「怨」第三十四話
「禍々しい、禍々しいなぁその剣は! ブレイバの野郎が持ってた『導きの剣』カリバーンは……もっと輝いていたぞ!」
黒い何かに包まれる剣、まとわりつき硬質化していくそれらは……僕を守る美しい「鎧」へと変貌していった。試したい、この力を……勇者の力を!
「――っはぁぁはははははははっっッッッ!」
――『静』。放たれ続ける拳のラッシュを一太刀で受け流す、宙を黒い何かが舞い踊る……美しい、もっと見せろ! 一撃一打を全て受け流し、的確に……隙を、見つけた。
「あうひぃぃぃぃぃぃ『撃』ぃぃぃっ!」
「ぬごぅっ……ぐぅん」
魔力は最大、同時に黒い何かで構成された刀身も吹き出し肥大化する……高質量広範囲の一撃をもろに食らったそいつは、先ほどの僕のように吹き飛んでいった。
「ガバっ! ……ごばっ、おごっ」
岩に背中を叩きつけられると同時に鈍い音がした。きっと、骨が折れたんだろう……素晴らしい、強く美しい! それでこそ勇者の武器、それでこそ勇者の持つべき強さ‼ さぁ最後の慈悲だ、苦しんで死ぬよりも……きちんと首を刎ねて楽に殺してあげなきゃねぇええええええええええ! ……え、ええ?
「機嫌が悪そうだな『憤怒』。奇遇だな……私も今、脳味噌が爆発するほど頭に来ているんだ」
片腕が、無い! 何だ、何が起きた? 「鎧」が効かない……いや、「鎧」ごと切られた!? ありえない僕の勇者の力が負けるだなんてそんな嘘だふざけんなよぉおいいぃぃぃぃ。
「だぁぁれだよぉおまえええええええええええええええ!!!!!!!!」
「誰かって? お前が憧れてる元勇者様だよ」
次の瞬間、僕の体は次々に切り刻まれていった……再生はするが、また斬られる。再生が追い付かない、死ぬ、痛い……痛いぃィぃィぃ!
「―――れつ」
「……! 『静』!」
最早、無意識。渾身の力を振り絞って放った一撃は……広範囲の衝撃波として全てを吹き飛ばした。しね、死ね、しね!
「……よくも、私の息子を」
「あーばばばばばばゆうしゃゆうしゃ、ぼくはゆうしゃ、ゆうしゃ!」
ちょっとずつ気持ちよくなっていく頭の中、邪魔するあいつは殺さなきゃ。




