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「怨」第二十三話
殺した。
馬も、手綱を握る太った男も、それに乗る貴族も、それを守る護衛も。
金目のものは全て奪い取る、勇者の軍資金になると思えば、死んだクズ共も笑って喜ぶに決まっている。
数々の宝石を、血まみれの袋の中に詰め込む。
ぎゅうぎゅうになった宝石は、太陽によってキラキラと光っている。
売れば金貨がざっくざく、食べ物にも困らず、遊んで暮らせる額だ。
「でも、僕は勇者だからねぇ」
にんまりと笑う、僕は宝石が入った袋を両手で抱え、ゆっくりと歩き始める。
自分に幸せを謳歌する時間は無い、そんな事をする暇があるのならば、自分は悪しき者どもを皆殺しにしなければいけない。
そうだ、人間だから、魔物だからと差別してはいけない。
「罪は誰にでもある、そう、僕が休む暇も、罪が許される道理もこの世には無い」
僕は嬉しさと使命感で胸がいっぱいになった。
ハイになっていたんだろう。




