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「炎」第二十五話

ウぉおおおぁぁ! 勢いを付けて突っ込んでくる兵士が前に三人、後ろからは槍兵が一人。

避けることは造作も無い、脇腹を突くことしか脳の無い槍の柄を掴み渾身の力を込めて前方の兵士に投げ飛ばす。爽快に、かつ豪快に鎧を着た兵士がぶっ飛ぶか倒れる。


「ふっ」


小さい息を吐き、すぐに受けの構えを取る。

ブレイバはこの流れを先ほどから何度も繰り返しているが、想像の何倍よりも弱く、思っていたよりも体力を温存できている。


(まぁ、あの馬鹿が指導役なんだ、そりゃあ兵士も弱くなる)


いけない。一人納得している自分に喝を入れる、どんなに弱くても敵は敵、数では圧倒的に負けているため、数十人単位で襲い掛かられれば体が持たない。全盛期なら話は別だが、まともに戦わず平和ボケした老体にはきつい。


(だからといって、息子置いて逃げるほどボケちゃあないけどな!)


小さく息を吸うと同時に姿勢を低く、片足を後ろに出す。吐くと同時に足に力を籠めれば、久しい風を裂く感覚が肌を伝った。


兵士たちが避ける間もなく、剣を握りしめた老体が大砲の如く突っ込む、陣形も何も組まれていないため、次々と脇腹に拳や柄を叩き込む。


(半数は既に意識が無い、もう半数削ったらリグレットを……!)

「はははっ!『飛竜穿ち』!」


楽観視していた罰なのか、一瞬にして横殴りの一撃が向かってきた。明らかに自分を狙い、かつ周りの兵士では放てないような爆風の一撃だ。

数秒前に警戒していなければ気づけなかっただろう、いろんな意味で培われた疑いの目に感謝しながら、剣を握る両腕に力を籠める。


「―――『撃』―――」


ドン、上書きするように強い衝撃波によって風が吹き飛ばされ、それに巻き込まれるように兵士が吹き飛ばされる。


残ったのは地面に突き刺さった大剣と、その後ろにいる老人だった。

老人は大剣を抜き取り、肩に担ぐ。


「貧弱だなぁ。こんなそよ風で吹っ飛ばされるお前らに稽古を付けてやった俺に感謝してほしいぜ、なぁソラ」

「黙れ化け物、その人たちを化け物の物差しで測るな」


ガキィン!ギギごギィン! 荒々しい金属音が響き、僅か数回でブレイバの西洋剣が折れる。武器の差もあるとは思うが、それでも凄い一撃だった。


「相変わらずの……馬鹿力だな!」

「はっはっあぁ! 隠居した爺だと? 随分とお強いご老体だなぁ元勇者さんよぉ!」


瞬間的にブレイバの一撃が強くなる、折れた剣から刀身が完全に吹き飛び、一撃により相手が吹っ飛んだ隙に次の剣を拾う。


(リグレット……!)


交える殺意の隙間で思考するのは、黒髪の少年の無邪気な笑みだった。


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