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「炎」第二十七話

「ぬぅうん! 『巨竜狩り』!」

「……っ! 『流』!」


巨大な大剣に見合った荒々しい一撃、それの隙を縫うように、ブレイバの太刀筋が老人の脇腹へと向かう。ギリギリのタイミングだった、数センチズレていれば即死を免れることはできなかっただろう、だからこその一撃だった。渾身の一撃を放った隙だらけの横腹に、ブレイバは拾った西洋剣を突く。


(殺っ――

「甘い」


無造作に上げられた膝が西洋剣を折った、判断も思考すらも許されず、大剣の柄がブレイバの顎を直撃した。勢い良く吹っ飛んだブレイバは城の壁に叩きつけられ、乾いた唇から血が滴った。


大剣を握りしめた老人は大剣を肩に担ぐ、歯ぎしりした後舌打ちし、罵声を浴びせた。


「甘ぇ、甘いぜ、甘すぎる。これが勇者か? これが人の英雄か? 手加減なんてらしくない、昔のお前だったら俺の腕の腱ぐらい斬ったろ、あ? なんか言えよ」


血反吐を吐きながらブレイバは立ち上がる、落ちていた剣を拾い上げ、それを杖代わりにして立ち上がる。


「……」

「なぁソラ、俺はお前をずるいと思う、正気だとは思えねぇよ」


溜息をつき、老人はブレイバに近づき始めた。


「お前は殺したよな、魔物を、俺たちより弱い守られる側の生き物たちを。覚えてるよ、無抵抗だったことを、話し合おうって何回も言われたことをよ」


まるで悪い夢でも見たかのような顔だった。60近くであらゆる死線を超えて来たであろう老骨には、似合わない弱い表情だった。ブレイバもまた、同じ表情をしていた。


「だがお前は「殺した側」の責任から逃げている、何もしなかったふりをするな、「ブレイバ」に逃げるな、お前は「殺した側」だ、勇者の、ソラなんだ」


ブレイバの前に立った老人が、大剣をブレイバの頸に突き立てる。


「あの坊主の目を見た時は見逃してやろうかと思ったが、やっぱやめた、お前のエゴに付き合わされるあいつが可哀そうだ」


そのまま構え、最後にこう言った。


「じゃあな卑怯者、勇者なんて云う幻想は、此処で終わりだ」


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