに感じたーー。
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【おまけ】
「どうだい、私の七五三コーデは」
「いや、なんで今年で17になる子安が振り袖を着ているんだ。わざわざ家にまで呼び出して」
「ふん。なぁに、バスケ漬けで華がないキミの日常に、ちょっと彩りを足してあげようと思ってね。せいぜい感謝したまえ」
「はいはい」
「あとはまあ単純に作者の趣味だな」
「突然のメタ発言はやめろ!?」
「はっはっは!! さあそれで? この姿について感想はあるかい? うら若き乙女の振り袖姿なんだ、一言あって然るべきじゃあないかね?」
「自分で言うのか…。まあその、似合ってるぞ、ちゃんと」
「ほぉ~? ずいぶん素直に言うじゃないか」
「まあこういうので変にごねてもな。スタイルのいい女がちゃんと着飾ってるんだ、似合ってて当然…。な、なんだよ、急にニヤついて」
「いや~、なに。私のことを『スタイルのいい女』だと思っているのだなあと思ってねえ~。そうかそうか~」
「!!!!!! あ、いや、そ、それはだなあ!?」
「ふふっ、こんなことですぐに慌ててしまっては、狙った女を仕留められないのも納得だな」
「あ、おいこらてめぇ!!!!!! 人が気にしてることを」
「あっはっはっは!!!!!!」
「~~!!!!!! 今日の用事はこれだけか! これだけならもう帰るぞ!!」
「まあ待て待て。せめて茶でも飲んでいけ。せっかく馬場さんが用意してくれたんだ」
「……いただこう」
「よろしい」
「(まったく。いつも子安のいいように、もてあそばれちまう。今日なんて顔色を変えずにいうところまでは出来たって言うのに。チクショウーー)」
「(相も変わらず、コイツをいじり倒すのは面白い。……とはいえ、先程の返しはなかなかだったな。相当頑張ったと見える。さてさてーー)」
「「(次こそは出し抜いてやるーー!!!!!!)(次はどうやって遊ぼうかーー!!!!!!)」」
結局最後は似たようなことを考える。
遠くて近い、二人なのだった。
読んでくださり、ありがとうございました。