「炎」第二十九話
一撃で、大地が三つに割れた。
斬撃は遠く、早く、鋭く、剣の完成とも言えるほど美しかった。
あれほど戦況を支配していた大剣の老人が一撃で倒れたという事実にも驚愕だが、それを上回るほど、大地を三つに割ったこの一撃には深く納得できた。
「……リィ…グ」
「――…! ブッ、ブレイバさん⁉」
刀身が砕けた西洋剣が手から離れた時点で気づくべきだった、僕の手は間に合わず、ブレイバさんはうめき声をあげながら地面に倒れた。
うつ伏せに倒れた老人の肩に手を回し、少しゆする。
「しっかりしてください、ブレイバさん、ブレイバさん!」
「……」
息はしている、あくまで気絶しているか、疲れて寝ているか…いつも死んだように寝ているため、判別が難しい。
(とにかくブレイバさんはここに置いといても大丈夫だろう、さっきの一撃であの人ものびちゃってるし)
それよりホープだ、稲妻が走ったように響いた自分自身の心の叫びを聞いた。本当は、心配でたまらなかったくせに。
(悪いことしちゃったな、後で怒られるのは覚悟しておこう)
僕はブレイバさんを見つかりにくそうな、城の入り口の死角に寝かし、ホープのいる城の中に走って行った。




