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短編とかその他

ありふれた言葉が特別になる理由は

作者: 仲仁へび



 たった一言が、忘れられなくなる事がある。

 

 世界には、ありふれた言葉なのに妙に心に残る言葉が存在している。


 それは、どうしてなのだろう。


 彼から聞いた言葉が頭から離れない。

 そんな言葉、耳にする事はあっても、自分に向けて言われる事なんてないと思っていたのに。





 私は、普通の人間。

 目立つ容姿でもないし、愛嬌もない、特別な才能もない。


 町を見回せば、私と同じようなスペックの人間がわんさかいるだろう。

 私より、できる人の方が多いかもしれない。


 それでも、そんな私を「特別な人だ」と言って愛してくれる人がいる。


 彼の目には一体どんな風に私は映っているのだろう。


 私が知らない私の姿が、彼には見えているのだろうか。


「君は特別な人なんだ」


 彼にとってだけの特別。


 他の誰かに言われても、そんなに気にはならないのに。


 彼が放つとまるで魔法のように言葉の見方が変わってしまう。


 きらきらと光を放って、ただの路傍の石ころだったのが宝石みたいに変貌してしまう。


「特別」って言葉。

 それは、意味に反してとてもありふれた言葉だ。


 身近にわんさか存在しているから、言葉通りの意味ではなかなか届かない。


 特別な商品、特別な価格、特別なプレゼント。

 世の中を見渡せば「特別」なはずの言葉がよくあふれている。


 たまに思う。


 そんな風に「特別」って使い回していい言葉だっけ。


 もっと「特別」な時に使うべき言葉じゃなかったっけ、


 なんてそんな事を。


「一生に一度」とか「金輪際」とか「空前絶後」とか。


 言葉の意味に反して、安売りされている事が多いように感じていた。


 だから、なのか。


 私は、「特別」なんて大した言葉じゃないと思っていた。


 でも彼に「特別」だと言われてから、言葉の価値が、見方が変わった。


 元に戻ったと言った方がいいのかもしれない。


「特別」


 その言葉を、まるで宝石のように大切にしたいと思えるようになった。


 胸の中にある思い出の小箱にそっとしまって、ほんのひと時に過去を思い出した瞬間とりだし、そっと愛でて暖かみに触れる。


 そんな宝物のような「言葉」になった。


「特別」という言葉は何も変わっていないのに。


「特別」は私にとって本当に「特別」な言葉になってしまったのだ。


 その理由は、一体どうしてなのだろう。



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