47/57
「怨」第三十一話
怒りが。
怒りという怒りが、僕の血の中で「今すぐこいつを殺せ」と囁いていた。
耐えがたき言動、侮辱をぶつけられ、僕の怒りは転じて、笑いへと成った。
「あぁぁぁぁひやひあひゃひゃひゃひゃひゃぁァァァアアアアアア⁉⁉⁉⁉」
折れた骨が痛もうがお構いなしだ、僕は乱暴に体を動かし、変な方向に曲がっている腕を動かし、あの美しい黒刀を持った機械剣を握った。
「僕は勇者だ、勇者は何をしても許される、炎は勇者の象徴だぞ? 臭い魔物やお前ら人間に殺されるよりずっとマシな死に方だぁ!」
まるでタコのようにしなる両腕両足の痛みも感じない、むしろ、こうしていた方が心地が良かった。
「話しにならねぇな」
ポケットからメリケンサックを取り出す目の前の中年に、僕は体を引きずりながら近づく。
「じゃあな、クソ野郎」
次の瞬間、僕の顔面に拳が突き刺さった。




