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「炎」第三十三話
「……ま、木の実なんてどこにもないんだけどね」
大きな木の上から、自分の全てを見つめていた。
彼の隣には彼自身が愛する人がいて、彼にはそれを守るだけの力がある。
もちろん、その力は彼自身の努力によるものだ。そこだけは間違ってはいけない、決して。
「でもまぁいいものが見れた、これで腹の減りは凌げる」
二人が少しだけいやらしい雰囲気になってきたので目を逸らす、いくら保護者とはいえ、見ていた事がバレればホープにシバかれる恐れがある。
「……似てるよなぁ、君に」
懐から一枚の板を取り出す、それは古びて黄ばんではいたが、二人の男女の初々しさを感じられる、いい写真が貼ってあった。
その写真を悲しげに、でも自分では気づかないほど薄い笑みを浮かべてから。
「大丈夫、私たちの子供は、ちゃんと幸せだよ」
写真が付いた板を再び懐に戻し、ブレイバはふと、息を吐いた。
「……そのためにも、私はあの剣を葬らなければならない」
言い聞かせるように呟いてから、ブレイバは地面に着地した。




