「怨」第二十六話
家の中に入ると、思っていたよりも金目のものがたくさんあった。
多分この村の村長なのだろう。他の家と比べても立派で大きく、他の家が松明なのに比べて、遠くの国から輸入された電球のようなものが、天井に取り付けられていた。
まぁどうせ、これを買うためにこの村の人たちの金をむしり取ったに違いない。これは良くない、勇者の名に置いて、粛清しなければいけない。しかし悔しいことに、今自分には時間が無い。僕は適当な袋を手に取り、飾ってあった宝石やら金塊やらを放り込んだ。
「何をしてる!」
声が響く、見るとそこには、パジャマ姿の老人が立っていた。この村の村長だろう。
「お前……儂の家宝に何をしてる! 泥棒め、白髪という勇者の象徴を持ちながら、そのような悪事をするとは!」
次の瞬間、僕の殺意は迅速に正義を執行した。
頸がゴロゴロと床を転がった後から血が噴き出した、血を吹きだす汚物を蹴り飛ばし、床を転がった頸を踏み潰した。
「ふざけるな、僕は勇者だぞ? 守られるだけの存在が、守ることの出来る有能な人間を泥棒? お前に守る価値は無い、お前が村長のこの村にも、存在する価値は無い」
僕は血で汚れた袋を拾い、金品を片っ端から詰め込んだ。
「‥‥‥」
家を出ようとした時、ふと、僕の目に映ったものは、ライターと飲みかけのジン酒だった。
僕は思わず笑った、じゃを清める炎は、勇者の象徴だという事を思い出した。




