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「炎」第二十六話

床を壊し続けていると、ふと、違和感を覚えた。

追手が少ない……いや、一人もいないのだ。たった一人も、耳をすませば城の中が静まり返るほどに。僕は自分の足音だけが響く廊下への不安と、背に感じるホープのずっしりとした体重による疲れにより、ひとまず廊下の隅っこに座り込んだ。


「おいリグレット、大丈夫か? 汗びっしょりじゃねぇか……」

「ううん、大丈夫。見張りがいないか確かめて……」


言い終わる前にホープに顔を触れられた、ゆっくりと撫でられ、痛む体を起こしてまで、僕の額におでこを付けて来た。緊迫した状況にそぐわないぐらいドキドキして、慌てて後ろにのけ反った。


「ほら、顔が赤い。ちょっと休めよ」

「大丈夫だって! ……ちょっと待って」


あれほどうるさかった胸の鼓動が、押し寄せられた波が海に引きずり込まれるように、すうっ、と引いていった。

心配そうなホープを置いて、僕は右を向いた。そこには窓があり、とっさにその窓から外を覗き込んだ。


「……!! ブレイバさん!」


僕は今日、本気の殺し合いを目にした。全力を出したブレイバさんと互角に戦うその男、ひどく戦いを楽しんでいるそいつは、数分前に自分に選択を迫った男だった。


(押されてる……今すぐにとは言わないけど、このままじゃ!)


思い出すことは全て嫌なことばかり、最近のブレイバさんは腰の調子が悪いとか、膝が痛いから起き上がり方が少し変だったりとか。単純な老衰で体の動きが鈍くなっている事も、全部知っていた。


「……」


剣を握ったその手に握った感情。経験も優先順位もクソ食らえの自分には、止める力も理由も無かった。


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